疑いの王子
「お前らが来た理由は言わんでもわかる。俺らに尋問して来たんだろ?
時間の無駄を省くために言うが今回のは個人でやった事だ。国は関係ねぇ」
「個人ねぇ…冗談も対外にしろよ。あれは陽動だったんだろ。
あいつを手に入れるための……な」
あいつ……?誰か攫われでもしたのか?
攫われて問題になるような人は全員あったと思うんだが…。
「手に入れる……?何をだ」
「お前に聞いても無駄だったな。そいつなら簡単に口を割るだろ。
おい、あいつをどこに持っていきやがった……」
「お、俺ェ!?し、知らねぇし、あいつって誰だよぉ!!」
「口を割らないなら、割らすまでだ……」
そう言うとビビっている男の頬が切り裂かれる。
頬を抑えて、男はうずくまる。
「知らねぇよ!知らねぇよ!あいつって誰だよ!」
「……そうか、なら…」
何かをしようとするラオージュの腕をアーシェが掴む。
止めたのだろうか、魔術に対しては知識も何もないからわからない。
「落ち着くんだ。普段の君らしくないぞ」
「……ちっ…!!」
舌打ちをして、頭をかきむしるラオージュ。
こいつらしくない、何をそんなに苛立ってるんだ。
「話を変えよう、個人でと言っていたが理由があるんだろう。答えてもらおうか」
「理由だぁ?お前の胸に聞いてみろよ」
「…話がかみ合わないな。君達が掴んでいる情報はなんだ?」
「それなら、こいつが言っていたあいつをってのはなんだよ。気になって仕方ねぇ」
互いに知ってると思い込んで話が進んでるせいか話がめちゃくちゃだ。
見る限り、騙されてるようだが……。
「……あいつと言うのはフラン・トリアンの事だ」
「ん、ちょっと待て。そいつは先代の炎の極術師だろ?」
「そいつだよ。そいつの墓がお前らが襲撃してきた日に掘り起こされて中の棺桶が
持ってかれたんだ!どこに持っていきやがった!!」
鬼の形相と言わんばかりの顔で相手を睨みつけるラオージュ。
それよりも、墓を掘り起こされただと……。
フラン・トリアンって事は前にソラと一緒に墓参りしたあの墓か。
その墓に入っていた人がどんな顔かは知らない俺でも怒りがこみあげてくる。
知っているであろうラオージュがこうなるのも当たり前だ。
「貴様ばかり声を上げるな、私や隊長だって声を上げたいのを抑えてるんだぞ!」
「………ちっ……俺がここにいてもだけだ。悪いが、お前らだけでやっててくれ」
ラオージュが相当機嫌が悪そうな顔でこの場を離れていく。
あいつ、あんなに激昂するんだ。キレても冷静にキレると思っていた。
「……アーシェ王子、さっきの話は本当か」
「本当だ、あの日の夜に発覚した。そして君達はそれに関与していると私達は踏んでいる」
「俺達が関与だと?そんな愚行するものか!!死者を冒涜する行為など俺は許さん!!」
さきほどより強い声、明らかに怒りがこもった声だ。
これを演技で出来たら、こいつは役者になった方がいいだろう。
そう思えるほど怒りの感情が籠っている声だった。
「………そうか、君達は関係なさそうだ」
「当たり前だろう、墓を掘り起こす等例えこの身が裂けようともやらん」
「では一体誰がそのような事をしたというんだ」
「吹っ掛けた連中がいたんじゃあないのか?こいつらを囮にして人目を集めている
隙に……って感じでな」
そうとしか考えられない。それしか思いつかない。
「ここまでの話からするとそうなるが、俺は部下から貴様らが祖国で起きた事件
の犯人だと聞いた。何より証拠もある、そいつだ」
そう言うと彼は牢屋の外に置いてあるものを指さした。
「このペンか?」
「それだ、そいつは一見するとただのペンだが、実際は見た景色を収め、収めた
景色を映す特別製のペンだ」
「そうなのか…ふむ。魔力暴走による爆発する構造などはないようだ。この大きさで
その技術をなせるとはフェールユジーヌの技術力は凄まじいな」
シャルが確認した後に弄るとペンから光が出て、壁に当たると映像を映し出した。
そこに映っているのは…………。
「隊長………だと」
後ろ姿だが確かに王子だ、間違いない。この髪色、服、顔つき、間違いない。
そして、映像に映っている王子が何かを受け取っている。
なんだ、トランクケースのような物だが……。
「この映像で映っている物は間違いなくアーシェお前だろ」
「これは確かに……私だが」
映像を見て、王子も自身だと認めている。
じゃあ、ここに映っているのは紛れもない本人なのか…。
「映像のお前が受け取っているのは祖国で生み出された魔力増幅爆裂粉だ。
その威力たるや並の魔術師の魔力ですら、山一つ消し飛ばしかねない。
それを極術師やそれに通ずる魔術師を多数抱えたこの国が使用してみろ。
複数の国が間の山やら川事吹き飛ぶ大量殺りく兵器の完成だ。
故に奪え返しに来たのだ。貴様がいないという情報も同時に得てな」
「待て、そいつはどう言う事だ。隊長はあの時姿を隠されて出発しておられた。
出向く事自体を知っている人間でなければ気づかないはずだぞ!?」
「何……!?」
なんだか話が噛み合わなくなってきたな。
しかし、映像に映っている王子は見る限り本物にしか見えない。
これでは無実を証明出来ない。
それより俺の中で少しばかりの不信感が芽生えてきた。
一度怪しいと思ってしまうとあらゆる行動が怪しく見えると言うがまさにその通りだ。
しかし、何度も映像を見比べてみると違和感を覚える。
「確かに見れば見るほど、同じなんだが違和感があるんだよな」
「私もだ。最初こそ驚いたが、いざ冷静になってみると違和感を覚える」
シャルと二人して、映像を凝視する。
何か違和感がある、なんだ。何が原因でこんなに違和感を覚えるんだ?
「違和感だと?何を馬鹿な事を言っている!さっさと自分の国の…ふべっ」
「貴様は黙っとれ…ったく。ところでお前達、違和感だと…?」
「あぁ、なーんか違和感を感じるんだ。微妙に違う気がするんだが、肝心の
違う点が見当たらないんだ」
「そこの小僧は付き合いがどれほどか知らんが、お前は長い付き合いなのだろう。
その違和感が何かわからんのか」
「それが私もよくわからないんだ。何かがおかしい、それだけはわかるんだが」
そこに本物がいるんだ、見比べて情報をまとめてみよう。
髪色は同じ、白い服は同じだ……腰にある剣も携えてる側も………。




