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夢現
ある朝、いやそれが夜か朝かは定かではないが、
彼は夢を見た。
彼は真っ白な空間に立っていた。周りには誰の姿も見当たらず、何もない場所に向かって歩き続けた。
不思議と不安や焦りはなかったが、なぜか壇上で初めてのスピーチをする時のような喉の渇きを覚えていた。
いくらかの時間の後、突然、何もなかった場所が病室のような場所に変化した。そこにはベッドに横たわった女と、その側で泣き続ける男と、周りに立ち尽くした数人の姿があった。
女はか弱い声で、泣いている男に何かを言った。男も女に何かを言った。その内容は、彼には聞き取る事ができなかった。
しばらくして、彼は脳に響くような声を聞き取った。
「何で、死ななければならない。私には、君さえ、いれば…君が、いない世界に、何の、意味が…!」
泣き声で途切れ途切れな声が、しかしなぜか力強く、彼の脳に流れ込んだ。
彼はこの声にも、この光景にも覚えがあった。そしてこの夢自体、彼は何度も見た事があった。しかし目覚める時には、夢の内容の大体を忘れているだろうという予感もあった。こうして彼の意識は、夢の内容など関係なく、毎朝覚醒に向かっていくのだった。




