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三匹の雛

「くえっ!」


俺は再びこの世界に生を受けた。

俺は胎児の時から意識が僅かながらにあった。

母体から魔力をほんの少しずつ頂いて、復活に必要な力を蓄えていた。しかし。


「く、くえ?」


俺が転成したのは鳥のような魔物だったらしい。

いや、俺は一度死んだ。それも魔力の一欠片になって。だから復活出来るかは分からなかった。俺の意識を持つ欠片が永遠に地の中、川の中にあった可能性もある以上、贅沢は言えないのかもしれんな。


「くえぇ…」


はあぁ、と溜め息をする。この体はまだ雛である。魔王としての最強の体と比べると…くそ。仕方ないのではあるがあまりにも弱い姿だ。今は被捕食者側の立場である。とりあえず俺はこの体で強くなる必要がある。


「くええ!」


神め!よくも!と叫び、辺りを見回す。そもそもここはどこだ?


一望千里のどこまでも広がる樹木の景色に俺はどうやら周りより高い木の上にいるらしい事が分かった。俺が生前過ごした魔王の地と比べ天地雲泥である。色鮮やかな草花が調和した生前見たこともない山紫水明の多くの自然物に思わず息を飲んだ。景色に感動した俺は羽で合掌した。そんな気分にさせられたのは、側にある黒く巨大な物体が俺の哀感に満ちたからである。



「くえ?」




あぁ母体になったマイマザーの巣か。俺の横でお亡くなりになっている。合掌。羽だけど。

どうやら木や草で作った巣のようだ。そして、どうやら森の中。そうこう見渡していると腹が減った。魔力をつけるためにも魔物を捕食すべきだろう。


しかし食糧はどうしたものか。


今、森の中へ食糧を探しにさ迷えばスライムにさえ捕食されるだろう。


ふと思った。巣の中になにかないだろうか?


「くえっ!くえっ!」


木くずや草を羽でどけていく。


「く…くえ!!?」


こ…これは!!?

卵が8個ほどあった。マイマザーは俺だけでなく兄弟を生んでいたらしい。巣の中には食べ物は見あたらない。となると。


「くっくっくえ」


くっくっくと俺は卵を見る。こいつらは俺の栄養の糧としよう。俺はマイマザーの魔力を取り込む事で成長を早めた。ゆえにこいつら多分生卵のはず。

ふと、これって共食いだろうかと考えたが俺は鳥だが心は違う。だからそんな忌避感持っちゃいない。うん!オーケーだ。多分。


「くーえっ!」


せーのっと羽を広げて卵を持ち上げる。じゃあいただきますね!と叩きつけようとした瞬間


ピシ…ピシ…


「く…くえ!?」


ば、ばかな?コイツまさか生まれるのか?俺は思わず手を放した。その瞬間


「きゅあ!」  


金色の羽の雛が飛び出てきた。なんだこいつは?俺は黒色の雛だがこいつは目にもまぶしい金色である。魔力が俺とは違うものを持っているな。


ピシ…ピシ…


「ぴ…ぴえっ!」


今度は茶色い雛が生まれた。金色とは違う魔力を感じるな。



しばらく見ていたが、どうやら他の卵はこいつらと違って生まれてこないようだ。ひょっとしたら、俺がマイマザーから吸いとっていた魔力がこいつらにもいっていたのかもしれない。にしても兄弟で俺と違う魔力を持っているのは何故だ?魔力を感じとり、他はまだ孵化しない事を確認する。


ならば、と卵を割る。パリん。中身はやはり生卵であった。


「くえくえくえ」


俺は生卵をくちばしでつついて食べた。

他の2匹は


「きゅあ!きゅあ!」


「ぴ…ぴえっ!?」


と同じく食べる者、食べない者に別れた。性格的違いなのだろうか。金色のほうが野性的で茶色は震えて見ている。ウマイのにな。


卵を食べると経験値が多少入ってきた。ふむ。

一応魔物の雛とは言え魔力を持っているからな。


「ぴ…ぴええ…」


茶色は一向に卵を食べようとしないが、まぁ俺もいきなり兄弟食べ出したら引くわ。でも弱肉強食って奴だ。魔物は魔物の魔力を取り込む事で強くなる。弱いままでは死ぬから強くなるため捕食する。魔物の本能では金色は正しい。茶色は変わっているな。次の卵へと手を…いや羽を伸ばしたが金色が食べ尽くしてしまっていた。


「きゅあ!」


金色はまだまだ食べたりないようだ。


辺りをきゅあ?きゅあ?と見渡しても卵はない。

お前と俺で全部食べたからな。


しばらくきゅあ?きゅあ?と言っていると思ったら


「きゅあ!」


とよだれを足らして俺を怪しげな目付きで見ている。



あ、これって俺食べ物扱いされてます?

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