第九話「小学生時代の回想(後編)」
地球に戻れて、ほっと一息ついた。
あの恐怖の宇宙船体験から数日が経った夜、俺は自分の部屋で一人になった時、ようやく実感が湧いてきた。
本当に帰ってこれたんだ。
無事に帰れて涙したものだ。枕に顔を埋めて、声を殺して泣いた。怖かった。本当に怖かった。二度と家族に会えないと思った。
手には、宇宙人の置き土産である「洗脳機械」があった。
小さな金属の箱。重さは500グラム程度だろうか。表面には地球のものではない文字が刻まれていて、時々微かに光っているように見える。
正直、使ってみたいという好奇心もあった。
どんな風に動くのか、本当に人の心を変えられるのか——小学四年生らしい、純粋な興味があったのは確かだ。
宇宙人のBが説明してくれた機能は、まるでSF映画のようだった。対象の思考パターンを変更し、新しい記憶をインストールできる。まさに夢のような、そして悪夢のような技術だった。
でも、それ以上に人を洗脳するという恐ろしい機械に恐怖していた。
人の心を操るなんて、絶対にやってはいけないことだと直感的に理解していた。
母さんがよく言っていた。「人の心は一番大切なもの。それを傷つけてはいけない」と。
この機械は、まさに人の心そのものを変えてしまう道具だった。
ただ、捨てるにも捨てられなかった。
一応、宇宙人との示談で受け取ったものだ。それに、こんな危険な物を普通のゴミとして捨てるわけにもいかない。
結局、押入れの中に隠すことにした。コンパクトサイズの金属箱だから、隠すのに不都合はなかった。
古い毛布にくるんで、奥の奥に仕舞い込んだ。できるだけ目につかない場所に。
このまま一生使わなければいい。
そう思っていたが、皮肉にも試す機会が訪れてしまった。
あれは宇宙人に連れ去られて半年後、ようやくトラウマも払拭され、普段の日常に戻った矢先の話である。
春の温かい日差しに誘われて、久しぶりに友達と外で遊ぶ気になった日のことだった。
その日は、近所の空き地でいつものメンバーとソフトボールをしていた。
俺、田村、佐藤、それに向かいの家の健太。みんな同じ小学校の四年生で、放課後はよく一緒に遊んでいた。
「翔太、外野頼む!」
田村がそう言って、俺は外野を守ることになった。
空き地はそれほど広くなく、ちょっと強く打つとすぐにファウルになってしまう。みんな手加減して打っているつもりだったが、健太の打球が予想以上に飛んだ。
「あ、やばい!」
俺は慌てて追いかけたが、ボールは大きく逸れて、近所の田中さんの家の庭に転がり込んでしまった。
「ごめん、取ってくる!」
俺は友達に手を振って、田中家に向かった。
田中さんの家は、近所でも少し変わった家として有名だった。
築30年ほどの古い一軒家で、庭には手入れされていない草花が生い茂っている。外壁の塗装も剥げかけていて、全体的に薄暗い印象があった。
田中夫妻は普通に良い人だった。おじいさんとおばあさんの夫婦で、たまに近所の人と挨拶を交わしている姿を見かけることもある。おばあさんは時々俺たちにお菓子をくれることもあった。
問題は、その一人息子だった。
田中正志——通称「まさし君」。
30歳を過ぎているのに、いわゆる引きこもりという奴で、滅多に家の外に出なかった。
俺たちが知っているまさし君の情報は、すべて近所の噂話から得たものだった。
やれ、隣のクラスの男子がバットで追いかけ回されたとか。
やれ、上級生の女の子がスカートを捲られたとか。
やれ、駐車場に止めてある車を片っ端からコインで傷つけていったとか。
どれも確証のない話だったが、近所の大人たちが眉をひそめて話すのを何度も聞いたことがあった。
「あの息子さんは、ちょっと……」
「田中さん夫妻が可哀想よね」
「できるだけ関わらない方がいい」
そんな会話を大人たちが交わしているのを、俺は何度も耳にしていた。
だから、田中家の庭に入るのは正直気が進まなかった。
でも、ボールを取りに行かないわけにはいかない。友達が待っている。
やばいな、と当時の俺は思った。
まさし君は、近所の子供たちにとって「触れてはいけない存在」だった。もし見つかったら、何をされるか分からない。
でも、運が良ければ気づかれずに済むかもしれない。
とにかくパッと入って、ボールを取って帰ろう——そう決めて、俺は田中家の庭に足を踏み入れた。
庭は思っていたより荒れていた。雑草が膝丈まで伸びていて、歩くたびにガサガサと音が鳴る。古い自転車や壊れた家電が放置されていて、まるで廃墟のようだった。
ボールはどこだろう?
キョロキョロと探し回っていると、ようやく物置の陰に白いボールを発見した。
「あった!」
小声で呟いて、急いでボールを拾い上げる。
しかし、ボールを拾った瞬間、二階の窓から奇声が聞こえてきた。
「うあああああ! くそが! くそが!」
明らかに正常ではない叫び声だった。
なんだ、なんだ?
その時の俺は、好奇心に駆られた猫のような状態だった。
危険だと分かっているのに、どうしても見てみたくなってしまう。
恐る恐る二階の窓を見上げると、カーテンが少し開いている。
俺は近くにあった古い脚立を使って、そっと窓を覗き見た。
そこで見た光景は、小学生の俺には衝撃的すぎるものだった。
窓の向こうには、6畳ほどの汚い部屋があった。
床には服や雑誌、食べかけの弁当の容器などが散乱している。壁には意味不明な落書きがされていて、まるで精神病院の独房のようだった。
その部屋の中央で、一人の男が奇怪な行動を取っていた。
まさし君だった。
30代前半と思われる痩せた男性。髪はボサボサで、何日も風呂に入っていない様子だった。Tシャツとジャージ姿で、服には汚れやシミがついている。
まさし君は床に座り、涎を垂らしながら意味不明な言語を叫んでいた。
「ぺらぺらぺらぺら! ばばばばばば!」
机の上には注射器らしきものが置かれていて、近くには小さな袋に入った白い粉も見えた。
大麻か覚醒剤か、何らかの違法薬物を使用していることは明らかだった。
まさし君の目は血走っていて、瞳孔が異常に開いている。薬物の影響で、完全に正常な状態ではなかった。
時々、まさし君は壁に向かって怒鳴ったり、見えない誰かと喧嘩しているような仕草を見せたりした。
「やめろ! やめろ! 俺を馬鹿にするな!」
そんな叫び声を上げながら、空中を殴っている。
俺は恐怖で体が震えた。
これが、近所で噂になっているまさし君の正体だった。
ただの引きこもりではない。薬物中毒者だったのだ。
衝撃で立ちすくんでいると——
まさし君と目が合ってしまった。
「あ……」
まさし君の血走った目が、窓の外の俺を捉えた。
その瞬間、まさし君の表情が一変した。
「誰だ! 誰がいる!」
まさし君は立ち上がり、窓に向かってきた。
やばい。
俺は慌てて脚立から飛び降りて、逃げようとした。
しかし、小学生の足では限界があった。
俺が庭を出ようとした時、玄関からまさし君が飛び出してきた。
「待てよ、クソガキ!」
薬物の影響で興奮状態にあるまさし君は、異常なスピードで俺を追いかけてきた。
あっという間に追いつかれ、腕を掴まれてしまった。
「痛い! 離して!」
俺は必死にもがいたが、大人の力には敵わなかった。
「おい、ガキ! 何を見ていやがった!」
まさし君は俺の胸倉を掴み、力任せに揺さぶった。その手は薬物の影響で異常に熱く、汗でべとべとしていた。
「ぼ、ボールを取りに……」
俺は震え声で弁解しようとしたが、まさし君は聞く耳を持たなかった。
「ボール? そんなもんどうでもいい。お前、俺の部屋を覗いていただろう!」
まさし君の息は酒と薬物の臭いがした。目は完全に正常ではなく、何をするか予測がつかない状態だった。
「不法侵入だぞ、これは! 警察に突き出してやる!」
「ごめんなさい。もうしません」
俺は泣きながら謝ったが、まさし君の怒りは収まらなかった。
「謝って済むと思ってるのか! お前、俺が何をしているか見ただろう!」
まさし君は俺を庭の奥に引きずっていった。近所の人に見つからないようにするためだった。
「今見たことは親にも警察にも誰にも言うな。分かったな!」
まさし君の手に力が込められ、俺の首が締まった。
「は、はい……言いません……」
「それだけじゃ済まないぞ。口止め料と慰謝料で、毎月一万円をよこせ」
一万円——小学生にとっては天文学的な数字だった。
俺のお小遣いは月に500円。お年玉を全部合わせても、そんな大金はない。
「そ、そんなお金ありません……」
泣きながら訴えても、まさし君は許さなかった。
「ないなら、親の財布から盗んで来い。どうせガキなんだから、親も気づかないだろう」
「そんなこと、できません……」
俺の抵抗に、まさし君は激怒した。
「じゃあ、どうなっても知らないぞ」
まさし君は俺を物置の陰に押し付けた。
「断るなら、気絶するまで殴ってやる。それでも嫌なら、お前の家族にも同じことをしてやる」
まさし君の拳が俺の頬をかすめた。本気だった。
「妹がいるんだろう? 可愛い妹ちゃんに何かあったら大変だな」
その言葉に、俺の血の気が引いた。
美咲——俺の大切な妹。まだ小学一年生の美咲に何かされたら……。
「分かったよな? 来週の今日、ここに一万円を持ってこい。遅れたら、お前の家に直接取りに行くからな」
まさし君は俺を突き飛ばして、家の中に戻っていった。
俺は庭にへたり込んで、しばらく動けなかった。
家に帰っても、俺の心は全く落ち着かなかった。
「翔太、どうしたの? 顔色が悪いけど」
夕食の時、母さんが心配そうに声をかけてくれた。
「だ、大丈夫。ちょっと疲れただけ」
嘘をつくのは辛かったが、本当のことは言えなかった。
まさし君の薬物使用を告発すれば、こんな脅しから解放されるかもしれない。でも、もし証拠不十分で逮捕されなかったら、今度こそ本当に危険なことになる。
それに、まさし君は家族への危害も示唆していた。
俺一人の問題ならまだしも、美咲や両親まで巻き込むわけにはいかない。
その夜、俺は布団の中で一人悩み続けた。
一万円——どうやって工面すればいいのか。
お年玉の残りを全部足しても、5000円程度しかない。あとの5000円をどうするか。
親の財布から盗むなんて、絶対にできない。
でも、他に方法が思いつかない。
翌日から俺は、食事もろくに喉を通らない状態が続いた。
「翔太、本当に大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
母さんは何度も俺の体調を心配してくれたが、説明することができなかった。
学校でも集中できず、先生に何度も注意された。
友達からも「最近元気ないね」と言われたが、理由を話すことはできなかった。
一週間が過ぎるのがあっという間だった。
約束の日が近づくにつれて、俺の不安は募るばかりだった。
約束の日の前夜、俺は布団の中で考え続けていた。
どうしよう?
本当にどうしようもない。
このままでは、まさし君に何をされるか分からない。家族にも危害が及ぶかもしれない。
そんな時、ふと押入れの奥に隠した「あの機械」のことを思い出した。
洗脳機械——人の心を操る道具。
まさし君を洗脳して、善人になってもらえばいい。
そうすれば、脅しもなくなるし、薬物問題も解決する。まさし君自身のためにもなるかもしれない。
でも、それは人の心を操ることだ。やってはいけないことだ。
親に相談すれば、まさし君の怒りを買って、より危険な状況になるかもしれない。警察に相談しても、薬物使用の証拠がなければ動いてくれないだろう。
そして何より、このままでは毎月一万円を要求され続ける。
小学生の俺には、もう洗脳機械しか選択肢がなかった。
俺は意を決して、押入れから機械を取り出した。
半年ぶりに見る洗脳機械は、相変わらず不気味なオーラを放っていた。でも、今の俺には救世主のように見えた。
使い方は宇宙人に教えてもらっていたので、問題なかった。
洗脳するためには、洗脳対象のDNA情報が必要だ。
翌日、俺は行動を起こした。
貯めていたお年玉の全額——5000円を持って、まさし君の家に向かった。
「お金、持ってきました。でも、5000円しかありません」
まさし君は薬物の影響でぼんやりしていたが、お金を見ると目つきが変わった。
「半分じゃねえか。足りないぞ」
「お願いします。これが全部です。来月からは、もっと頑張って貯めますから」
俺は土下座して頼んだ。
「ちっ、仕方ねえな。今回だけは大目に見てやる。でも来月は絶対一万円だぞ」
まさし君は5000円を受け取った。
その隙に、俺はまさし君の部屋に置いてあった枕から毛髪を何本か拝借した。
まさし君は薬物の影響でぼんやりしていて、俺の行動に気づかなかった。
その夜、俺は洗脳機械を起動した。
説明書を読み返しながら、慎重に操作を進める。
まず、まさし君の髪の毛を中央のくぼみにセットした。
『DNA解析中……解析完了』
『対象:男性、32歳、血液型B型』
次に、新しい記憶——つまり人格のベースとなるストーリーを選択する必要があった。
善人に記憶を書き換えるって、どうすればいいのか。
小学生だった俺が真っ先に思い浮かんだ善人は、両親や妹、いわゆる家族だった。
でも、父親の記憶に書き換えるとしても、本物の父さんがいるのに困る。今を生きている人の記憶では駄目だと思い直し、その考えはすぐに消した。
そして考えついたのが、歴史上の偉人だった。
立派な偉人の人格をインストールすれば、善人になるだろう。
偉人——一口に言ってもたくさんいるが、当時の俺が真っ先に思い浮かんだ候補があった。
それは、ずばり「田中正造」である。
実は、その週の金曜日に学校で歴史発表会が開催される予定だった。俺の担当テーマが田中正造で、図書館で借りた本やインターネットで、すごく詳しく調べていたのだ。
田中正造——明治時代の政治家にして、日本初の公害事件と言われる足尾銅山鉱毒事件で明治天皇に直訴した男。
何度も投獄されながらも、常に民の側に立ち、己の半生をかけて権力と戦ってきた信念の人だった。
調べれば調べるほど、田中正造の人格の素晴らしさに感動していた。
不正は絶対にしない。私腹を肥やすなんてもってのほか。自分の利益よりも、常に弱者のことを考える。
まさに政治家の中の政治家。弱者のために己の命を懸ける、真の正義の人だった。
田中正造の人格なら、まさし君も必ず善人になる!
俺は確信していた。
善い人になれ、善い人になれ!
そう念じながら、俺は洗脳機械にまさし君のDNAをセットし、田中正造の詳細な資料を入力し始めた。
生年月日:1841年12月15日
出身地:下野国安蘇郡小中村
人生哲学:「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」
主な業績:足尾銅山鉱毒事件の告発、明治天皇への直訴
性格:正義感が強く、不正を許さない。民衆の苦しみを我が事として捉える
俺は発表会のために集めた資料を全て入力した。田中正造の思想、行動原理、人生哲学——調べた内容を余すところなく詰め込んだ。
特に重要だと思ったのは、田中正造の「弱者に寄り添う心」だった。
常に虐げられた人々の側に立ち、権力者の横暴と戦い続けた姿勢。自分の利益を顧みず、正義のために身を捧げる精神。
こうした価値観がまさし君にインストールされれば、きっと薬物も辞めて、真っ当な人生を歩んでくれるはずだ。
設定を確認し、効果時間を「永続」に設定した。
最後に実行ボタンを押す。
機械が低い振動音を立てて作動を始めた。
液晶画面には「処理中……」の文字が表示されている。
10分後、「処理完了」の文字が現れた。
まさし君の髪の毛は、くぼみの中で灰のようになっていた。
これで、まさし君は田中正造の人格を持つ人間に変わったはずだ。
俺は機械を再び押入れに隠し、翌日を待った。
結果は——想像以上だった。
まさし君は、完全に別人になった。
翌日から突然、「前世の記憶」が蘇ったと叫び、今までの自堕落な生活を改め始めたのである。
薬物は全て処分し、部屋を綺麗に片付け、夜間学校に通い始めた。
ニートだった暮らしとは真逆だ。
「俺は田中正造だったんだ。足尾銅山の民を救うために戦った田中正造の生まれ変わりなんだ」
まさし君——いや、もはや別人になった彼は、そう言って目を輝かせていた。
その後の変化は目覚ましかった。
大検に合格し、法政大学に入学。在学中に司法書士の資格を取得し、卒業後は政治家の秘書として働き始めた。
この前見かけた時は、ある政治家の選挙演説でお手伝いをしていた。確か、その政治家の秘書になったのだろう。そのうち地盤を引き継いで、政治家として立候補するとも聞いている。
田中さん夫妻はすごく喜んでいる。
「息子が別人のように立派になった」と。
近所の人たちも驚いている。
「まさし君があんなに真面目になるなんて」と。
みんな、奇跡的な更生だと思っている。
しかし、俺は全く笑えていない。
本来まさし君は、政治家になるような人ではない。
小学生を脅し、薬物でラリって、もしかすると煽り運転をするような人生を送っていたかもしれない。
今のまさし君は、まさし君であってまさし君ではない。
俺は洗脳機械でまさし君という個性を殺したのではないか。
確かに、現在のまさし君は立派な人間だ。社会の役に立っている。両親も喜んでいる。
でも、それは本当のまさし君じゃない。
田中正造の記憶と人格を移植された、別の人間だ。
元のまさし君の人格は、完全に消し去られてしまった。これは殺人と同じことなのではないか。
その後、俺は洗脳機械を厳重に封印した。
四重にラップで包み、押入れの最も奥に隠した。二度と使うまいと心に決めた。
しかし皮肉なことに、この経験は俺に一つの教訓を与えてくれた。
どんなに追い詰められても、人の心を操ってはいけない。
たとえ相手が悪人でも、その人の人格を勝手に変える権利は誰にもない。
でも同時に、この機械が最後の切り札として存在することも知ってしまった。
本当に、本当にどうしようもない時に——この機械が俺を救ってくれる可能性があることを。
まさし君の件から七年が経った今、俺は再びその「どうしようもない時」を迎えている。
麗良の慰謝料請求。紫門の永続的な脅迫。
もはや正攻法では解決できない状況に追い込まれている。
あの時と同じように、俺には洗脳機械しか選択肢が残されていなかった。
【洗脳されなかった場合のまさし君の人生】
ニート、薬物依存者としての生活は継続する。
七年前はコカイン、マリファナ、ヘロインをたまに使用して錯乱状態になっている程度だったが、その後薬物依存はさらに深刻化していく。薬物を手に入れるために家族の貯金に手をつけ、窃盗を働き、警察沙汰になること数十回。
最後は薬物でラリった状態で駐車中の車のフロントガラスを金属バットで割っている最中に、通りかかった車に轢かれて死亡する。享年39歳。
両親は息子の死を悲しむと同時に、長年の苦悩から解放される。近所の人々は「やっぱり」という反応を示し、誰も本当の意味で彼の死を悼まない。




