兎人族 パミラ
「ぱ、ぱみ~!!ぱみ~!」
私は魔の森の中を跳んで走っていた。
少し時間は遡る。
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私は兎人族であり、住んでいるメイプル村は魔の森の近くにある兎人族の村である。
兎人族はみんな臆病な性格をしていてまた大変な大食であり、ちょっとだけ?頭が悪い種族である。
兎人族の好物は人参と甘いもの。私達の先祖様は他の種族と積極的に関わろとせず、自分たちの腹を満たせる肥沃な地を探し求めていた。
何代前かのご先祖様は魔の森に居を構え、村を作った。魔の森の土地は人参が沢山できる恵まれた肥沃な地であったためだと思う。
また、魔の森のカエデからは蜜が取れた。その蜜が由縁となって村はメイプル村と呼ばれるようになったと言う。
私達は甘いものが大好きでワッフルにかけて食べたり人参にかけて食べたりしていた。
魔の森のカエデは何種類かあり、ちょうど夏カエデから蜜が取れる時期だったので私は大人の村人数名と魔の森に出掛けていた。
「ぱ、ぱみ!?森の様子がおかしいぱみ!?」
私は魔の森で見たこともない異様な光景を目の当たりにした。面面に広がる魔物の死体。多くが弱いスライムだが、異常な光景であった。スライムを魔物は好んで襲ったり食べたりしない。理由は味がないし魔物にとって害もない魔物であるからだ。つまりOUT OF 眼中である。目の端にもとまらない魔物である。
しかし、魔の森の魔物にとって雑魚と思われていても兎人族や一般の人間族といった脆い種族にはそうではない。魔の森のスライムは手を出さなければ人畜無害であるが、やつらは一匹仲間が殺されると団結して復讐してくる。だからいくら雑魚といっても侮ってはいけないのだ。
「これは、数年前のドラゴンの時と同じ災害かもしれない」
「ぱ、ぱみ!?」
数年前、ドラゴンが魔の森にやってきた。その時に大暴れして多くの魔物の命を奪ったと言われている。その後魔の森に入った村人はどうやら何か他の魔物と戦かっていたようだといった。辺り一面の木は燃やされたり、なぎ倒されたりして壮絶な戦いがあった事を連想したと言う。
「リーダー。か、怪鳥様は何故このような魔物を放置しておられるのでしょうか?」
「う、うむ…」
怪鳥様は魔の森の主と呼ばれる、大昔から住む鳥の魔物である。私達の先祖様から伝わる伝承によると姿形が変わる鳥の魔物と言われている。巣がある場所は昔から変わらないのに、住む鳥の魔物が変わっていたためと思われる。
そんな怪鳥様は魔の森に広大な縄張りを敷いていた。怪鳥様にとってすべての魔物は捕食されるもの__であるが管理もしていた。弱いものがいてこそ、強きものは腹を満たせると理解してるのだろう。とても怪鳥様は賢い。
そのため食料として必用以上に魔物を殺す魔物を良しとせず駆逐されると言われている。ようするに自分の食料に手を出すなと言うことである。
「あるいは、怪鳥様が今のところ魔の森にはおられないか?とかでしょうか?」
「いや、怪鳥様は最近、魔の森の空を飛んでいる姿を見ていない。つまりどこかに飛び立たれたと言う訳じゃあるまい」
「では、この魔物達の死骸は一体なんなんでしょう?」
「う、うむ。」
大人達は、ドラゴンがまたやってきたのではないか?とか、いやドラゴンは退治されて他の魔物がやってきたのだろう、いやこれは魔病なのではないだろうかとか憶測を立てている。
「り、リーダー。と、とりあえず村に帰って村長に伝えるべきでしょうね。」
「う、うむ。何やら不穏で異常な事態が起きてる事は確かだからな、パミラ!蜜を持って帰るぞ!」
「ぱ、ぱみ!」
兎人族の大人達と私はびくびくと耳を震わせながら村へ帰る用意を始めた。私な耳をピタッと頬までくっつけている。
「蜜は、絶対に持って帰らないといかん。なにかおかしな魔物がいるかもしれないが、俺達兎人族は速さには自信があるからな。魔物には絶対追い付かれんだろう」
臆病な兎人族が魔物が跋扈する魔の森の夏カエデから蜜を取れる理由は自らの足に絶対的自信があったからである。まず魔の森の魔物はスライム系が多くやつらは総じて足が遅い。危険な大型の魔物は耳が良い兎人族は音で察知出来る。ようするに出くわさないようにすればいい。
「ぱ、ぱみ、ぱみ、ぱみ~」
私達は崖道を渡っていた。ここは大型の魔物が通れない小細い道であるため村から魔の森への行き来に使われる安全なルートである。
「な、なんだ⁉みんな音を出すな!」
先頭のいたリーダーが口を塞ぐようにジェスチャーした。
皆も口を閉じる。彼は身を伏せて斜面下の森の樹々を覗きこむ。
「見たこともない、ま、魔物がいる!」
「ぱ、ぱみ!?」
彼に続き私達が見た魔物は………
骨、だった。
全身の骨、骸骨が動きながら喋っている。ふ、ファイアはやめて下され~とか言ってるのが聞こえてくる。
「あ、あれは魔物なのでしょうか?」
「う、うむ。あれは魔物と言うか…恐らく未練があってリッチや骸骨騎士と言ったところかもしれん。」
「ぱ、ぱみ!?」
「しかし、そんな魔物は聞いた事もありませんよ!?」
「人が死んでから魔物…のようになったりすると言うのも俺も昔話で聞いた事があるだけだ。言葉は人語を喋っている。または怨霊の類いかもしれん」
骸骨が火にくるまれ、回りのスライムも一緒に燃えた。仲間が殺され他のスライムが骨に群がりまた骸骨から火が放たれ…を繰り返している。骨はあっひゃあああですぞー!とか奇声を上げている。
「と、とりあえず逃げて報告しましょう!」
「う、うむ!パミラ、蜜を渡せ、俺が持つからお前は走って村長に伝えに行ってくれ______っぱみらっ!!」
不運にも崖が脆かったようだ。
身を乗り出していた私は崖が転がり落ちた。
コロコロポテッと私は、行ってはいけない方向へと落ちた。イテテとそこには骸骨の足があり、うわあっ!?と見上げると
「ヴあ"あ"あ"あ"あ"あ"あああ"DEATHぞお」
骸骨の魔物は鼻水?を垂らし首を90℃に傾げDEATHぞおおお!とか奇声を上げた。
「ぱ、ぱみいいいいいいいいい!!?」
DEATHは死の呪文と村長から聞いた事があった私は目の前に現れた骸骨の顔といきなりの死の宣告に森の中へ走り出した!
「ば、化け物ぱみいいいいいいいいい!!」
「く、くえ?」
「ぴ、ぴえ?」
突如現れた何かに二匹の怪鳥は顔を見合せた。




