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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第肆章 合縁奇縁 ~頑張れ香奈恵ちゃん~
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第拾壱話 【2】

 とりあえず僕達は、いったんおじいちゃんの家に入り、疲れている人は休んで貰いました。


 香奈恵ちゃんと王様ペンギンはいるし、龍花さん達も疲れはないと言っていたけれど、おじいちゃんの命令で、治療と休養を優先させられていました。


 白狐さん黒狐さん妲己さんはいるし、葛の葉さんから、何故かトヨちゃんも連れて来いと言われたので、トヨちゃんも一緒になって、広間で彼女を前にして座っています。


 もちろん机を挟んでいて、その上には高級な和菓子とお茶が置いてあります。


「今更こんな待遇しなくても良いのに……」


 それにしても、葛の葉と言ったら超有名な白狐で、奥ゆかしいイメージがあったのだけど……。


「あの、葛の葉さんって結構アグレッシブなんですね」


「つ、椿ちゃん。葛の葉さんにそんな言葉遣いは……」


 あっ、トヨちゃんがビクビクしてる。トヨちゃんよりも上な存在なの? そうだとしたら、僕の方が失礼な事をしちゃってます。友達なんか言っちゃって、ここまで無理やり連れて来てしまったからね。


「そうだね。罰せられるなら先ず僕からだと思うよ」


「ふふ、友達って言って、私から無理やり話を聞こうとしたもんね」


「はぅ……」


 怒ってる? ねぇ、怒ってます?

 お茶を飲みながら言ってるけれど、目が据わっているよ。ちょっとだけ恐いよ。


「椿ちゃんは可愛いから許すけど……豊川~あなたは逃げたよね? 私から」


「うっ……お、覚えていられたのですね」


 トヨちゃん?! 口調がおかしいよ?!

 と言うか、2人とも知り合い? トヨちゃんが正座しちゃって、冷や汗ダラダラかいているけれど、昔2人に何があったの?


「私のお気に入りの着物破いて、謝らずに逃げたよね? ねぇ、豊川~」


「ひ、ひぃ……」


「それは謝った方が良いですよ、トヨちゃん」


 そんなの絶対にトヨちゃんの方が悪いですね。何で逃げてるんですか……。


「いや、その……私も若かったから、怒られるのが嫌で……その……」


「豊川~」


 だけど、葛の葉さんはそのまま手招きをしています。

 早く行って下さいよ、トヨちゃん。話が進まないですから。


「甘いよ……私もあれから強くなってるの。てぃ!」


「あっ、逃げた!!」


 すると、トヨちゃんは突然自分の体を煙で隠し、そのまま何処かに消えちゃいました。逃げるなんて、トヨちゃん……君って妖狐は……!


「捕まえて! 椿ちゃん!」


「了解です!」


 僕の探知能力を舐めないで下さいよ……上ですね。そのまま二階に上がって、屋根から脱出する気だね。


 そして、僕はそのまま跳びあがると、神通力を使って天井をすり抜けます。神通力と妖術を組み合わせれば、こんな事も可能なんです。


 因みに、葛の葉さんも天井をすり抜けて、僕と一緒にトヨちゃんを追いかけます。トヨちゃんもすり抜けてるから相当なんだけどさ……僕達相手に逃げおおせるとは思わないでよね。


「なぁ……俺、この3人には逆らわないでおくわ」


「そうした方が良いよ」


「椿よ、いつの間にこんなに……」


「おぉぅ……逆らえん」


 下から王様ペンギンと香奈恵ちゃんが何か言ってるし、白狐さん黒狐さんは呆然としながらそんな事を言っているけれど、今はトヨちゃんです。もう屋根まで逃げてるし。


 ―― ―― ――


「うわぁぁあん! 椿ちゃんの裏切り者~!」


「あのね……悪いことして逃げてる方が悪いでしょう」


 ギリギリのところでした。何とか僕の影の妖術でトヨちゃんを捕まえて、広間まで戻ってきました。

 僕の影を縄みたいにして、それでトヨちゃんを縛り付けているけれど、トヨちゃんは必死に藻掻いて逃れようとしています。


「葛の葉さんの罰は相当なんだからね!」


「だから、悪いことした君が悪いんでしょう?」


 トヨちゃんが中々言うこと聞いてくれないよ。そんなに恐いの? そんなに嫌なの? だけど悪い事したんだからさ、諦めてよ。


「さ~て。何百年だっけ? やっと罰を与えられるね~豊川~」


「あ……あぁぁぁ!! お助けぇぇえ!!」


 そのあと、葛の葉さんはトヨちゃんに罰を与えたけれど、ごめんなさい、とても言い伝える事が出来ません。く、口にすら出来ないよ、こんなの。


「なぁ、お、おおお俺……マジであの人だけは怒らせないようにするわ」


「そ、そそそ、そうだね」


 それを見た香奈恵ちゃんと王様ペンギンは、震えてしまっています。

 あれ? 僕も何だか手が震えて……葛の葉さんも、怒らせたら駄目な人でした。恐いというか、これは嫌ですね。


「さ~て、お待たせ~」


 そして、横で完全に伸びてしまったトヨちゃんを余所に、葛の葉さんは満面の笑みで、僕達の方を振り向きます。恐いよ、本当に……。


「あの、椿ちゃん。これ、私はいなくても良いかな? 修行してる飛君が気になっちゃって」


「あっ、そうですね。見に行って上げて」


 そうなんです。飛君は今、ここの妖怪さん達に手伝って貰って、妖術を使う為の練習をしている所なんです。


 それが気になったのか、単純に葛の葉さんが恐くなったのか、香奈恵ちゃんは王様ペンギンを抱えたまま、そそくさと居間から退散しました。


「さて……とにかく話を聞こうか」


 そして、ようやく本題に入れると思ったおじいちゃんは、葛の葉さんに向かってそう言います。

 因みにずっと見てましたよ、白狐さん黒狐さんも、妲己さんもね。僕達のやり取りをお茶飲みながらのほほんと見ていましたよ。まぁ、しょうもないやりとりだったから、仕方がないです。


「そうね……先ず何よりも、あの4人の陰陽師を止めないといけないわね。彼等は私の正体に気付いたのか、その身を隠したのよ。と言っても、私から逃げられると思ったのは浅はか過ぎたわね。居場所はとっくに突き止めているわ」


 そう言うと、葛の葉さんは後ろの月翔さんに指示を出して、地図を取り出してきました。

 咲妃ちゃんの正体を知ってから気付いたけれど、もしかして月翔さんってお付きの人扱い?


「地名が分からないから、地図で示すわね。ここよ」


「…………えっ?」


 そう言って葛の葉さんが指差したのは、京都市北区の上賀茂にある、深泥池でした。これ、2通りの読み方があって、『みぞろがいけ』と『みどろがいけ』があります。実は決まっていないからどっちでも良いんです。


 それよりも、ここは知る人ぞ知る京都の最凶心霊スポットじゃないですか。

 有名なのは、タクシー運転手がそこで女性客を乗せたら、いつの間にか消えていて、シートが濡れていたっていうアレです。


 だから京都のタクシー運転手は、この池でお客さんは拾いませんよ。


 でもね、実はここって国の天然記念物になっているから、池の中央の浮島には入ったら駄目なんだよ。

 それなのに、浮島に釣りに行く人が後を絶たないんだよね。良く釣れるんだってさ……。


 とにかく、そんな所に陰陽師の4人がいるって、どういう事でしょう? ここ、隠れられるような場所じゃないけど……。


「あの、なんでここに?」


「それは私も不思議だったからね。罠かと思って警戒していたの。だけど、確かに4人はここを中心に活動しているのよ」


 そして、僕の言葉に葛の葉さんがそう答えてきます。

 それは葛の葉さんでも分からないみたいで、首を傾げながら言ってきました。

 どうやら、実際に見に行かないといけないみたいなんだけど、それよりも他にやることがあるようで、葛の葉さんが僕をジッと見てきます。


「それよりもね……椿ちゃん。酒呑童子はどうするの?」


「えっと……その……」


 そうなんです、それも問題なんです。

 僕を騙してきたからさ、お仕置きしようと思っていたけれど、そもそも酒呑童子さんが今どこにいるのか分からないんです。


 妖気を探っても、酒呑童子さんらしい妖気を感じられません。

 そもそも探ると言っても限界があるから、ある程度こっちが探しに行ったり、向こうが動いたりしてくれないといけない。


 つまり妖気を感知出来ないということは、酒呑童子さんは動かずに、僕を警戒しながら獣神の妖気を集めているということになります。


 さて、どこから手を付ければ良いんでしょう……。


 その後僕達は、夜遅くまで話し合いをしていました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちゃんとキングペンギンと夫の白狐と黒弧椿の尻に敷かれてますね。
2021/12/15 15:25 退会済み
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