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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第伍章 寸善尺魔 ~蔓延る悪しき思い~
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第肆話 【2】

 やられっぱなしの僕だったけれど、酒呑童子さんを吹き飛ばして、何とか流れを変えます。


 だけど……。


「……ふっ!! なるほど、その妖術使わねぇから忘れていたぜ」


 酒呑童子さんは、跳ね返された自分のお酒を気合いで上空に弾き、ある程度の所で立ち止まりました。そうなるよね……。

 しかもついでに、上空から落ちてきたそのお酒を、一口で飲み干しちゃいました。


「さ~て、と! まだまだ行くぜ!」


「させませんってば! てぃ!」


 ただ、流石の僕も馬鹿じゃないので、右手を前に突き出して、その神通力で酒呑童子さんを更に吹き飛ばそうと、追い打ちをかけます。


「うおっと!! あ~その右手だけがヤバかったな。もう一度吹き飛ばすか」


「そう何回もポンポンと切られるのは嫌ですよ。全力で抵抗します」


「やってみろや!!」


 そう叫ぶと、酒呑童子さんは左右に跳びながら僕に近付いてきます。反復横跳びをしながらなんて、器用な事をしますね。


「ん~妖術と神通力の合わせ技はまだ不安定だし、別々で使わないとね。白金の焔尾槍(えんびそう)!」


 そして僕は、自分の毛色と髪色を白金色に変え、尾を九本に増やしてから、尻尾を槍のように硬くして白金色の炎を纏わせます。そのままそれで酒呑童子さんを突きます。


「ぬっ……!! おっと……! ここまで力が復活したか……だがな、お前はここが限度だろう! 残念だが――」


「うん、誰が限度だって言いましたか?」


 どうせ僕のこの攻撃は、そうやって掴まれると思いましたよ。だから、尻尾の槍で攻撃すると同時に走り出して、酒呑童子さんとの距離を一気に詰めていました。


「白金の焔舞脚(えんぶきゃく)!!」


「ぬぐっ!!」


 そして、白金色の炎を自分の脚にも纏うと、それで酒呑童子さんの顎を蹴り上げます。ついでに、そのままの勢いでかかと落としをして、酒呑童子さんの頭も蹴りつけておきます。


「ぐぅ!!」


 流石にこの流れは意外だったのか、酒呑童子さんはそのまま膝を突きます。

 何回も言うけど、僕だって怠けていたいたわけじゃないからね。ちゃんと戦い方の訓練くらいしています。


 よし、このまま押しまくるよ。


「調子に乗るな!」


「うひゃっ!!」


 だけど今度は、酒呑童子さんが僕の尻尾を掴んだまま、僕を振り回して来ました。

 しまった。酒呑童子さんの方が背が高いから、若干飛び上がっていたんだよ。踏ん張れなくて思い切り振り回せれちゃってます!


 因みにいつもの巫女服だから、スカートが……!! そろそろ何か戦闘用の服を用意した方が良いかな?


「てめぇ、なに腕組んでんだよ……!」


 すると、僕をグルグルと回している酒呑童子さんが、服の事で考えている僕の様子を見てそう言ってきます。


「いや……やっぱり、下着が見えないように気にしながら戦うのって大変だから、ズボンタイプにしようかな~って……」


「戦闘中だぞ!! こら!」


 ちょっと頭に血が上りそうになってたし、一旦冷静になっているんですよ。そうなると、やっぱりスカートで戦うのは恥ずかしいよね。


「う~ん、やっぱり下着を見せて戦うのは、はしたないよね。ちょっと戦闘用の服でも……」


「それは俺に勝ってからにしろや!!」


 そして、完全に冷静になっている僕にイラついたのか、酒呑童子さんがそう怒鳴りつけ、更に回転の勢いを上げていきます。

 こんなの、あの頃の酒呑童子さんじゃない……この状況で、完全に1つ見落としてるもん。


 もしかして……。


「酒呑童子さん……かなり酔ってます?」


「そんなに酔ってねぇよ、ボケが!! いつも通りだわ! 誰が酔ってるって? 酔ってるのはてめぇじゃねぇか?! これだけぶん回されたらなぁ……!」


「ん~それは、まぁ……フィギュアスケートの選手と同じ事をしているから、酔ってはいないよ」


 回転していても常に一点を見続けるってやつです。首をあまり回さずにやるんだけど、酒呑童子さんが凄い勢いで僕をグルグルと回しているから、それもそろそろ疲れてきました。あと、尻尾の付け根も痛くなってきたよ。

 酒呑童子さんだって、両脚を軸にしてグルグル回ってるんだし、そろそろ疲れてきそうなものだけどね。


「チッ……その減らず口、今すぐたたけなくしてやる! おらぁ!! って、なに?!」


「あ~あ~もう、酒呑童子さんらしくないですよ。今僕の尻尾は何本あるんですか? よっ……と!」


 ようやく酒呑童子さんが、僕を投げ飛ばそうと腕に力を入れて振りかぶったので、その隙に僕は、残りの尻尾を酒呑童子さんの首と腕に巻き付け、全体重を投げ飛ばされそうになっている方に乗せます。


「それ!!」


「ぬぉぉっ!!!!」


 酒呑童子さんは僕を投げ飛ばそうにも、腕に尻尾が絡んでるから上手く投げ飛ばせず、逆に僕が体勢を変えて真っ直ぐになって、全ての尻尾を使い酒呑童子さんを投げ飛ばします。


 酒呑童子さんにグルグルと回されていたから、遠心力が凄いかかっていて、酒呑童子さんはあっという間に遥か彼方に吹っ飛んじゃいました。


「さてと、これくらいじゃあやられないから……っと!」


 そのあと僕は、吹き飛ばした酒呑童子さんを追いかけるために、勢いよく地面を蹴って、酒呑童子さんが吹き飛んだ方に飛んでいきます。


「なっ!!」


「やっほ~酒呑童子さ~ん」


 神通力も使っているから、あっという間に吹き飛んでる最中の酒呑童子さんに追い着きました。


「この……!!」


「ほいっ!」


「ぐほっ!!」


 慌てた酒呑童子さんは僕を殴り付けてくるけれど、僕は尻尾を硬質化させて、それで地面に叩きつけます。

 そのあと尻尾の毛質を元に戻すと、別の尻尾で酒呑童子さんを掴み、吹き飛んでいた方に再度投げつけます。


「ぬぉぉぉおおお!!」


 そして、僕はまたそれを追いかけて……。


「よいしょ……っとぉ!」


「ぐはっ!!」


 また硬質化した尻尾で叩きつけます。


「どう? 酔いは覚めましたか? 酒呑童子さん」


 そして、ヒビの入った地面に大の字で寝る酒呑童子さんに向かって、僕はそう言います。

 本当に、こんなの酒呑童子さんらしくない。僕の攻撃をこんなに次々と受けるなんて……。


「……椿ぃ。酔っていても俺様は酒呑童子だ。冷静さはある……てめぇが強くなってんだよ、くそったれが」


「そうですか?」


「てめぇ、俺様がチート級の無敵野郎だと思ってんのか?」


「そりゃあ……」


 今までの酒呑童子さんを見てきたら、誰だってそう思うよ。


「あのなぁ……俺様だって、この身1つに命1つよ。感情もあるし、いつでも心身共に万全ってわけじゃねぇんだよ」


「言い訳?」


 本当に酒呑童子さんらしくない。いったいなんでこんなにも、理知的になってるんでしょう?


 だけど、ちょっと待って……酒呑童子さんが空を見ているけれど、チラチラと視線が移ってる。僕を見ていない。いったい、どこを見ているの?


「酒呑童子さん、何を見て……へっ?!」


 気になった僕が上を見上げると、そこにはあり得ない光景が広がっていました。


 空を覆い尽くすほどの、大量の化け物達……いや、アレは……あの妖気は……。


「妖魔?!?!」


「あぁ、そうだ……奴はまだ復活はしてねぇだろうが、封印の1つが解けたんだ」


「なんで……なんで妖魔がこんなに?! 封印の1つってまさか……」


 空を行く大量の妖魔達を見ながら、僕は酒呑童子さんにそう聞きます。


「そりゃぁ、空亡に決まってんだろう。妖魔は奴の子供みたいなもんだよ。昔から、封印されていてもその力は漏れていて、あんな風に子供を送りつけ、自らの復活の為に動かしていたんだ……」


「そんな……それじゃあ、龍花(るか)さん達の話は本当に……」


 そう言いながら、酒呑童子さんはゆっくりと上体を起こして立ち上がります。

 やっぱり、全くダメージを受けていない。いや、それよりもこの状況……マズいです!


「香奈恵ちゃん、飛君!」


 今隠れている香奈恵ちゃんと飛君だよ。あの2人に妖魔の相手はまだ早いよ。


「きゃぁああ!!」


 するとその時、ここから離れた場所にいる香奈恵ちゃん達のいる方向から、香奈恵ちゃんの悲鳴が聞こえてきました。


 急がないと……!

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