潜入作戦その3
ソラに慰められているアヤカを連れていくべく声をかける。
「お前さっきの話聞こえてただろ。行けるか?」
「う……うん」
アヤカはそう言ってゆっくりと立ち上がり
ソラへ向かってぺこりと頭を下げる。
「そ、その、話を聞いてくれて…ありがとう……ソラ…さん」
「いえいえ。それよりも自分が後悔しないようにして下さいね」
「は、はい!!」
そう言ってこちらを向くアヤカ。
「……もう大丈夫なのか?」
「うん、もう大丈夫。
あの人の答えを聞かないといけないと思ってるから行きます」
怯えてもいるが、その目には覚悟も見えた。
なら、俺が何か言うのは野暮だろう。
「じゃあ、王子行ってくるがどこにいるんだ?」
「ブーンをこっちへ飛ばすからそれに付いてきてほしいとの事だ。
恐らく向こうから飛んでくると思うけど……」
そう言って王子が5時の方向を指差した。
その方向を凝視していると鳥が一羽向かってきているのが見えた。
鳥は翼をはばたかせながらこちらへ一直線へ向かっている。
もしや……あれか?
「王子、こっちに飛んできてるあの鳥か?」
「……そうだね、あれだ」
「どう見ても鳥にしか見えないぞ…どんな技術だよ」
俺の記憶が正しければドローンとか言うやつなら俺がいた世界にもあったけど
人口的な形をしていて、少なくともあそこまで鳥を再現出来てなかったはずだ。
そう思いながらじっと見ているとその鳥らしいものは近づくにつれて
徐々に下降して、そのまま翼を折りたたみながら俺達の近くに着地した。
「………これ、鳥じゃないの?」
アヤカがそう言っているが、俺もそう言いたくなるぐらいに違和感が無い。
群れの中に交じっていたら気づかないと断言できるほどだ。
「ヴォンカ曰く探知魔術に引っかかることなく視覚的にも違和感ない形に
収めたものとの事だ。私も始めて見た時は驚いたよ」
半信半疑の状態でそれを触ってみると羽のさわり心地が全く違った。
全く体温も感じないところを見るとやっぱり生き物ではなく
魔具なんだろうなと実感できた。
しっかしやべーな、これ……。
こういう世界って技術力が低いってイメージあるけど
この世界は非常に高いという事が改めて分かった。
いや……それどころか俺が住んでいた世界の技術力を超えてすらある。
そう思っていると、翼を広げて飛び上がった。
これはついて来いって事か……。
「じゃあ、行ってくるわ」
「あぁ、頼んだよ」
そう言って二人で向かおうとすると後ろから服を引っ張られる。
振り向くとキコが服をつまんでいた。
「けんは今からあの子を助けに行くのですか?」
「あぁ、要件終わり次第探しに行くつもりだな」
「じゃあ、僕も連れて行ってほしいのです。友達を助けたいのです」
「遊びに行くわけじゃあないんだぞ、わかっているのか?」
「それはわかっているのです。わかっていて言っているのです」
わかっているか……俺が思っているのとどこまであってるかは知らないが
服を強く掴んでいるところからすると決意は固いみたいだな。
だが、危険な敵地に行くんだ。何があるかわからない以上は安々と許可できない。
どうやって断るべきか頭を回転させる。
キコはいい子だ、いい子だからこそ出来ない事と言えばあれがあるけど
ちょっと意地悪な感じになるが……。
「今から言う約束守れるって言うならついてきてもいいぞ」
「約束…ですか?」
「あぁ、俺に何かあっても助けないって約束できるか?」
「助けちゃダメなのですか?」
「そうだ、約束できるか?」
「………わかったのです。約束なのです」
マジか、承諾したかぁ。
無理だって言わせたかったんだが……約束してしまった以上は仕方ない。
「………じゃあ、行こうか」
「……?…なんで残念そうなの?」
「そんな事ねえからさっさと行…っと王子、潜入して俺達は何をすればいい?」
「……そういえば言ってなかったか、すまなかった。
何をすればいいかと言うとは盛大に暴れてほしい。
そうなれば僕達はそれを聞きつけて助けるべく入国したと言い分が出来る上に
挟み撃ちと言う形になる、そうして対策を練らせる前に押し切る作戦だ」
割と脳筋な作戦だが……実に合理的だ。
こっちの単純な戦力は圧倒的である以上は下手に策を講じるよりも
その力を通せるようにして押し切った方が良いだろう。
「了解、じゃああの目立つ城を盛大にぶっこわ―――」
「それはダメ!!」
「なんでだよ、別に壊したって―――」
「絶対ダメだから!!」
「わかった、わかった。別のモノにするから睨むな」
下手に言い合ったらまた斬りかかってきそうな雰囲気だ。
こんなところでまた殺し合いに発展なんてしたくないからここは引いておこう。
「じゃあ、今度こそ行ってくるわ」
「あぁ、頼んだよ」
そう言って3人で鳥型の飛行魔具を追いかけていく。
見上げて見ているが、翼も適度に羽ばたいて動きが完全に鳥だ。
これを偵察機だと見抜けと言われると無理だろうなぁ。
「ソラ。これからは何が起こるかわからない。国に戻ってくれないか?」
「はい、って言いたいんですけど兄さん。私を送って魔燃石は
……それの代わりは持つんですか?」
「僕だってラオージュやヴォンカには劣るとも極術師だ
人一人を送る程度の魔力ぐらい問題ないよ」
「そうですか……兄さん、無茶はしないでくださいね」
「出来る限りはそうするつもりだよ、吉報を待っていてくれ」
「わかりました、兄さんの大好きな料理作って待ってますね」
そう言った後に何かが転送される音が平野で発生した。




