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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第伍章 寸善尺魔 ~蔓延る悪しき思い~
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第陸話 【2】

 その後おじいちゃんの家で、皆と一緒にご飯を食べ終えると、たまにはスキンシップをということで、皆で檜風呂の大浴場に入る事になりました。

 100人は入れそうなくらいの広さだよ。おじいちゃんったら、いつの間に地下にこんな物を作ったんでしょう。


 それから、お母さんからは離れてますよ。何だかベタベタと触ってくるんですよね……。


 だけど、もう1人ベタベタしてくる人がいました。


「椿、たまには2人の愛を……」


 雪ちゃんです。最近構ってあげられていないからか、さっきから僕にずっと引っ付いているんです。


「雪ちゃん。とりあえず今はそれよりも、香奈恵ちゃんの方を……」


「香奈恵ばかりで妬くよ?」


「う~ん、でもさ……あれを見るとね」


 雪ちゃんの事はいつものことだから、そのまま体を洗おうとシャワーの方に行こうとしたけれど、入り口から香奈恵ちゃんと飛君が揉めてる声が聞こえるよ。


 ここは女湯だけど、飛君はまだ小学生低学年くらいに見えるから、別に一緒に入っても良いと思うんだよね。

 その位の歳の男の子って、銭湯でも母親に連れられて、女湯に入ったりすることがあるよね? 父親が随伴していなかったら……だろうけどね。


 飛君は父親が天狐様みたいだし、ここには居ないからね。それに、白狐さん黒狐さんに任せるのも不安なんだよね。


「ぼ、僕! 男湯で良いから!」


「何言ってるの? 自分で体洗えるの? 良いから来なさい」


 浴室の扉に引っ付いている飛君の肩を掴み、思い切り引っ張りながら、香奈恵ちゃんがそう言っています。飛君顔真っ赤だよ。

 裸の女性ばかりで恥ずかしいのかな? おませさんだね。もしかして僕達が思っているよりも、もうちょっと歳がいってるのかな……。


「もう……観念しなさい!」


「わぁぁあ!!」


 あ~あ……香奈恵ちゃんってば、割と飛君の事気に入っているというか、おもちゃみたいにしているね。

 僕と絡む暇がないみたいだから、こっちは助かっているけれど、僕もたまには香奈恵ちゃんとスキンシップしたい気分にはなるんだよね。


 とにかく、まだズボンを着ていた飛君に飛びかかり、香奈恵ちゃんが飛君のズボンとパンツを剥がしにかかります。


「香奈恵ちゃん、程々にしてあげてね。そんなに嫌がるなら、白狐さん黒狐さんに頼んでも――」


「大丈夫よお母さん! どうせ小さいのを気にしているんでしょ? この位の歳の子なら別に……へっ? きゃぁあああ!!」


「どうしたの?! 香奈恵ちゃん!!」


 何故か悲鳴を上げてるよ。もしかして飛君の体に、何かとんでもない術式とか妖術がかかっていたんじゃ……!

 とにかく、僕は慌てて浴室の入り口に行き、香奈恵ちゃんの様子を見ると、飛君の股間に指を指しながら震えていました。


「香奈恵ちゃん、いったい何……わぁぁぁあ!!」


 そしてそれを見て、僕もつい叫んでしまいました。


 いや、ビックリするというか何というか……あり得ないモノがついていたんだってば! 小学生ではあり得ない、中学生……ううん、高校生レベルのモノが付いていたよ! 今でこれって事は、将来は……。


 当然、僕達の悲鳴を聞いて他の妖怪さん達がやって来るけれど、僕達と同じように悲鳴を上げたのは里子ちゃんとか、そういうのにあんまり免疫がない人達です。


 いや、そりゃ……僕は経験ある……けど、その、白狐さん黒狐さん以外のは見たことがないからね、だからビックリしちゃった。昔、僕が男の子だった時のとは比べ物にならなかったしね。


 ただ、問題なのが……。


「あら、立派ね」


「へぇ、食べちゃいたい」


「ふふ~ん、天狐候補でしょ? それにコレ? 唾付けとこう」


 流石妖怪さん達ですね。容赦なく飛君に向かって、獣のようなギラついた目を向けてますよ。


「うぅぅぅ……僕、男湯にする!」


 そんな僕達の様子を見て、飛君が真っ青になりながらその場を去ろうとします。


 でもその時、僕の耳に男湯の方の声が聞こえてきました。


『ふっ、どうだ! 俺の方がデカいだろう!』


『甘いな、2ミリ勝ってる』


『ミリ単位で調べるな!』


 アソコの大きさを測り合って競い合っていましたよ。たまにどこに付いているのか分からない妖怪さんもいるんだけどね……。


『全く、そんなものを比べ合うとは情けない』


『待て白狐、お前小さくなってないか?』


『なに?』


『毎日使いまくって、すり減ってるんじゃないか?』


『それを言うなら貴様もだろう! むしろ減ったとしても、それは椿への愛の深さ故だ!』


 影の妖術で口封じしときたいけれど、今はそれよりも飛君です。男湯に全力疾走しそうな勢いです。


「やっぱり君はこっち」


「ぎゃん! な、なんで!」


 あっ、しまった、足を掴んじゃいました。飛君が前のめりになって倒れ、地面に顔をぶつけちゃいました。


「ごめんごめん……まぁ、今男湯に入っていったら、他の男妖怪さん達のプライドがズタズタになりそうな感じがするし、飛君を見る目が変わっちゃいそうだからね」


 向こうの言い合いを止めたいところだけれど、そろそろ体を洗って湯船に浸かりたいよ。夏前とは言え、ずっと裸でいたら風邪ひきます。


 ―― ―― ――


 その後体を洗い、飛君の体も洗って上げて、僕達は湯船に浸かります。飛君は終始恥ずかしがってましたよ。

 因みに香奈恵ちゃんはというと、直ぐに湯船に飛んで行き、ずっと顔の上部だけを出してブクブクしていました。意外とウブだったんだね、カナちゃん。


「うぅ……僕男の子なのに」


「分かってるよ。だけど、男湯の方はある意味戦争が始まってるから……今は危ないよ」


 壁を隔てた男湯の方からは、相変わらず言い合いをしている声が聞こえてきます。

 他の皆にも聞こえていると思うけれど、皆聞いていないふりをしています。


 そして、僕は自分の前に飛君を座らせて、その後ろからハグするような形になって、飛君の頭を撫でてあげます。


「大丈夫、飛君は男らしいよ。あの時、香奈恵ちゃんを妖魔から守ってくれたんでしょ? その歳でそんな行動が出来るなんて、凄いよ」


「……ん、でも……」


「そんな事ないよ、香奈恵ちゃんを守ってくれてありがとう」


「…………うっ、うぅぅ」


 あらら、僕が後ろから飛君にお礼を言ったら、急に泣き出しちゃいました。あの時の恐怖が蘇っちゃったのかな?


「よしよし、君はまだ幼いし、いくらでも泣いたら良いよ」


「うぐっ……ひっく。でも……それで抱きつかれたら……」


 そう言えば顔を赤くしているし、何だか縮こまっている気がするね。あぁ、飛君の背中に僕の胸が当たっていました。

 だけど、僕のはそんなに大きくないし、せいぜいちょっとフニュってするくらいだよ。でもこの位の歳の子は、これでも刺激が強すぎるのかな。


「お母さん……飛君をたぶらかさないでね」


 そして、香奈恵ちゃんが湯船から顔を出した状態のままで、目を細めて僕を見てきます。


「ん~? 飛君に嫉妬してるの?」


「違うよ。私はずっとお母さんが……椿ちゃんが好きなんだから」


 そう言いながら、香奈恵ちゃんは残った顔半分までもお湯につけちゃいました。息ができないだろうから、程々で上がってね。

 それにしても、香奈恵ちゃんはやっぱり僕一筋なんですね。嬉しいけれど、それで良いのかなって思っちゃいます。


 そして、この会話を聞いて飛君は首を傾げています。

 僕と香奈恵ちゃんの関係はややこしいからね。説明していなかったら、今の台詞は首を傾げるよね。


「……お母さん、そろそろ離れて……」


「まぁまぁ、もう少しこうして上げるよ」


「で、でも!」


「僕も男の子だった時があるからね。今もほんのちょっとだけ、男の子の心は残っているよ。だから大丈夫……じゃないかな、香奈恵ちゃんが睨んでる」


 流石にこれ以上飛君をからかうのは止めましょう。真剣に香奈恵ちゃんが怒ってきそうです。


「男の子……だったの?」


「うん、強力な妖術で人間の男の子にされてたの。身も心もね」


 そして何故か、飛君がその事について興味を引かれています。目が結構真剣だよ。


「……僕、お母さんとお姉ちゃんの事、良く知らない。だから知りたい……教えて」


「ん……そうだね。お風呂上がったらちょっと話そうか」


「長くなるよぉ~」


「香奈恵ちゃんは僕への愛を延々と話しそうだから、僕が話すよ」


「酷い! あっ……」


 僕がそう言うと、香奈恵ちゃんはやっと湯船から立ち上がって叫んだけれど、そのまま倒れちゃいそうになりました。

 やっぱり逆上せてるじゃないですか。いつまでも湯船に潜ってるからだよ……。


 ギリギリで僕の尻尾で香奈恵ちゃんをキャッチ出来たけれど、危なかったですよ。あとで注意しておかないとね。

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