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無能の異世界物語  作者: ちくわぶ
新世代
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遅刻

あと3日。


あと3日で父たちはすべてを終わらせると言っていた。


シオンは子供を身ごもっていらい力を失ってしまったようなので安心してこの建物に残していける。


ベッドに横たわって天井を眺めていた。


扉がノックされる。


「入っていい?」


姉の暗い声が聞こえ鼓動が早まる。


勢いよく体を起こしてベッドに座る。


「うん。」


ゆっくりと部屋の中に入ってきた姉は俺の顔を見つめたまま黙っていた。


「座ったら?」


ベッドの端のほうに腰かけなおしながら姉に言う。


姉は何も言わずに距離を開けたまま腰を下ろした。


「どうしたの?」


おかしな様子の姉はただ黙ってうつむいていた。


2人の間の変な距離が姉の手を握ろうとする俺を止めていた。


「私・・・」


姉が口を開く。


「私、最後に・・」


そう言った姉は立ち上がる。


俺の前に立ち、俺の肩を掴む。


「お願い・・・」


そう呟いて俺を押し倒す。


「何も言わないで・・・」


姉が震えた手で俺の服を脱がしていく。


「ちょっと!」


俺が姉の肩を掴むと、姉の手は止まり涙を流しながら俺を見つめた。


立ち上がって逃げ出そうとする姉の肩を掴んだまま姉に合わせて俺も立ち上がる。


姉は俺の手を払って逃げようとする。


俺は払われた手ですぐに姉の手首を掴む。


涙を流す姉の腕を引っ張って抱きしめて、ベッドに押し倒す。


「オリ姉・・・」


姉は何も言わずに馬乗りになった俺を見ていた。


少しづつ姉の顔に近づいて行く俺の顔。


「お願い」


小さな声で呟いて目を閉じる姉。


その言葉の意味を確認するように俺は姉にキスをした。


すぐに唇を離し姉を見つめる。


今までずっと兄弟としてではなく、女性として目で追ってきた姉にキスをして、今女性の顔を見せる姉の顔を見て俺自身をコントロールすることができなくなってしまう。


恐ろしいほどのペースで脈を打つ心臓の音は部屋中に響いているのではないかと錯覚するほどうるさく、姉の息遣い以外のすべての音を聞こえなくしていた。


肩を抑えている手を離し、姉が逃げられないように首と頭に添える。


姉は微動だにせず理性を失ってしまいそうな俺を見つめていた。


姉の瞳は悲しさに満ちていて、その目を見て俺の目からも涙があふれ出してしまう。


姉は手を伸ばし俺の顔を引き寄せる。


顔にかかる涙を気にせずに俺を引き寄せた姉に俺からキスをする。


激しくなっていく自分の欲望が抑えきれずに手を姉の体に伸ばす。


姉は何も言わずに微笑んで俺を抱きしめた。




あと2日。


横で寝ている姉の顔を見つめながら頭の中で繰り返す。


あと2日。


俺は姉を救って見せる。


姉を起こさないように姉をまたいでベッドから降りる。


姉の身体に見惚れふと考えてしまう。


姉はこんな細い体で戦いに挑むのか。


姉の身体に触れようとする自身を止めて部屋を後にした。


部屋の外に出るとそこにはティアさんが立っていた。


「待っていたわ。」


姉とのことがばれたのではないかと焦る。


「いや、あれは違うんです。」


「いいから来なさい。」


ティアさんに呼ばれグレイスの部屋に来た。


そこにはルドルフもいた。


「あなたの家族は明日ここを発つわ。

そしてあなたたちが何を企んでいるのかもわかってる。」


その言葉を聞いて一気に冷や汗が出る。


「今からタイチ君たちの計画を話すわ。

それを聞いてどうするかはあなたたち次第よ。」


そう言ったティアさんは椅子に腰を掛けて俺を見た。


「あなたならわかると思うけどあの女の子やその父親が使う力は絶大なものよ。

それこそ普通に戦っては勝ち目がないほどに、魔法は効かないし力では絶対に及ばないわ。

でも、その父親にはあるルールがあるの。

その力を使ってあなたたち一家を攻撃しないというルールが。」


「ルール?

世界を滅ぼそうとしてるやつが?」


思わず声に出してしまう。


「ええ。

この戦いはあくまでただの遊びなのよ。

あの男は楽しむためにタイチ君たちを自らと戦わせているから、すぐに終わるようなことはしないわ。

タイチ君は情報を集めるためにあなたをエイコーンに送り込んだのはあの男が手を出せないから。

娘の存在を知らなかったタイチ君はあなたなら安全だと思ったから。


そして、タイチ君はあなたのお姉さんに特殊な魔法を教えているの。

それはタイチ君がいたところにあった技術を魔法に用いたもの。

そしてタイチ君が使おうとしているのは核という技術よ」


「かく?」


聞きなれない言葉に理解が追いつかない。


「私もよくは知らないけどその魔法を使うと、周囲の人はすべて死んでさらにその土地は長い間住めなくなってしまうみたい。」


「それを姉が使うってことは。」


言いかけて途中でやめた俺の顔を見てうなずくティアさん。


「私はこれをあなたに言うべきではないけど」


そう言って俺に近づいてくるティアさん


肩を掴み俺を見つめる。


「私はあなたを信じているのよ。」


何か違和感を感じながらもうなずく。


「俺なら、何とかなるかも。

俺はシオンの洗脳にも抵抗できた。

俺ならその男を姉の命を犠牲にしなくても倒せるかもしれない。」


「ユウキさん・・・」


俺の肩に手を置くルドルフ。


「私は反対です。

結局娘のシオンさんにも洗脳されていたあなたじゃ勝てるとは思いません。」


ティアさんはルドルフの言葉にうなずいている。


「とにかく、それが計画よ。

後どうするかはあなたたちに任せるわ。」


そう言って部屋を出ていったティアさん。


ルドルフは俺を見ている、おそらく俺を止める計画を立てている。


「私は・・・・」


グレイスは何かを言おうとしたがやめた。


俺は何も言わずに自分の部屋に戻る。


「俺は、2人を信じているから。」


部屋を出る前にそう言って自分の部屋に向かった。


俺が部屋に戻るとまだ姉がいて、姉の顔を見る。


涙の跡を指でなぞる。


姉が目を覚まし、俺の顔を見て微笑む。


目が泳ぎ始め、裸の自身を見て飛び起きる。


姉は真っ赤な顔ですぐに服を着て部屋を出ていった。


今考えるとずっと姉に恋をしていたんだろうな。


それが間違っていることは知っている、だからこそずっとごまかしてきたのだろう。


今考えなければならないのは父たちの後をつける方法だ。


どうやって戦いの場に行くかを考えなければならない。


ここから1日ほどの距離で行ける場所・・・


扉が開きグレイスが入ってくる。


「私は・・・

私もあなたに行ってほしくないわ。」


涙を浮かべながら話し始めたグレイス。


「それでも、あなたは行くのでしょう?」


「すまない。」


それを聞いたグレイスは悲しそうに笑った。


「あなたのお父さんたちは船に乗るわよ。

今港に降りていって準備をしているわ。」


涙をこらえながらそう言ったグレイスはすぐに部屋を出ていく。


俺も部屋を飛び出して姉の部屋に向かう。


「入るよ。」


ノックもせず部屋に入る。


そこには動きやすい服装に着替えている最中の姉がいた。


下着をはいている最中の姉はほぼ今朝と同じ状態で目の前にいる。


固まってしまう俺は姉が放った魔法に襲われて意識を失う。





「てるの!

起きなさい!!」


ティアさんの声が聞こえて目が覚める。


姉のいないベッドで起き上がる。


「何をしているの!?」


ティアさんが叫んでその場に座り込んで頭を抱える。


「もう手遅れよ・・・」


辺りはすでに暗くなっている。


「もう行ってしまったわ。」


部屋の外から複雑そうな顔で俺を見るグレイスとルドルフ。


ティアさんが声を抑えて泣き始める。


「今から違う船で行けば・・・」


立ち上がってティアさんを見る。


「それじゃあ無理でしょうね。」


そう冷たく言い放ってエマさんが部屋に入ってきた。


「あなたの両親が乗っていったのは最新の船ですし、追いつけるはずがないでしょう。」


「じゃあ、走っていく!」


そう言ってエマさんの腕を掴んでテラスに出る。


赤く染まった海に小さく船が見えた。


「頼む!

エマさん!」


「私がここで手伝うと思いますか?」


呆れた様子で言うエマさん。


「私からも頼むわ。」


背後から歩いてくるティアさん。


「なんで、あなたがこんなことを?」


エマさんはティアさんを睨んだ。


「私はこの子をそしてあの子を信じてるの。」


「またそれですか!?」


声を荒げて感情をあらわにするエマさん。


「私だって!

皆に助かってほしいですよ!!

でも、現実は残酷なんです。

父の仇をうつにはあの計画しか・・・」


そう言って泣き始めるエマさんを抱きしめたティアさん。


「あなたにしかできないの。

頼めるわね。」


エマさんは泣きながらうなずいた。


グレイスが俺の荷物をもってやってくる。


「エマさんもどうにかしてますよ。

皆さんを信じて待つべきだ!」


初めて怒りを見せるルドルフ。


「大丈夫。」


ルドルフの肩に手を置いてうなずく。


拳を強く握りしめたルドルフは歩き去っていった。


「何から何までありがとう。」


グレイスから荷物を受け取ってお礼を言う。


「お礼にはまだ早いわ。」


そう言って自らも荷物を持つグレイス。


ルドルフも荷物をもって帰ってきた。


「駄目だ!

2人は残れ!

死ぬかもしれないだぞ!!」


思わず叫んでしまう。


「私はあなたがいない人生なら死んだほうがましよ。」


吐き捨てるようにそう言ったグレイス。


「あなたが命を懸けて何かをするなら、助けるのが友達でしょう?」


杖を持ち、黒い衣装に身を包んでそう言ったルドルフ。


「駄目だ。」


俺の意見は変わりはしない。


2人の命を危険にさらすことはできない。


ティアさんとエマさんがそこに合流する。


エマさんに耳打ちする。


「2人が動けないようにしてください。」


呆れた顔でため息をつくエマさんは、何も言わずに魔法を使って海に向かって走り始めた。


こちらに向かって何かを叫び続ける動けない2人を置いて3人で走っていく。

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