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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第肆章 合縁奇縁 ~頑張れ香奈恵ちゃん~
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第拾話 【2】

 あのあと良く分からないまま、僕は皆の前で正座をしています。


「椿様! またとんでもない力を……」


「いや、あの……でもね、玄葉(くろは)さん」


 数十メートル級の大蛇の妖魔を倒すには、これくらいしないと……。

 だけど、他の3人も僕を囲んで説教しそうな勢いです。久しぶりに会ったのに、いきなり説教なんて……。


 因みに、他の3人も玄葉さんと同じ顔、同じ容姿、同じ髪型です。見分けるのは、そのポニーテールを括っているリボンの色だけです。


 青が龍花(るか)さん、白が虎羽(このは)さん、赤が朱雀(あやり)さん、緑が玄葉さんになっています。


「椿よ、とりあえず神通力の方は極力抑えろ。コントロールが出来るようになるまで、妖術は控えろ……命の危険があるとき以外はな」


「だから、さっきのは命の危険が……」


 そう言うと、白狐さんは僕の顔を見た後に少しだけため息をついて、玄葉さん達に僕の事を説明します。

 玄葉さん達からしたら、僕の身に何が起こったか分からない状態なので、怒るのは仕方ないと思う。また僕が無茶して変な力を手に入れたんじゃないかってね。


 それがその通りだからこそ、玄葉さん達は本気で心配して、こうやって怒っているんです。

 でもね……何度も言うけれど、僕も一児の母になっているから、いつまでも子供扱いはして欲しくないかな。


「分かりました……椿様の状況は理解しました。それなら尚更、家に籠もって力を扱う練習を……!」


「そんなボロボロの姿の4人に言われてもな~」


「これは……?!」


 そうなんです。四つ子の玄葉さん達は皆、カッターシャツに紺色の太もも辺りまでのスカートを履いているんだけど、ボロボロになっていて、所々に穴が空いていたり破れたりしています。しかも汚れもあるんです。

 相当な激闘があったのか、何日も閉じ込められていなければ、こんな事にはなりませんよ。


「とりあえず、何があったか話して下さい。僕への説教はその後ね」


「あっ、はい……それよりも椿様、座敷様は?」


 そして帰ろうとする僕を見て、虎羽さんがそう言ってきます。


「んっ、大丈夫です。元気にしていますから」


『良かった……』


 僕の返事を聞いて、4人とも凄い安堵の表情を浮かべました。確かに、玄葉さん達が1番大切にしているのは、わら子ちゃんだもんね。


 そしてそれに続くように、朱雀さんが僕に別の事を聞いてきます。


「椿様、それでどこまで知っているんですか?」


 どこまで? それは酒呑童子さんの事かな?


 今僕達は、広いところまで歩きながら4人と話をしています。この人数だと運ぶのも大変だから、運操童さんを呼ぶみたいなんです。


「亰骸を作ったのが酒呑童子さんで、わら子ちゃんを狙ってて、僕に敵対してるって事?」


『…………』


 その僕の言葉に、4人とも「知っていたんですね」といった顔をするけれど、そのあとまた真剣な顔になりました。


「では、陰陽師の方は?」


「ん~式柱は潰れたけれど……あっ、そう言えば、その組織の最強陰陽師の4人は動きを見せないですね……」


 すると、今度は龍花さんが話しかけてきます。


「妖魔の方は?」


「えっ? 凶暴化しているけれど、他に目立った動きは……」


 僕がそう答えたあとに、玄葉さん達は顔を合わせて何かヒソヒソ話を始めています。

 全部話してくれたら良いのに、何でそうやって相談するのかな?


「ちょっと、全部説明してくれた方がありがたいんだけど……」


 すると、4人ともヒソヒソ話を止めて、龍花さんが僕の方を向きました。


「椿様、悪いですが……かなり後手になられてます。ここから挽回するのは厳しいです」


「へっ? 嘘……僕が後手にって……」


 いったいどう言う事? 誰も何も目立った動きは……白狐さん黒狐さんも特に何も……あれ? 2人とも険しい顔してる。


「やられたの……」


「なるほど、嵐の前の静けさか……どうもおかしいとは思っていたが、酒呑童子のあの言いようでは、まだ時間があると思っていた」


「えっ? えっ? 嘘、なに?」


 2人も凄い焦った顔をしているよ。なんで? 僕、何かとんでもないミスをしちゃったの?!


「椿よ、酒呑童子に一杯食わされたぞ。あの映像で行った言い合い、そして勝負だが……あれはお主の動きを抑制するためのもので、酒呑童子は勝負をする気はなく、裏でこっそりと別の計画を進めておった。そして陰陽師の方もな」


 そして、皆の言葉に焦っている僕に対して、白狐さんがそう言ってきました。


「椿様。酒呑童子の人間妖怪化作戦は、あなたが撫座頭の能力を解いた時から、完全に頓挫しているんです。今酒呑童子は、人間達に獣神の妖気の薬を渡してなんかいません!」


「なっ……!!」


「代わりに、獣神の妖気を持った動物達を必死に掻き集めています」


 黒い妖気はやっぱり獣神の妖気だったんですね……じゃなくて、それなら酒呑童子さんの狙いはいったい……。


「酒呑童子がなぜ、獣神の妖気を掻き集めているかは分かりません。まだ調べるしかないです」


 全て龍花さんが説明してくれて、ようやく僕は完全に蚊帳の外にいることに気付きました。


 やられたよ……様子見なんかしている場合じゃなかったです。もっとしっかりと動かないといけなかったよ。


「更に、異常な強さをもつ陰陽師の4人ですが、何かを復活させようと動いているようです。失礼ですが椿様は、陰陽師の組織の中でも、上位にいる陰陽師の子と、仲良くされているのでしょう? 何も聞かされていないのですか?」


 そのあと龍花さんは、更に僕に追い打ちをかけてきます。

 もう止めて……自分自身の情けなさに、僕お家に閉じ籠もっちゃうよ。


 ただ咲妃ちゃんに関しては、あの子の性格上、僕達に迷惑をかけたくないから、必死に自分達で何とかしようとしているかも知れません。

 それはそれで、友達として見て貰えてなさそうですね。いや、まだ友達として遊んだり絡んだりが少ないからですね。


「ふふ、分かりました……あとで咲妃ちゃんをおじいちゃんの家にお連れします」


「つ、椿様?」


「いけない、椿様の何か変なスイッチを押してしまったようだ」


 どういう事かな? 朱雀さん~? 虎羽さんと不思議がってるし、他の2人もちょっとたじろいでるね。

 僕が含み笑いしただけでどうしたのかな~? 皆恐がり過ぎだよ。


「お、お母さん……その不敵な笑みは流石に恐いよ?」


「そう? 他の妖怪さん達の方がもっと恐いじゃん」


「普段そんな笑みを浮かべないから、余計に恐いの」


 そんなものなのかな? それと、酒呑童子さんにもタップリとお仕置きしないとね。


「うふ……うふふふふ。やることいっぱいだぁ~」


「つ、椿様?!」


「椿様が壊れた!」


 龍花さん玄葉さん、別に僕は壊れていないよ。自分の不甲斐なさと、僕を簡単に騙せると、僕にバレないと思って動いていた人達への怒りはあるけれど、それだけだよ。


「白狐さん黒狐さん、それに皆、急いで帰るよ。早速動かないとね」


 そして僕は、皆に向けて神通力を使い、その体を浮遊させます。


「つ、椿よ、ちょっと待て!!」


「神通力は使うな!」


「え~今何だか調子良いんだよ~上手くいくから暴れないで」


『ひぃぃぃいい!!』


 全員悲鳴なんか上げちゃって。大丈夫です、空狐様に体は乗っ取られていないし、その意識も出て来ていないよ。


 本当にどういうわけか、酒呑童子さんにしてやられたと思った時から、何だか全身の力が抜けてね。

 神通力とか神妖の妖気とか、僕の中の色んな力が、ストンとお腹に落ちたみたいになって、そのまま落ち着いたんです。


 あぁ、僕ってちょっと力みすぎていたのかな? 何だか色々と脱力しちゃって、逆に神通力が使えるようになったのかも。


 そうと分かれば、これからガンガン使ってくよ。


「さぁ、皆。帰りますよ~」


 そして、僕もそのまま浮遊すると、皆を連れておじいちゃんの家へと向かいます。


『助けてぇ~!!!!』


 皆の悲鳴を聞きながらね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 絶対生きた心地がしなかったでしょうねw
2021/12/15 15:17 退会済み
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