一時休戦その2
「そんなに気になるんならすぐにやればいいだろ」
「(ビクゥ…ッ!!)」
「彼女とは休戦の協定を結んだんだ、それは出来ないよ」
「なら言うなよ。アヤカだったっけ?が、お前の後ろでビクビクしてるぞ」
彼女からはさっきまでの怒りにまみれた頃の面影は微塵も見れない。
そんな震えてる姿はまるで小動物のようでなんだか可愛く見える
「怖がらせるつもりじゃないんだ。僕は味方だと思っていた人が急に
敵に回ったらは精神的に来るだろうから予め確認しておきたかったんだ。
ケン君もそう思うだろ?」
「いや、別に」
特にこいつはさっきまで殺し合ってたやつだからなったとしても
やっぱりかとかしか思わないと思うけどなぁ。
「………ケン君もラオージュと同じ考えなのか」
そう言って苦笑いの様な表情をする王子。
そう考えた方が精神的にも楽だと思うんだけど、王子は考えられないタイプか。
「けんもお父さんと同じような考え方なのですか」
「親父さんと同じ考え?」
「はい、お父さんが敵なら僕でも容赦はしないし
味方なら怨敵相手でも背中を預けるって言っていたのです。
だから、同じ考え方なのかなと思ったのです」
「流石に怨敵に背中を預けれる程肝座っては無いが、大方そんな感じだな」
「だからなのですね。お父さんみたいだなーって思うのは」
「お父さんみたいって…喜んでいいんだかわからんからやめてくれ」
この年でお前ぐらいの子供がいたら絶対、間違いなくヤバいやつだ。
変な目で見られると困るからあまり人の前で言わないでほしいなぁ…。
「え……じゃあ、ロリk」
「は?」
「ひっ…!?」
さっきまでビクついていたやつがとんでもない事を言いそうになっていたので
睨みつける。コンプレックスなんて抱いてるわけないだろ。
面倒みてるだけだっての。
「ちょっとケンさん、女の子睨みつけたらダメですよ。怯えているじゃないですか」
「すまん、とんでもない事言いそうになっていたからつい……」
「もう、気を付けてくださいよ。大丈夫ですから、ね」
「ひぅ……こ、怖かったよぉ…。今度こそ殺されるか…と思った…」
「心配ないですよ、ケンさんはそんな無暗に殺傷する人じゃないですから」
ソラが怯えるアヤカを慰める。
俺に斬りかかってきた時のこいつも十分睨みつけて来たんだが
とか言ったら本気で怒られそうなので黙っておこう。
アヤカの事はソラに任せるとして、そういやこいつらだけなのか?
本来来てそうな奴らが見当たらないが…
「ラオージュ達は先に行ってるのか?」
「いや、彼らは偵察に行って貰っているよ」
「偵察?あいつなら単身突撃させた方が強くないか?」
あいつの風の鎧と竜巻を適当に使うだけで並大抵の魔術師じゃあ
手も足も出ないと思うけど何か不都合な事でもあるのか。
「それについてなんだが、確かにラオージュは強いよ。
恐らく彼なら単身でも攻め落としかねないほどにね。
ただ、僕らは致命的な弱点を2つ抱えているんだ」
「致命的な弱点?」
言い方からすると共通の弱点って事だと思うけど……何がある?
有名すぎて弱点がばれてるとかか?
「あぁ、それは探知魔術にあっさり引っかかるところだ。
妨害魔術もほとんど機能しないぐらいに、あっさりとね。
だから、近づけば簡単にばれてしまうというより
恐らくは僕達が近くにいる事はもうバレているだろうから対策はしているはずだ。
だからこそ、下手に攻め込めないんだ」
「確かに来るのが分かってるのなら相手が強大でも色々対策出来るだろうけど
だったら、お前も含めて3人で攻めこめばいいんじゃないか?」
あの斬風で作られた竜巻が吹き荒れ
灼熱地獄が近づき、溶岩が鞭のような形を作って暴れまわり
ありとあらゆる場所が凍り付き
それぞれの対策なんて別の誰かが飲み込んで……
まさに地獄そのものにしか見えない洋マンチプレイが出来ると思う。
けど、何か問題でもあるのか?
「それなんだけど僕達、極術師は共闘に向いていないんだ。
互いの魔術の規模の大きさが災いして互いの魔術を食い合いかねない
これが二つ目の弱点なんだ。一応対策としては片方が配慮して片方が攻めるようにすれば
いいんだけど、それはかなり難しくて平野のような場所でもうまくいかない程なんだ」
「相手が見える場所ですら難しいってなら街中じゃあ無理か……。
だけど、どうする気だ。このまま睨み合いを続ける気か?」
「もちろんし続ける気はないよ。だからこそラオージュ達に偵察を頼んだんだ」
そう話していると王子が懐から何かを取り出す。
あれは……通信機のようなやつだっけか。
「ラオージュか、何か見つかったかい?…ふむ、そうか……わかった」
ラオージュが何かを見つけたらしい。
これでいい方向に進めばいいのだが、どうなる?
「ケン君、アヤカ君と一緒にラオージュがいるところへ行ってほしいんだけどいいかい?」
「俺でいいのか?」
「いや、君だからこそだよ。君の体質上魔力探知には絶対に引っかからない
誰よりも適任ってわけだ」
そういやそうだった。
俺には魔力が一切ないから、魔力探知に一切引っかからないんだ。
潜入にするにはうってつけってわけだ。
だが……
「俺はともかくなんでこいつまで行く必要あるんだ?
こいつは探知に引っかかるかもしれないだろ」
あのエネルギー量だ。
魔力量が王子やラオージュクラスだと言われても不思議じゃない。
そんなやつ連れて行ったら俺が潜入する意味が無くなるんじゃないか?
「いや、彼女からも魔力は感じないよ。探知には引っかからないはずだ」
魔力じゃないのか、あれは……。
じゃあ、あのエネルギーは何だろうか。
気になる事が増えたな……。




