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プロローグ.1

――――とある荒野―――


 そこでは青年と大男が互いに拳を握り締めて、相手へ叩き込んでいた。

 大男は鍛え上げられた肉体で青年の連撃を受け止めつつ、拳を振るい

青年は最低限を捌きながら大男が受け止められないレベルの一撃を叩き込む。

 何度も何度も鈍く重い音が鳴り続ける中、より大きな音が鳴り

互いに相手の拳で吹き飛ばされる。


 大男は巨石に叩きつけられ、破壊し崩れた岩の下敷きになるが、すぐさま

その拳にて岩を破壊して青年へと襲い掛かる。

 青年は地面にめり込んでいたがすぐに起き上がって向かい来る大男を迎え撃つ。

 巨大な拳が襲い掛かるが青年は躱しつつ、懐へと潜り込んで拳を叩きこむ。


「グッ……!! だが、まだまだだ!!」


 大男は一瞬こそ怯んだものの叩きこまれた拳の腕をつかみ取って動きを封じて

蹴り飛ばそうとするが青年はそれを身を捻じって躱し

その勢いのまま回し蹴りを放つ。

 喰らった大男は眉間に皺を寄せてよろめいて掴んでいた腕を離す。

 その隙に青年は再び懐へ潜り込み掌底を打ち込む。

 踏み込みで地面が凹み、衝撃は小地震となって辺りに広がる。


「ゴッ……ブッ!」


 大男が大きくのけぞった後に砲撃でもしたかのような轟音が響き

大男はふっ飛ばされ、再び岩へと突っ込んで行き土煙を巻き上げる。


「フ―――ッ……!」


 掌底を撃ち込んだ側である青年は大きく息を吐いて呼吸を整え、態勢を立て直――

そうとしたところで巨大な岩が猛スピードで突進して来た。


「ッ!?」


 飛んできた事に驚くものの拳を握り、構えて飛んできた岩を砕き割る。

 その行動の隙に土煙から出てきた大男は青年との距離を詰めて青年へと

拳を振り下ろす。青年はその場から飛び退く事で躱す事で空を切った拳は

そのまま地を砕き地割れを起こし、辺り一帯に地響きを轟かせる。

 いともたやすく天災同然の破壊を生み出す大男に青年は冷や汗を流しつつも

拳を握り彼へと叩きこむ。彼もニヤリと笑って拳を握り締めて振り下ろす。

 拳と拳が正面からぶつかり合い、空気を揺らし、音を置き去りにした衝撃が拡がり

爆風となって辺り一帯に吹き荒れ、彼らの拳を砕き、本体を弾き飛ばす。

 いち早く態勢を立て直した青年は、前を見据えて大男へと詰め寄り

少年はもう片方の拳を握り締め、大男の鳩尾を打ち抜くために突き打つ。


「なっ……!?」


 が、その拳は想定済みと言わんばかりに大男に受け止められてしまう。

 すぐさま腕をひねり、青年の動きを抑制した大男の蹴りが逃げ場を失った

彼の腹部に突き刺さる。


「ッ……ッハッ!」


 蹴りをもろに喰らった青年はくの字に折れ曲がり、呼吸が、鼓動が、思考が止まる。

 そんな無防備になった彼へ一切の容赦も慈悲もない拳が撃ち込まれ、胸部から

小枝が折れるような音を鳴らし、青年は吹き飛び何度も地面へ叩きつけられる。

 岩に叩きつけられ、地に伏したところで呼吸が始まり、鼓動が再開され

思考が動き始める。それと同じくして痛みが彼に襲い掛かる。


「ガッ……アアァァッァァ! ……ゲッ……カッ!」


 絶叫と嗚咽と吐血が入り混じった声を発し、彼は転がりまわる。

 こんな事やっている場合ではないと理解しつつも止められない程の激痛が

彼へ襲い掛かる。止めようとしても吐血と絶叫によって口が開く。

 そんな状態の彼へ一切の容赦のない無情な追撃が襲い掛かる。


「ッ! ……ゲ……オェッ! オォォォォ!!!」


 少年は絶叫しながらも、その追撃に対処するべく足にカツと力を入れて

嗚咽をかき消すかのように声を張り上げながら飛び退き、追撃を躱して

転がりながら息を整え、肩で息をしつつも体を立ち上がらせる。


「……ッ……クソったれが……!」

「ほう……まだ立つか」

「……当たり前、だろうが……!!」

「そうでなくてはな、来い!!」


 青年は無理やり息を整え、大男を打ち倒すべく拳を握り締めて突っ込む。

 大男は野望のために青年を、弟弟子を砕くべく拳を握り締めて迎え撃つ。

 振り下ろされる巨大な拳を青年は受け流しながら懐へと詰め寄っていく。

 それを迎撃するべく大男は膝蹴りを繰り出すが青年は拳が砕けた腕で

肘うちを繰り出して相殺し、肘と膝に砕け、血が飛び散る。

 互いに痛みで眉間に皺が寄るがそれでも怯むことなく次なる一撃を繰り出す。

 大男は手刀を青年を向かって、青年は掌底を大男の鳩尾へと叩き込む。

 手刀は青年の肩を切り裂き鎖骨をへし折り、掌底は大男を貫き

彼の骨を砕き内臓を一時機能停止させる。


「ぐぅぅッ!!!!」

「……ガッッ!」


 動きが止まった大男を肩を切り裂かれた程度で済んだ青年は回し蹴りで

蹴り飛ばすが大男はその瞬間にその足を掴んで勢いを利用しながら回転し、彼を叩きつける。

 互いにほんの一瞬地面へ寝そべる事になるがすぐさま立ち上がる。

 両足がまだ無事な青年の方が早く立ち上がり彼へ向かって手刀を振り下ろす。

 が、大男は前腕を受け止める事で手刀を止めてもう片方の腕で掴みかかる。

 青年は受け止められるや否や飛び退いて掴みを躱す。

 距離を取った青年とゆっくりと立ち上がる大男。


 互いに腕や足が潰れてはいても骨は砕け、肉は裂けようとも引く事無く止まらずに

真正面から拳を握り締めて相手を撃ち込み合う。

 このような事がいつまでも続くわけがなくついに互いの拳が相手の致命傷に突き刺さる。

 少年の拳が大男の鳩尾に、大男の拳が少年の頬に。


「グッ……ッ! ガハッ……」

「……ガッ、グッ……」


 致命傷を受けて青年はふらふらと数歩下がり、大男は片膝をつく。

 二人とも至る所の肉は裂け骨は砕けており立っているのが不思議な状態。

 そんな状態でもここで負けるわけにはいかない。

 親も、友も、弟も、師も、心から愛した伴侶さえも全てを捨てた者として

師から、友から、好敵手から、彼の弟からも託された者として

打ち砕かれようとも血反吐を吐くことになろうとも何をしてでも勝たなければ

ならない。しかし、いくら気力があろうとも二人の体をすでに限界だった。

 もう、満足に避けれる事も耐えられる事もないのは両方が理解していた。


「互いに……限界のようだな」

「ああ……らしいな」


 だからこそ、二人は次の拳にすべてを込める、負けないために。


「オオオォォォォォォッ!!!!」

「おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 互いに雄たけびを上げながら拳を握り締めて地を踏み砕き、拳を振るう。

 拳を振るうに力しか込められないと叱責された事すら忘れた

全てを乗せた二つの拳はぶつかり合う事なく、相手へと向かっていく。



 その直後、荒野全体で感じる程の衝撃と轟音が響き渡った。


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