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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第伍章 寸善尺魔 ~蔓延る悪しき思い~
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第参話

 前方を沢山の人達に囲まれている僕は、後ろの駅を守るようにしながら、向かってくる人達を迎撃します。

 背中に羽や翼が生えている人もいるけれど、飛べないみたいだし、前から来る人達を気絶させていけば、何とか出現している所まで行けるはず。


「黒焔狐火!」


『うわぁぁ!!』


「くそ! 俺の火炎油が燃やされた?!」


 黒狐さん白狐さんの力も、普段通り使えるようになってきたし、いつも通りに戦いましょう。加減には気を付けないとだけどね。


「僕のこの黒い狐火は炎も燃やすんだよ。僕に火は効かないし、妖術とかの術も効かないよ!」


「んなわけねぇだろう! 土龍邪(どりゅうじゃ)!」


 すると、額に紋様の入った目の前の男性が、その手のひらから大量の土石流を出現させて、僕を飲み込もうとしてきます。


「も~だから効かないって。術式吸収!」


 そう、僕には黒狐さんの恩恵みたいな特殊能力があって、相手の術なんかを吸収して、威力を上げて返す事が出来るんです。


「はい、返すよ。強化解放! って、あっ……」


『うわぁぁぁああああ!!!!』


 神通力は混ぜない方が良かったですね。


 吸収して返した相手の土石流が、本当の和龍みたいな形になって、目の前の人達に襲いかかってしまいました。


 いけないいけない、全員飲み込まれちゃったよ。


「う~ん、やっぱり妖術と神通力は組み合わせちゃ駄目だね。よっ……と」


 その後に、僕は急いで神通力を使って、大量の土砂を空中に持ち上げると、埋まった人達を助け出します。


 その時……。


「お母さん!! やっぱり私達も戦う……よ」


「あ、あれ……香奈恵お姉ちゃん。これ、もう終わって……」


「なんだなんだ、俺のヒレパンチ食らわせようと思ったのに! 全員伸びてるじゃないか!」


 後ろの駅から、香奈恵ちゃんと飛君とペンちゃんが飛び出して来ました。出ないでって言ったのに、もう……。


「ちょっと、まだ終わって……」


「うん……そうなんだけどね、こっちも終わってなかったんだよ、お母さん」


『発車しま~す!!!!!』


 駅からデッカい電車が飛び出してきた!! しかも、今度は前の部分が鬼みたいな顔になってるよ! 何これ!!


「ちょっとちょっと!! 嘘でしょう!」


「お母さん、これもう一緒に戦うしかないよ!」


 それよりも逃げた方が良さそうだよ。凄い勢いで突撃してきてるもん。


「戦うよりも逃げるよ!」


 そして僕は、神通力を使って香奈恵ちゃんと飛君とペンちゃんを空中に浮かせると、そのままその鬼の電車から逃げ出します。


「えっ! ちょっと、お母さんならこれくらい……」


「飛び出してきた電車の後ろも見てくれるかな?!」


「香奈恵お姉ちゃん……後ろにも同じような電車がいっぱいだよ!」


「えっ? きゃぁああ!!」


 全くもう……気付かなかったのかな? 大量にきさらぎ駅から飛び出して来てるんだよ。

 一旦逃げて、もっと広い場所に行かないと、この数を撃退するのは難しいってば。


『お待たせいたしました~次は~地獄です~!』


『次は地獄です~!』


『地獄逝き、発車しま~す!』


「どれも乗りたくない!!」


 向かってくる全部の電車が地獄行きじゃないですか! 逃げないと、捕まったらマズいです。


 だから僕は、とにかくその駅から離れるようにして全速力で駆け出します。


「おらぁ! あいつらを仕留めろ~!」


 だけどそんな時に限って、僕達の真正面から沢山の人達が現れて、また襲いかかって来ました。

 黒い妖気を手にして妖怪の力を手に入れたからって、僕に勝てると思わないでよね。


 それと、このまま僕達の直線上にいたら危ないってば。


「ちょっと退いて!! てぃ!!」


『うわぁぁぁああ!!』


 だから僕は、目の前の人達も神通力で浮かして、僕達の直線上から退かします。


「お母さん?! 地味に神通力を扱いこなしてない?!」


「それは今はどうでも良いです!」


 人間咄嗟になったら何でも出来るんですよ。僕は妖狐だけどね。


 だけど、そうやって走っていると、目の前に黒い塊みたいなモヤが見えてきました。しかも、そこから何人かずつで人々が出て来ていますよ。


 そうか、あそこから送り込まれていたんですね。それなら……。


「ちょっとそこ開けて!!」


「なに? うぉっ!!」


「こ、こいつらは!! って、うわっ!!」


 そう叫びながら、僕は神通力を使います。そして、目の前の人達を横にはね除けて、僕達がそのモヤに飛び込めるようにしたけれど、また次々と出て来ます。轢かれないようにしているのに、もう……。


「仕方ない……香奈恵ちゃん、飛君! このまま飛び込むよ! ペンちゃんしっかり持って走って!」


『うん!!』


 そして、僕は2人にそう言ってから、目の前の黒いモヤに飛び込みます。

 神通力を使いすぎたから、香奈恵ちゃん達を浮かすのがキツくなってきました。ここからは走って貰わないといけないよ。ちゃんと守らないとね。


「危ねぇ!」


「逃げろ、お前等! 暴走電車が突っ込むぞ!」


 周りにいる沢山の人達の悲鳴と叫び声が飛び交う中、その黒い

モヤに突っ込みます。すると、目の前が突然真っ暗になりました。

 でも、止まったら駄目だ。走らないと……後ろから来る電車に轢かれる!


「香奈恵ちゃん、飛君、足止めないで!」


「分かってるよ! お母さんの綺麗な尻尾を追いかけてるから!」


 どこを見ているのかな?! でも、それが見えているなら大丈夫ですね。それで着いて来られるね。


 そしてしばらく走っていると、目の前に明かりが見えてきました。多分、そこから外に出られるんじゃないかな? 突っ込んでみるしかないですね。


「香奈恵ちゃん、飛君! 目の前の明かり見えるよね?! 突っ込むよ!」


 そう言うと、僕はそのままその明かりに突撃します。もちろん、後ろからは2人が着いて来ていて、香奈恵ちゃんはペンちゃんをしっかりと抱き締めています。


「まぁ、どこまで持つかは分からないが、あいつのことだ、その内ここに……うぎゃぁぁあっ!!!!」


 あっ、黒いモヤから出た瞬間誰か轢かれた。


 すれ違い様に顔が見えたけれど、酒呑童子さんでした。それなら大丈夫でしょう。

 他にも数名いるけれど、酒呑童子さんが吹き飛ばされた瞬間、慌てて僕達から離れています。


 ということは、ここは酒呑童子さんの、亰骸の拠点?!

 何処かの寺院の中みたいな場所だけれど、きさらぎ駅の周りよりも狭いや。駄目です、ここから出ないと……って、ここが人間界なら外に出したらマズいです。


 しまった……繋がっている所が酒呑童子さんの拠点だって可能性を、何で頭から切り離してしまったのかな。


 そして僕達の後に続いて、黒いモヤから出た鬼の顔をした電車がこっちに向かってくる……けれど。


『え~電車すれ違いの為、停車……ぐぁ!』


『衝突の可能性があるので~一時停止を……ぎゃあ!!』


『こっちに来るな~!! ぐぇっ!』


 室内だから真っ直ぐ走れずに、グネグネと走ろうとしたところで、他の電車と衝突したり、回避したところで車体がぶつかり、そのまま絡まったりと、何だかめちゃくちゃな事になっていっています。


「あららら……」


「凄い、香奈恵ちゃんお姉ちゃんのお母さんはこれを狙って……」


 そして、遂に全ての電車が絡まり、1つの団子状態になってしまいました。それでも脱しようと藻掻いて、辺りに凄い音を鳴り響かせています。


「ふふ、作戦成功です」


「……お母さん」


「はい、ごめんなさい。偶々です、偶然です」


 やっぱり香奈恵ちゃんにはバレちゃいますか。胸を張って言ってみたけれど、目を細めて訴えられました。


 とりあえずこの電車達はもう動けないから、このまま……と思ったけれど、何だか木がメキメキいってるような音も聞こえてくるよ。


「お、お母さん……これまだ逃げた方が……」


「そ、そうみたいですね。2人とも、全力でここから出るよ!!」


 あまりに大量の電車達が絡まり、そして脱しようと暴れるもんだから、この建物自体が崩れそうになっていますよ!

 木で出来た寺院みたいだし、古そうだったし、そりゃ鉄の塊に暴れられたらひとたまりもないよね。


 だから僕達は慌てて走り出し、その場から逃げようとしたけれど、もう遅かったです。

 木が軋む音が更に大きくなってきて、何かが崩れ落ちて折れる音が沢山聞こえてきた瞬間、僕達のいる部屋の天井が、一気に崩れて来ました。


『きゃぁぁああああ!!!!』


『うわぁぁあああ!!』

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