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一人目の頂点その1

あれから体感15分程度で街が見える範囲に着き、足を止める。

でかい外壁に覆われた街で、パッと見は外部を拒んでいるようだが

門は開放しており、普通に馬車を引いてる人も通っている。

なんで、外壁で街を覆ってるかはわからんが問題なく入る事は出来そうだ。


[どうします、普通に入国しますか?]

「そりゃ、あの壁登って入って侵入者扱いされたら集める情報も

集められねえからな。ここは普通に行くかな」


ここは怪しまれないようにここは歩いて目指すか。

地面が露出している程度に舗装された道を歩きながら門を目指す。

恰好を怪しまれない事だけが心配事だが…そうならない事だけ願っておくか。


[近くに人の反応が2つあります…。自爆しないように気を付けてくださいね]

「了解」


アンジュの助言通り、気を付けながら歩み続けると前から

牛のような生物を連れた老夫婦が向かってくるのが見えた。

門でヘマをした時とあの夫婦との会話でヘマした時の

デメリットの差が明らかだし、あの二人から情報を得るってのもありか。


「こんにちは」

「ッ!?!?ブルルァ!!!ブルル…」


牛っぽい生物は俺を見るや吠えて、牙を見せながら唸って威嚇する。

今にでも襲い掛かってきそうだ。

しかし、そんな牛っぽいやつを隣の老人が窘める。


「これこれ、こんにちは。旅の者ですか?」

「ああ、そんなところだ」


さて、ここからどう情報を引き出すための会話にするか考えていると

あるものが目に入った。

牛らしき生物が引いている二輪車にはクワなどと言った農具がある中

機械のような何かがあった。

俺が思う魔術世界ってのはこういう機械的な物は一切なくて

技術は中世ヨーロッパぐらいだったんだが、違うのか?


「これは…どういうものなんだ?」

「これですか?これは、畑を耕す魔具です。

畑の大きさには全くあってはいませんが、ワシらも年ですからの。

クワ一つ担いで耕すにも限界が来ますから思い切って買ったんですじゃ」


耕すって事は耕うん機って事か。

そんなものが作られてるって事はこの世界の文化水準は

思っている以上に高いのかもしれない。

ここは魔具ってやつに対してもう少し詳しく聞いておくか。


「こいつは何を燃料として動かすんだ?」

「魔燃石ですじゃ。流石に自分の魔力だけで動かすものは

ワシら年寄りには答えますからのう」

「お爺さん、そんな事言って最初は自分の魔力で動く方を

買おうとしていたではないですか」

「ありゃ、そうじゃったか?」


そう言って笑う老夫婦。

夫婦仲がいいのは見ていて羨ましい。

それよりも魔燃石か、どういう原理で燃料に代わってるのかは知らんが

そんな石炭みたいなものもあるのか……

ますます、俺が思っていた魔術世界とは違うな。

もしかしたら、あの外壁の内側は俺が元居た世界と差異はないのかもしれない。

ちょっと、この耕うん機が動いてるところを見てみたくなった。


「……この魔具が動いてるところを見てみたいんだけど同伴しても良いか?」

「動いてるところと、何故じゃ?」

「あー……恥ずかしながら、その魔具ってやつは聞いた事があるだけで

無縁の生活をしていて、これが初めて見た魔具なんだ。

だから見せてくれねえかな?」

「そういう事ならワシらは別に構わんが旅をしてきたのだろう。疲れておらんか?」

「全く問題ないから気にしないでくれ」

「それならすぐにでも向かうとするか、こっちじゃよ」


了承を貰って二人と一頭と共に畑へと向かう。

隣の一頭が未だに唸っては俺を睨みつけて来る。


「すいません、普段はこんな事をする子じゃないんですが……」

「いや、いいよ。気にしないでくれ」


しかし、なんでこんなに警戒されるのか。

こいつが嫌いな臭いでも発してんのか

それとも、俺の強さをわかって警戒してるのかな?……それはないか。

そんな感じに隣から警戒されつつも歩き続け

辺り一面が土が剥き出しになっている場所に着いた。

ここ、全部が耕すってのか……。

二人と一頭だと、日が暮れても終わりそうにないぞ。


「これをあんたらだけでやるのか?」

「そうじゃよ。ワシら二人なら終わりなど見えぬがこやつがおるからのう。

4日もあれば出来るぞい」


爺さんは笑って言いながら耕うん機を準備する。

4日でこの範囲をやるのか、凄いな……。


「さて、お主が言っておったこいつじゃが、よっと……こう使うのじゃよ」


爺さんがある箇所を踏むと風を切るような音を鳴らし始め

それを押していくと通った個所が耕されていた。

何も回転しているようには見えないが、何をどうやって耕してんだ?


「どうしました?」

「いや、あの魔具は何をどうやって耕してんのかなと思ってさ」

「それなら、ほれあそこから竜巻を発生させていてその風によって

土を掘り返し、畑を耕しているのですよ」

「そういう事か」


ほう、魔術を使えば竜巻をこういう便利な風に使えるのか。

考えてみれば、科学が発展せずに代わりに魔術が発展してるんだ。

こういうものが生まれてもなんら不思議じゃあないか。


「……お前さんもやってみるか?」

「良いのか?」

「まだまだ時間はあるしの、どうじゃ?」

「是非やらせてくれ」


この世界の技術に触れられるなんて嬉しい限りだ。

魔術が使えない以上、疑似的とは言え魔術が使えるチャンスなんだ。

是非とも使わせてもらおう。

爺さんから止めた耕うん機を渡され、爺さんが踏んでいた場所を

同じように踏んでみる。が、うんもすんとも言わない。

何度も踏んでみるが結果は変わらない。


「あれ、動かねえな?」

「おかしいのう、さっきまで動いていたはずじゃが……」


爺さんが踏んでみると耕うん機は動き出した。

なんで俺が踏んでも動かなかったんだよ?

ただ、動き出した以上は問題ない。

爺さんがやっていた様に動かして畑を耕していく。

おぉー…出来てる出来てる。

しかも、切れなくてに引っ掛かるなんて事はないし

竜巻だから掃除する必要もないと……。

もしや、俺がいた世界のものより便利なのでは?

やっているうちになんだか楽しくなって来た。

気分が乗って来たので耕うん機を押してどんどん耕していく。


「楽しそうじゃの」

「…ッ!?……すまん。初めての体験で楽しくてやりすぎてしまった」

「良いんじゃよ、気にせんでも」

[ケンさんって結構子供なところありますよね]


うっせー、バーカ。

申し訳なく思いながら、耕うん機を爺さんに返す。

こんなに体験させて貰ったんだ、俺からも何か返さないと気がすまんな。

何で返すべきか考えているとチラっとクワが目に入る。

……ここは肉体労働で返すべきだな。


「爺さん、見せて貰った上に使わせてもらったんだ。

礼になるかはわからねえけど、手伝わせてくれ」

「やってくれるのはありがたいのじゃが、お主は大丈夫なのか?

旅をつづけるんじゃったらこんなところで体力消費せん方がええじゃろ」

「体力なら自信があるんだ、気にしないでくれ」

「なら、向こうの方を耕して貰おうからの」

「了解、ちゃっちゃと終わらせてくるよ」


クワを借りて、今いる反対側の畑の端へと走って向かう。

畑を耕すなら修行で死ぬほど…

いや、死にたくなるほどやったからやり方は覚えてる。

何度もクワを振り下ろしては土を掘り返して行く。

この程度の土なら半分ぐらい終わらせてやる。

目標を立てて、一気に耕していく。


[ケンさん、情報は集めないんで良いんですか?]

「別にまだそんな躍起になる必要はないだろ。

だったら、礼を返す方が先だ」

[子供の心に戻して貰った礼ですか?]

「うっせー、見た目だけ子供の心は飲兵衛のおっさんは黙ってろ」

[おっさんってなんですか!?お酒が好きなだけでおっさんはないですよ!!]

「おっさんだろ。忘れねえからな、前の世界で俺が必死こいて走っている中

暇だからって酒飲んで、ごが~~!!が~~~!! って

女の子の声だと思えない汚いいびきがずっと頭の中に響いてた事を…」

[あー………はははは……。ごめんなさい、忘れてください]

「すまん、1時間近く聞かされ続けたから忘れられんわ」

[うぅ……そんなぁ…]


そんな泣きそうな声出されても無駄無駄。

自分の行為を悔い改めてくれ。

アンジュの謝罪を忘却の言葉を聞きながら耕し続けていく。

固い何かに当たる時もあったが特に気にせずに耕していき

アンジュの謝罪の言葉が多分おおよそ恐らく200を超えたあたりで

ふと耕した範囲を見てみると結構な量を耕していた。

これは範囲的に4分の1ぐらいかな……


「おぉー……随分とやっておるのう」

「ああ、これなら多少は楽になったんじゃねえか」

「多少どころか1日分はやっておるよ。

これはわしらも礼を返さねばならんのう」

「いや、そんな事しなくてもいいよ。俺が張り切りすぎた、それだけだ」

「しかしじゃな、張り切りすぎたと言ってもこんだけやって貰ったんじゃ。

わしらも礼を返さんと気が済まん」


このままだと埒が空きそうになかったのでクワを押し付けて

その場から離脱するべく即走り出す。


「色々体験させてくれてありがとな、爺さん!!」


一言感謝を述べて走り出す。

結局、情勢とかそう言った情報は得られなかったが

いい体験は出来た、これだけで儲けもんだ。

老人の足なら絶対に追いつけない速度であっという間に走り抜けて行く。

完全に畑も見えなくなった場所で足を止める。

ふぅ……これなら振り切れただろう。


[良いんですか、その礼の中で情勢とか聞いた方がよかったと思いますよ]

「そうなんだけど、あの耕うん機がいくらするのか知らねーけど

あの年で思い切って買ったって言ってたんだ。

って事は恐らくだけどそこまで裕福じゃねえと思う。

だというのに無理して礼なんかして貰ったらなんか気分悪いだろ?」

[良いんじゃないんですか、ケンさんの労働に対する正当な報酬ですよ?]

「俺は労働したつもりはねえからい―――」

「おい!!!そこの貴様、そこで何をしている!!!!」


突然怒号のような声が鳴り響き、すぐに方向に振り返ると

その方向には二人組の男が立っており、明らかに敵意を向けていた。

……これは何かやらかしたかもしれん。


「いやぁ、良い景色だなって思って歩いていたら迷ってしまってさ…」

「嘘をつけ!!迷うだけならなぜ、ステルス魔術を使っている!!」

「ステルス魔術だ…?」


何を言ってやがる、こいつ。

俺は魔術の使い方がわからないどころか使う事すら出来ねえんだ。

使ってるわけがない、何かの間違いに決まっている。


「あくまで白を切る気か?なら……」

「白なんて切ってねえ。わけわかんねえ事言ってないで説明を――ッ!!」


二人のうち一人が腰に携えた剣を抜いた。

まだ、情報を集めてない以上騒ぎは起こしたくねえってのに……。


「最後の忠告だ、何故こんなところでステルス魔術など使ってしている?答えろ!!」


剣を向けて、警告される。

やってもない事に対して答えろとかどう答えれば良いんだ……。


[ケンさん、ここは必死に焦ったふりして身の潔白を証明しましょう。

騒ぎを起こして、あの街に入れなくなったら厄介ですよ]


言われなくてもわかってるっての。

一応、別の世界に来たの二回目なんだ。

なんとか乗り切って見せるさ。


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