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無能の異世界物語  作者: ちくわぶ
新世代
101/127

洞窟

シオンが俺の右手を治療する。


タイガは少し先を警戒してみている。


「もうこんなことしないで。」


真剣な顔で俺を叱るシオンを笑ってごまかす。


「来るぞ。」


タイガとフィンが身を隠して構える。


俺とシオンを見て男が2人が駆け寄ってくる。


身を隠していたタイガが1人の首をナイフで切る。


すぐさまタイガに攻撃を繰り出したもう一人の男に大剣を振り下ろすフィン。


「さぁ行きましょ。」


治療を終えて再び進み始める。


少し進んだところでタイガが俺たちを止める。


「この先に罠があります。」


少し広くなっている空間の前でそう言うタイガ。


「ここで騒ぎを起こして人を呼べばいいんじゃないか?」


俺がそう言うと、シオンが笑顔で悲鳴を上げる。


「きゃーーーーー!!!!」


甲高い声が洞窟内に響いて、人がやってくる。


大量にやってきた男たちは何事もないかのようにその広い空間に集まる。


無意識のうちにシオンをかばうように前に立つ


弓矢を持った集団が遠距離から俺たちを狙い、叫ぶ。


「お前たちは何者だ!?

答えなければ殺す。」


それを聞いたシオンは嬉しそうに笑って俺の前に立つ。


手を前に出してまるで平泳ぎをするように腕を外に向かって動かす。


すると前にいた男たちが全員壁に押し付けられる。


俺の手を握ったままゆっくりと男たちに近づいて行くシオン。


「これで全員かしら?」


先ほどこちらに向かって叫んできた男に近づいて質問する。


その男は何も言わずにシオンを睨む。


シオンと男の間に立ち、男を睨みながら話を聞く。


「いったいお前はなんなんだ・・・?」


男はシオンを睨みながらそう呟いた。


シオンはその問いに答えずに別の男を近くまで引き寄せる。


シオンは足元の男を見た。


すると、その男の足がねじれてあたりに血が飛び散る。


男の悲鳴が洞窟内にこだまして、ここにいる男たちに恐怖が広まっていく。


片足になってしまった男を仰向けに刺せるシオン。


「ほかにもいるのかしら?」


笑顔でそう言いながら男に顔を近づける。


シオンと男の間に割って入る。


「シオン、血で汚れてる。」


足元を指さす。


するとシオンは笑顔で俺にキスをして耳元で囁く。


「ありがと、でも大丈夫よ。

あなたが汚れる方が心配だわ。」


そして、俺をシオンの後ろまで押して目の前の男にもう一度質問をした。


「答えを聞かせてくれるかしら。」


片足の男はシオンを見て何も言えなくなってしまい、必死に地を這って逃げようとする。


シオンはその姿を見てつまらなさそうにその男から目を離す。


するとその男はそのまま奥の道へと引きずられて行った。


悲鳴がだんだんと遠くなっていく。


「あなたたちは口が堅そうね。」


そう言って先に進み始めるシオン。


「後はよろしく頼むわね。」


そう言って2人を一度見て、俺の手を掴み走り始めた。


からだに自由が戻り、先ほどの男がシオンにとびかかる。


とっさにシオンをかばおうと前に立つが、空中で静止する男。


シオンはとっさに動いた俺を嬉しそうに笑顔になる。


空中の男は何かに握り潰されて、その血が俺の全身を赤く染めた。


「どこか水浴びできる場所を探しましょ!」


シオンは先ほどよりも早く走り始めた。


地面には先ほど引きずられて行った男の血が先まで残されていた。


その血を追うように走っていくとその先には太陽の光が差し込んでいる場所があった。


そこには滝があり、それを見て嬉しそうにスキップをしたシオンは俺のほうを向いた。


「さぁ、服を脱がして。」


そう言って目の前で手を広げるシオンに手を伸ばす。


シオンの目を見つめる。


急に体が熱くなったような気がしてシオンの服を掴み、破り捨てる。


「もう。

相変わらず乱暴ね。」


嬉しそうにそう言ったシオンは俺の服を優しく脱がし、今にもとびかかっていきそうな俺の手を引いて水に入っていった。


肌を重ねていると、2人がやってくる。


傷だらけになったタイガとフィンが歩いてきて、腰を下ろした。


2人を見てため息をついたシオンは俺にキスをして、それが合図かのように俺は動きを速めた。


水から上がって俺の服を着るシオン。


「あなたたちボロボロじゃない。」


ため息をついてそう言ったシオンは俺にズボンをはかせる。


「まぁ、いいわ

行きましょ。」


そう言ってさらに奥へと進んでいく。


脚を引きずりながら歩くフィンと腕を抑えて歩くタイガ。


全身から血を流しながら歩く2人を見ていられなくなり、シオンの手を掴む。


「2人も治療してあげたほうが・・・」


言い終える前に2人に目をやったシオンはまるで興味が無さそうな目で2人を見て背伸びして俺の頭を撫でる。


「あなたは優しいのね。

でもいいのよ。」


表情すら変えない2人をみて少し違和感を覚え、シオンにお願いする。


シオンの肩を掴み顔を近づける。


「お願い。」


そう言うとシオンは両手で俺の頭を掴み、キスをする。


「特別よ。」


唇を離して耳元で囁いたシオンは再びキスをした。


少しの間静かな洞窟内に2人の唾液が交わる音が響き、満足すると笑顔で俺の手を引いて歩き始めるシオン。


振り返るとそこには先ほどまでの傷が嘘のように消えた2人が立っていた。


「ありがとう。」


シオンにそう言って密着して歩く。


シオンは嬉しそうに腕を組み、何も言わなかった。



洞窟をさらに奥に進んでいくとそこに1人の男が座っていた。


その男はだるそうにこちらを見て、その瞬間にフィンとタイガが俺たちの前に出る。


「誰だ?」


そう呟いた男は立ち上がる。


しかし、急に目の前の2人が吹き飛ばされる。


シオンの手を強く握りしめて、男を睨む。


2人はすぐに立ち上がり、男に向かって行く。


その男はゆっくりと振り返り、座っていた椅子の横に置かれていた剣を手に取る。


タイガがナイフを右手にもって男に近づく。


しかし次の瞬間にはタイガが肩を刺され地面に貼り付けられていた。


そして向かってきたフィンの拳を男がよけたと思ったら、フィンが吹き飛ばされていた。


「あのーあれだ。

ここが何だかわかってるんだよなお嬢ちゃん。」


そう言った男はまたゆっくりと振り向いて剣を拾う。


その男に向かって手を伸ばすシオン。


しかし、その男は急にそこから飛びのく。


「お前、何者だ。」


シオンが口角を上げて両手を上げる。


男の姿が消えて、謎の音が響く。


目の前に剣を持っている男がシオンに剣を刺そうとしていた。


すぐに下がった男は持っていた剣を捨て新たなものを拾う。


「いったいどうなってるんだこれは。」


シオンは何も言わずにその男に再び手を伸ばす。


男は横に飛びのく。


しかし空中で動かなくなる。


「なんなんだよこれは。」


そう呟いた男はため息をついた後、姿を消す。


気が付くと俺の腹を貫いている剣。


俺の腹から血が流れ出し、シオンはそれを見て悲鳴を上げる。


その場に膝から崩れ落ち、顔を何とか上げてシオンを見る。


泣きながら何かを叫んでいるシオンの向こうには男が迫っていた。


残っている力を振り絞って立ち上がる。


腹から出る血が急激に増える。


そのまま倒れこんでしまうが、男はシオンに近づいた瞬間に爆散する。


辺りに血が飛び散るが、シオンにはかかっていない。


「大丈夫よ、すぐに直すから。」


シオンが泣きながら叫ぶ声が聞こえる。


あっという間に痛みが消えていく。


シオンは泣きながら俺に泣きつく。


「もう大丈夫。」


そう言ってシオンを抱きしめて立ち上がる。


「2人も助けなきゃ。」


シオンに掴まれて、その場に座る。


「今は動いちゃダメ。」


そう言って俺の膝に座り、泣きながら俺に抱き着いていた。




少しして泣き止んだシオンは俺に言われて嫌そうに2人の手当てをする。


それがすむと、男が座っていた椅子の後ろにある宝石やアクセサリーなどに目が付く。


「ねぇ、私に何か選んでよ。」


シオンは照れながらそう言って俺を押して椅子に座った。


目の前にある高価そうなものの中から、薄い赤色の宝石がはまっている金でできたネックレスを選ぶ。


そしてその横にあった、真っ黒な石が付いている指輪を拾った。


椅子に座っているシオンに後ろからそのネックレスをつける。


そして前に回って指輪をはめる。


「ちょっと待って、なんで右手なの!?」


シオンはそう言って右手を掴んでいる俺の手を払いのける。


「え?

なんでって言われても・・・」


「左手にして。」


そう言って左手を差し出すシオン。


「これにどういう意味が・・・?」


指輪を通しながらそう聞くと、ため息をついたシオン。


「男が女の左手に指輪をつけるってことは、一生を誓い合う契約になるのよ。」


そう言って指輪を眺めた後に嬉しそうな顔で俺に飛びつくシオン。


「さぁ、ここを出ましょうか。」


そう言って残りのものには目をつけずに出口に向かって歩き始めた。




「やっぱり洞窟は嫌いね。」


外に出て陽を浴びながらそう呟いたシオン。


「そう思わない?」


そう言って腕を引っ張る。


「俺はシオンがいればどこでも。」


笑顔で答える。


それを聞いたシオンは背伸びをして唇を奪う。


「行きましょ!」


そう言ったシオンはどこかに向かって歩き始めた。

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