ドレス
シオンと手を繋ぎながら歩いて行く。
迷っているように同じところばかりを歩き続けるシオン。
「シオン、迷ってない?」
そう聞くと足を止めるシオンは笑顔で振り向いて体を密着させた。
「タイガ、道わかる?」
後ろを歩いているタイガに聞くと周りを見渡して答える。
「向こうに行くと村があると思われます。」
その方向に歩いて行く。
今度はシオンの手を俺が引いて。
シオンは嬉しそうに俺の後についてくる。
しばらく歩くと本当に村についた。
その村は小さく、あまり人がいないようだった。
「ちょっと待って。」
シオンの手を引く。
今のシオンの恰好は俺の服を着ているだけだ。
いくらそれで少しは隠せているとはいえ、きれいな太ももも見えているし俺の服ではシオンがかがむたびに胸が見えてしまう。
「その格好はちょっと・・・」
シオンの体を見てそう言うと、俺の視線に気づいたシオンは嬉しそうに笑って服を少し引っ張る。
「今ここで?」
シオンが笑顔でそう言って、思わず息をのむ。
「違う違う。
その格好はまずいってこと。」
それを聞いたシオンはさらに嬉しそうに俺に近づく。
「妬いてくれてるんだ!!」
そう言って跳ねる。
「まず俺が言って服を買ってきたいんだけどお金とか持ってる?」
タイガのほうを向いて聞く。
「これなら使っていいぞ。」
フィンが懐から何枚かの銀貨を出した。
「これだけあれば買えるもんなの?」
フィンに聞き返すが、答えを聞く前にシオンが話し始める。
「フィンも行けばいいじゃない。」
フィンを連れ、服を買いに行く。
「かわいいの買ってきてね。」
シオンは最後にそう言って俺の頬にくちづけをした。
村に入るが、店があるようには思えない。
畑で農作業をしていた女性を見つけて、声をかける。
「すいません!
女性用の服が欲しいんですが。」
女性はこちらを変な顔で見ながら聞き返す。
「女性用の服?
男2人旅で?」
上半身裸の男が女性用の服を欲しがるなんて怪しまれるに決まっている。
「いえいえ、私の妻が途中で服を破ってしまい今着るものがないのでこの村にも入れないのですよ。」
それを聞いた女性は少し遠くにある家を指さした。
「あそこは近くの街とよく商売してるから何かあると思うわよ。」
女性に礼を述べその家に向かって行く。
この村の中で最も大きい家だ。
「すいません。
服が欲しいんですが。」
扉をノックして声をかける。
すると中から少し小太りの男性が出てくる。
そして俺を見て困った顔で言った。
「お兄さんのサイズはないね。」
「いや、俺の妻の服が欲しいんだが。
女性用はないか?」
そう聞くと奥に入っていった男性は一着の服を持ってきた。
「すまないね、これしかないよ。」
「いや、助かるよ。
いくらだ?」
そう言って先ほどフィンからもらった銀貨を出す。
「1枚でいいよ。」
そう言った男に銀貨を渡して服を受け取り、シオンの元に戻る。
シオンに服を渡し、俺の服を着る。
シオンのにおいが少しして、少し頬が赤くなる。
「その服好きだったのにな。」
残念そうな顔で俺を見るシオン。
「また、安全なところに行けば服くらい何とかなるだろ。」
そう言ってシオンの頭を撫でる。
シオンと手を繋ぎ、村に入っていく。
先ほどの女性に再び声をかける。
「服買うことができました、ありがとうございます。
ついでにどこか泊まれるところありませんか?」
そう聞くと、困った顔になる女性。
「こんな小さな村だからねぇ・・
みんな近くにある町に止まるよ。」
「その町に行くにはどうすれば?」
「村の向こうに道があるからその道なりに行けばすぐ着くわ。」
そう言いながら指をさす女性。
「何度もありがとうございます。」
そう言ってシオンの手を繋ぎ町に行く。
「ギルドとか大丈夫かな。」
シオンを見る。
「大丈夫よ。
何かあっても私が守るわ。」
そう言って笑うシオン。
なにより、お金はどうするのだろう。
まずは町に入ってから考えよう。
森の中に人が2人程度歩けるような細い道がある。
その道をシオンと手を繋いで歩く。
「あーるーこー、あーるーこー私は元気ー」
シオンが不思議な歌を口ずさむ。
「何その歌?」
上機嫌なシオンは笑顔で教えてくれる。
「これはね、お父さんが教えてくれた歌。
よく2人で散歩したときに歌ってくれたの。」
「そういえばシオンのお父さんってどんな人?」
「んー・・・
わかんない!
あんまり一緒にいることなかったから!」
シオンの父親は法王という立場にいると言っていた、だとしたら忙しくてあまり一緒に過ごせなかったのだろう。
そう言えば俺の父親は?
どんな人だったのだろうか。
思い出そうとしてもなかなか浮かんでこない。
黙って思い出そうとしているとシオンが俺にくちづけをする。
「変なことは考えなくていいのよ。」
シオンがそう耳元で囁いて、さらに濃密なくちづけをする。
さらにもう少し歩くと大きな道に出る。
「この先にあるんじゃない?」
シオンが俺の手を引いて早歩きで進んでいく。
少し進むと町についた。
「本当にすぐだったわね。」
笑顔で走り出すシオン。
何も言わずについてくる2人を気にも留めずに走っていく。
門番に頭を下げて中に入る、どうやらこの町はそこまで大きくないようでいちいち検査などなく入れる様だ。
中に入り宿を探す。
門の中をまっすぐ進むと宿があり、シオンと2人でそこに入る。
「2人だといくら?」
上機嫌なシオンがカウンター越しに宿屋に尋ねる。
「銀貨2枚だ。」
服で銀貨1枚は高すぎだったな。
「2泊分お願い。」
少し後悔したが、あきらめてシオンと2人で1部屋取って部屋に急ぐ。
シオンは部屋に着くなり服を脱ぎすて、俺の服も脱がす。
そしてベッドに俺を押し倒す。
「もう我慢できないわ。」
そう呟いたシオンは俺の上にまたがった。
2人とも息が乱れた状態でベッドに寝ころぶ。
「おなかがすかない?」
シオンに話しかける。
「何か食べに行く?」
シオンは嬉しそうにこちらを向く。
「でも、お金がない。」
シオンはそれを聞いて微笑むと、立ち上がって服を着る。
シオンに続いて立ち上がり俺も服を着て2人外に出る。
急に人通りの少ない道に行って俺に抱き着きキスをする。
音を立てて俺の唇を貪るシオン。
気が付くと2人組の男が立って俺たちを見ていた。
「ここは門で検査がなかったでしょう
つまりこういう輩も集まるのよ。」
そう言って男たちを押さえつける。
急に見えない何かに掴まれた男たちは慌てて逃げ出そうとするがシオンはすぐに首を折る。
悲鳴を上げることもできずに殺された2人の懐から財布を取って、中身を抜いて立ち去る。
「これでご飯が食べれるわ。」
笑顔で俺の手を引いて行くシオン。
シオンの選んだ店に入り、シオンは俺に注文を選ばせた。
2人で食事をとって再び宿に戻る。
「女の子はね、おなか一杯の時のほうが燃えるのよ。」
そう言って自らの服を破り捨てるシオン。
「また、服破って・・・」
「あら、前破ったのはあなたよ?」
そう言ったシオンの瞳に見つめられて、理性を失い、裸のシオンを掴みベッドに連れ込む。
「こんな風にね。」
そう呟いたシオンは俺の服を脱がし、抱き寄せた。
翌朝、シオンに起こされる。
「私の服を買ってきて、今度はちゃんとあなたが選んでね。」
シオンに部屋から追い出されて、服を買いに行く。
シオンの趣味なんて知らないしな・・・
そう悩みながら服屋の場所を宿屋に聞いて向かう。
そこには多くの服が並んでいて、店にいた女性が話しかけてくる。
「彼女さんへのプレゼントですか?」
「いいえ、妻です。」
そう答えて服を探し始める。
その中で1着のドレスに目が奪われる。
長袖で膝まで隠れる長さのスカート、シンプルな装飾は目立ちすぎずドレスを美しく見せていた。
手持ちの全額とほぼ一緒、それを買うことを決めて、あと下着も選ぶ。
一文無しになってしまったが一式もって宿屋に帰る。
シオンが寝ているベッドに忍び寄ってシオンの肩を揺らす。
「ここに置いとくから着てみて。」
そう言って部屋の外に出る。
シオンに呼ばれて中に入ると、そこに立っていたシオンはまるで天使のように美しくドレスを着こなすシオンだった。
少しきつそうな胸と、膝まで隠しているスカートに目が行く。
何度もシオンの全身を目で見て言葉にできずに固まる。
「何か言ってよ。」
困った顔で呟くシオンを何も言わずに抱きしめた。
そしてそのままシオンの唇を奪う。
俺の体を押しのけたシオンは笑顔で俺の目を見つめる。
「それって綺麗ってことよね?」
そう言ったシオンを両手で抱えてベッドに運ぶ。
シオンを押し倒してつぶやく。
「とても。」
シオンの服を丁寧に脱がして肌を重ね合う。
シオンと交われば交わるほど、頭の中がすっきりとしていくようだった。
思い出せない誰かのことも忘れていくようで心が軽くなっていく。
「ねぇ、」
シオンが俺の腕にキスをする。
「私、幸せよ。」
シオンがつぶやく。
「俺もだよ。」
そう言ってシオンを抱き寄せた。
夜まで2人ベッドで過ごし、夜になったら昨日の方法でお金を稼ぐ。
翌朝、テントを買って町を後にする。
町の外で待っていた2人と合流して道なりに進んでいく。
「この次はどこに行くの?」
シオンに聞くとシオンは少し考えた後に首を振った。
「わかんない!」
シオンは道の続く方へ歩いて行く。
しばらく歩くと道が分かれていた。
「どっちに進む?」
シオンはタイガを見る。
タイガが右のほうを指したのでそちらに進んでいく。
俺は美しいドレスを着たシオンを見て願う。
こんな日々がずっと続いて行けばいいのにな・・・




