黒き大災害その5
前の世界で兄弟子と殴り合い、骨を砕かれた時よりも
ヴォンカが生み出した獄炎の世界で焼かれた時よりも
毒に血を吐いて地に付した時よりも
体に風穴二つも開けられた時よりも
その光に飲まれる瞬間、死を悟った。
死を覚悟したわけではなく悟った。
それほどまでの圧倒的なまでの存在だった。
音は光に飲み込まれ、ただただ感覚だけが消えていくようだった。
が、俺は生きていた。
防ぐすべはなかったはずだが、一体何があった……。
光で奪われていた視界が次第に戻っていくと目の前に
氷壁が俺を囲うように築き上げられていた。
王子がやってくれたのか……
そう思っていると氷壁にひびが入り崩れていく。
氷壁が崩れたことにより外の景色が目に入ると同時に思わず固唾を飲んだ。
そこには瓦礫、岩、木、川などの障害物一つ無く、地面には氷のような何かが
一面に張り巡らされた異様な景色が目に見える範囲全てに広がっていた。
他も同じように守られていた事が一目でわかり、無事を確認出来た事だけが救いだった。
それほどまでの異様な光景に目を奪われている中
ガラスを踏み砕くような音を発しながらドラゴンが地に降りる。
その姿に絶対的強者、黒き大災害としての実力を改めて感じざるを得なかった。
これを倒す手段……果たしてあるのだろうか。
異様な光景にその場にいたものの多くが目を奪われ、動けなくなっている中
動く、いや崩れ、膝をつく者の姿があった。
「っ!?」
「アーシェ!!」
「……大丈夫だよ、少し立ち眩みがしただけさ」
崩れた者に幼馴染が駆け寄り、肩を貸す。
口ではそう言いつつも肩で息をしており、明らかに消耗しているのが目に取れた。
彼は先ほどの光がすべてを飲み込む、その瞬間自らの氷魔術で囲い
一瞬で崩壊する氷壁を一瞬で作り直し続けてその場にいた
多くのもの、全員を守ったのだ。
そんな事をすれば消耗が激しいのは当然だろう。
「すまん……」
「何……僕しか出来ない事をやっただけだよ……気にしないでくれ。
そんな事より……やつをどうにかしないと……ね」
「あぁ……そうだな」
そうは言いつつもこの場にいる誰しもが対処法を思いつかなかった。
出来る限りの大技は繰り出した、しかし簡単に振り払われた。
どうすればいい……そう思いながら大災害に目を向ける。
ドラゴンが息を吸い込み始めて口から蒼い光が溢れ出す。
少しは手加減してくれよ……
そう言いたくなるが言ったところで手加減をしてくれるわけではない
すぐにその場から離れるべく動き出す。
直後に先ほどまでいた場所に熱線が直撃し、その場が吹き飛ぶ。
熱線は前と同じように俺を追いかけてくる。
このまま逃げ続けても、事態は好転しない。
アンジュの分析はまだ進んでないのか!?
[分析、今終わりました!!]
「でかした!!で、分析結果はどうなんだ、何とか出来そうなのか?」
[はい。弱点ですが首のしたにあるさっきから光っている逆方向に生えている鱗、
ケンさんの世界でいうところの逆鱗が弱点だと分析結果が出てます]
「逆鱗!?触ったらぶち切られるっていうあれか?」
[はい、その逆鱗です。その逆鱗がエネルギーを生み出していると思われますので
それを引っぺがしてしまえばもう熱線は使えないと思われます。
更に再生時にもあのエネルギーを使っているようなので攻撃を封じると同時に
再生も封じることが出来ますから勝機はあるはずです!!」
「わかった、分析ありがとな」
勝機がある、そう言われたのなら掴みとってやる。
そうでなくとも首筋にかみついてはやるつもりだったが……。
弱点がわかった以上いつまでも逃げてばかりだなんて出来ない。
進行方向を急に変えて、速度を上げながらドラゴンへと向かって行く。
熱線が後をつけてくるが射程圏内に入るや否や跳び上がって
ドラゴンの喉元の蒼く光る鱗、逆鱗へ突っ込む。
しかし、ドラゴンは瞬時にかがみながら体を回転させて尾を振るう。
[不味い!!ケンさん!?避けてください!!]
あまりに綺麗に行われたその行動にアンジュの声も反応も間に合わず
尾が直撃し、吹き飛ばされる。
なんとか態勢を整えて受け身を取ろうとするが吹っ飛ぶ速度が凄まじく
受け身が機能していないのか一瞬思考が真っ白になる程の衝撃が全身を走る。
そんなとてつもない衝撃なので威力を殺しきれず体はバウンドし
それが何度も続いた後に何かにぶつかってようやく止まった。
頭の中に火花が散るかのような感覚に陥り、動く事が出来なかった。
「……!?……ケンッ!!だ、大丈夫!?」
そう言って近くにいたアシェル達が駆け寄ってくる。
心配させまいと立ち上がろうとするが、体にうまく力が入らずに立てない。
「シェシュル、治療の方してあげて」
「は、はい!!」
シェシュルが治療をしようとするがその手を掴んで止める。
「え、え?」
「待て……お前らは…逃げろ……」
俺を治そうとして集中しているところに熱線でも撃たれたら纏めてやられる。
そんな間抜けな行為だけは断固として阻止しなければならない。
「お主が心配するような事はない、鬼の首領たちが注意を引いてくれているからのう」
ぶつかった何かから声が聞こえた……この声はアマラか。
「そうか…お前、にぶつかったのか…すまない」
「気にするでない、お主もあの大災害を突破するためには必須な存在よ。
替えが効く我が傷つく程度、なんて事はない」
「……アホか、そういう事…じゃねえんだよ……」
やべえ……喋るのも辛い……。
思ってた以上にダメージがでかいみたいだ。
「ほ、ほら、喋るのも辛いんですから黙って治療受けてください」
「あ、ああ……」
流石におとなしく治療受けるか。




