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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第弐章 驕兵必敗 ~陰陽師の実力は?~
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第伍話

 あれから無事に森を抜けた僕達は、なんとか妖怪図書館に辿り着く事が出来ました。

 ここに来る度に、毎回この森を抜けないといけないのは面倒なので、妖怪センターに頼んで何とかして貰うか、僕が燃やすかしておかないとね。


「さて、椿よ……我々はここで……うぉっ!」


「いやいや、一緒に来て下さいよ」


 白狐さん黒狐さんが腕を組んで微動だにしなかったので、影の妖術で2人を引っ張ります。そんなに嫌なのかな……あの妖怪さん達。


 因みにここ妖怪図書館は、入り口前が広場みたいに広くなっていて、L字型の建物になっています。

 もちろん外観はボロボロで、蔦とか伸び放題。一部は崩れていて、年中妖界を照らす真っ赤な夕焼けと相まって、見事な心霊スポットみたいになっちゃってます。だけど、中は凄いですよ。


 そして僕は、白狐さん黒狐さんを引きずってその中に入っていきます。


 図書館の中は静寂で、人が歩く足音と、少しばかりのヒソヒソ声が聞こえるくらいです。

 左手が受け付けになっていて、そこで今日来た理由を、受け付けの妖怪さんに話すんだけど……。


「くか~くか~」


 分厚い本を抱き締め、受け付けのテーブルの上に胡座をかいて寝ている、この小さな老人の姿をした妖怪さんを、先ずは起こさないと。


「むぅ、相変わらずだな。本祓鬼(ほばき)


 そしてその寝ている妖怪さんを見て、白狐さんはため息をついています。

 原因は、この妖怪さんがちょっと面倒くさいと言いますか、受け付けをするのに、わざわざあることをしないといけないのです。


 因みに、白狐さん黒狐さんはそれが苦手なんです。

 僕もあんまり得意じゃないから、この前は凄く時間がかかっちゃいました。


「とりあえず、起こしますよ」


 ここでジッとしていてもしょうが無いので、僕は本祓鬼さんの前に置いてあるベルで、その妖怪さんを起こそうとします。


「くか~く……なぞなぞタ~イム!!!!」


「ビックリした!!」


 急に起きないで下さい! カッと目を見開いて起きないで下さい!

 また白狐さんの顔にしがみついちゃいましたよ。これ、癖になっちゃってる……。


「図書館では静かにせい」


「そっちのせいです……」


 というか、最初に大声出したのは本祓鬼さんですよ。

 それで、さっき叫んでいたのが僕達が苦手なものなんです。


 そう、なぞなぞを解かないとこの図書館を利用出来ないんです!


「どうせまた図書館を利用するのじゃろう? ほれ、なぞなぞを解かんかい」


「う~分かりました……」


 苦手でもやるしかないんです。全部で3問、今度はどれだけの時間でクリア出来るのかな……。


「先ずは軽くいくぞ。第1問じゃ、ある人が道で九万円を拾いました。嬉しいかと聞いたら、そうでもないと不満気じゃった。しかし、同じ人が別の場所で一万円を拾った、すると今度は嬉しそうな顔をして、今度は嬉しいと言った。さて、これはどういう事じゃ?」


「…………」


 えっ、九万円拾っても嬉しくないのに、一万円で嬉しいって……。


「拾った一万円の方が価値のあるやつだった?」


「椿、迂闊に答えるな!」


「あっ、しまっ……!!」


「不正解じゃ」


 すると、床から大量のくすぐり棒が出て来て、僕の体をくすぐってきます。


「あひゃひゃひゃ!! 止めて止めて止めて~!! 今のは答えてないです! 呟いただけぇ!!」


 不正解だとこのように、くすぐりの刑を受けてしまいます。本当に、迂闊に答えられません。


 その後3分間も、僕はくすぐられ続けました。結構キツいんですよ……これ。


「ヒ~ヒ~し、死ぬ……」


「迂闊に呟くからだぞ」


「分かってるけどね、黒狐さん……1問目は割と簡単だから、当たってるかなと思ってしまって……」


 それでも、一万円の方が価値があったというのは消えましたね。それじゃあ、一体なんで?


「しかしなぁ……拾ったのなら警察とやらに届けんと、落とし主が……」


「落とし主……それです!! 拾った本人が、合計十万円を落としていたんじゃないんですか?!」


 それなら九万円拾っても嬉しくはないだろうし、一万円拾って無事に十万円戻った事になるから、嬉しいでしょうね。


 これが不正解なら、もう無理ですよ……お願いします。


「む……正解じゃ」


「やった……!!」


 まだ1問目だけど、それでもちょっと嬉しいや。小さくガッツポーズしちゃいました。


「では第2問! しゃぶしゃぶ、おすし、焼き肉。名探偵が1番好きなのはどれじゃ!」


 くっ……また難問ですね。

 名探偵が好き? しゃぶしゃぶ、お寿司、焼き肉……接点がない。言い方を変えるのかな?


「英語かの?」


「しゃぶしゃぶって英語でなんて言うの?」


「シャブシャブじゃったな……ぐっ、違うか」


 残念ですね、白狐さん。妖怪専用のスマートフォンで調べたみたいだけれど、しゃぶしゃぶはしゃぶしゃぶでした。他の言い方もないし……。


「寿司も焼き肉も、英語にしても意味が無かったな。となると、名探偵の言い方、もしくは名探偵の行動か?」


「う~ん、呼び方では無さそうです……何これ、難しい……本祓鬼さん、ヒントです」


「良いぞ、その代わり何を差し出す」


 一応ヒントは出してくれますが、その代わり何かを差し出さないといけません。別に、それは物じゃなくても良いです。だから……。


「僕の尻尾を触って良いです」


「良かろう……おぉ、相変わらず良い触り心地だ」


「うぅ……」


 白狐さん黒狐さんは不満気だけど、しょうが無いんですよ……これもあるから、白狐さん黒狐さんはここには来たくなかったんです。


 だけど、あるものの情報を集めるには、この図書館が1番なんです。


「宜しい。ヒントは、名探偵なら良くやる行動じゃ」


 そして、満足した本祓鬼さんはヒントを出してくれました。

 行動? やっぱり言葉を変えるタイプじゃなさそうです。それってもしかして、脱力するような答えじゃないでしょうね……。


「名探偵……探偵じゃなくて名探偵なら、推理力が……」


「推理……すいり……ん? 何か引っかか……」


「白狐よ、これは握り寿司とは言ってないよな……」


 あっ……ちょっと待って、僕も今それで分かったかも。


「でもさ……お寿司ってなったら、普通握り寿司とか、そっちの方をイメージしませんか?」


 これは卑怯ですよ。でも、多分答えは……。


『お寿司だ!!』


「ほぉ、正解じゃ!」


 あ~もう!! これは本当に卑怯ですよ!

 名探偵は推理が好きだからさ……そう、酢入りがね。お寿司には酢入りのやつもあるからね……はい、次行きましょう、次。


「ふふ、次こそは本当になぞなぞっぽいなぞなぞじゃ」


 それじゃあ今までのは何ですか?

 まぁ、言葉遊びが多かったですからね。本格的ななぞなぞとなると、本当に難しいものは難しいんですよ……。


「行くぞ、第3問。買うときは黒く、使うときは赤くて、捨てる時は灰色のものはなに?」


「…………」


 こ、これは……全く分からないよ。

 買うときは黒? 使うと赤……捨てる時は灰色? えぇ……絵を描くときの道具とか、そんなものじゃないですよね。


「これは我等にとってはボーナス問題じゃったな」


「そうだな白狐。最近は使う家が無いからな、分からないかも知れない」


 えっ? えっ? 白狐さん黒狐さん、直ぐに分かったの? 嘘でしょう?!


『木炭』


「うむ、正解じゃ」


「あっ……」


 買うときは黒くて、燃やして使うときは赤くて、その後は灰になって……灰色に。

 分かったら案外簡単だったかもって思うけれど、最近の家では使ってる所が少ないし、アウトドアくらいでしか使わないから、分からない人は多いかも……。


「我等は昔、良くこれで暖をとっておったからな」


「まぁ、簡単だったな」


 久しぶりに白狐さん黒狐さんに対して、年の功を感じました。2人とも凄く長生きだったんですよ……忘れていました。

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