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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第壱章 意気自如 ~変わらない椿の意志~
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第玖話

 あれからしばらくして、ようやく里の中に入れた僕達は、僕のお父さんとお母さん達が向かった方に歩いて行きます。


 その途中で、トヨちゃんが何処かに走って行く姿を見たので、声をかけると、里のある妖狐に用があると言って、そのまま行っちゃいました。後で合流出来るとは思うけどね。


 そして良く見たら、この妖狐の里は高い家は無いみたいで、木で出来た小屋のような家々が立ち並んでいるだけです。

 奥の方には更に大きな木の家が建っているけれど、あれがこの里の長さんの家かな?


 真ん中には大きな広場があって、幼い子達が皆で妖術の練習をしたりしています。

 ちょっと懐かしいな、僕もあんな風に必死に練習していた時期がありました。


「あっ! 危ない!」


 すると、突然僕の方に狐火が飛んできました。

 あぁ、ちょっと失敗しちゃったんですね。別にこれくらいの狐火なら……。


「んっ、大丈……ぶっ?!」


 妖気を纏った手で弾いた瞬間、狐火が破裂して水が落ちてきました。びしょ濡れです……なぁに、これ?


「ご、ごめんなさい……狐火型水風船が変な方向に飛んでちゃって……」


「あ~なるほど……」


 完全にメラメラと燃えていたのに、それは騙しでしたか。見事に引っかかっちゃいました。

 ついでに……もの凄い水の量だったので、僕の周りに居た皆もびしょ濡れです。


「椿……」


「姉さん……」


「いや、皆、椿ちゃんは悪くないわ。風船程度のあの狐火に、こんな量の水が入ってるとは思わないもん」


 美亜ちゃんと楓ちゃんが文句を言おうとしたけれど、里子ちゃんが止めてくれました。

 確かに、こんな量の水が入っているとは思わなかったんです。それよりも、お風呂入りたいな……。


「あらあら、ようやく来たと思ったら、何してるの?」


「あっ、お母さん……ごめんなさい。他の妖狐さんの凄さを実感していたんです」


 とにかく、広場で遊んでいた子達は僕達に謝ってきていて、タオルを渡してきているけれど、髪の毛までぐっしょりだからね……サッパリして乾かしたいです。


 それに服も着替えたいけれど、この里の妖狐達は皆同じ服を着ていました。

 薄手の着物と袴、女性は袴と同じ素材で出来たスカートを穿いています。動きやすそうだし、1度着心地を試してみたいです。


「全く……長に会う前に、奥にある共同の露天風呂に行ってきなさい」


「露天風呂?!」


 えっ? ここって、家にお風呂があるんじゃないんですね。


「丁度良いわね、さぁ椿、一緒に汗を流しましょう」


 すると、間髪を入れずに雪ちゃんが僕の襟首を掴み、引きずっていきます。

 待って待って、君と入るのは久しぶりだし、色々と心の準備をしないといけません。それと……。


「なんでここの妖狐さん達まで一緒に来るんですか?!」


『いや~丁度お風呂の時間なんで……』


「嘘だ! 絶対に嘘だ!」


 僕の裸が見たいんだ、皆僕の裸が見たいんだ! 妖狐の里の女性達が皆着いてくるんだもん!

 それと、男性の妖狐さん達も聴き耳を立てていて、僕達の様子をチラチラと伺っています。


 覗きでもする気? ちょっと、誰か見張りをお願いします。


 ―― ―― ――


「はぁ~いい湯ね~」


「ここのお湯は美容にも良いし、毛艶も良くなるんです。秘湯として、時折妖狐以外の妖怪達も入りに来るんです」


 美亜ちゃんがおっさん臭いです。その後に、里の妖狐さんがこのお風呂の効能を話しています。


 あれからは何事もなく、無事にお風呂に入る事は出来ました。でも、その後僕の周りには女性の妖狐達が集まって来て、僕の肌や髪を触ってきています……。


「はぁ~スベスベ~」


「良いわね~このサラサラの髪の毛~」


「お湯に浸かってもフワフワな毛質を保つなんて、流石ね~」


 いや、ちょっと……ここのお湯の効能からして、皆もお肌スベスベじゃないんですか? 毛艶も僕以上でしょう? なんでこんなに触ってくるんでしょう?


 それと僕の毛は、何故か水を弾く仕様になっているので、濡れても直ぐに乾くんです。お湯とか水に付けても、ぐっしょりと濡れたりはしないんです。


「わぁ……狸の尻尾ってこうなってるんだ~」


「何だか独特な毛質だねぇ。でも、触り心地は良い~」


「ね、姉さん……ちょっ、ちょっと助けて下さいっす!」


 あっ……流石に何人かの興味が楓ちゃんの方に向きましたね。

 化け狸は始めて見るのかな? 若い妖狐の女の子達が、楓ちゃんの尻尾を触ってます。


 楓ちゃんも尻尾は少し弱いらしくて、流石にあんなに沢山の妖狐達に弄られたら、悶えちゃうみたいですね。


「は~い、次の人。肌を触るのは5分ですよ」


「雪ちゃん!!」


 そして、雪ちゃんはやっぱり人数整理をしています。お風呂くらいゆっくり浸かろうよ。


「雪お姉ちゃん~折角の温泉なんだから、ゆっくり浸かろうよ~」


 すると、そんな雪ちゃんを見て、香奈恵ちゃんがそう言ってきます。

 本当にその通りです。雪ちゃん、君は僕といると僕の事ばかりになってます。だから、ちゃんとしっかりと自分も……。


「そうした方が、沢山の妖狐に弄られて悶える、可愛い椿ちゃんの写真が撮れるじゃん~」


「あっ、そっか」


「香奈恵ちゃん?!」


 しまった、嵌められた!

 雪ちゃんが整理してくれている方が、まだ耐えられるレベルで弄られていたけれど、それが無くなると……。


「ゆ、雪ちゃん……整理! 順番に並ばせて!」


「あ~疲れたな~ちょっとゆっくりと、お湯に浸かってるわ~皆、好きなように弄って。サービスタイム開始~」


「雪ちゃん棒読み! ちょっと……ごめんなさい!! 助けて下さい!!」


 僕、今日だけでどれだけ悶えてると思ってるの? もう駄目、本当に駄目だから、体がもたないから!


「あっ、やっ……ちょっと、皆さん落ち着いて……」


 そして次の瞬間、妖狐の女の子達の目がギラつき、一斉に僕の方を見てきます。駄目、逃げないと……逃げないと!!

 だけど、皆が一斉に向かってきたから逃げ場なんてありません。こうなったら妖術で……!


「妖異顕現、水縄縛り! それ~皆、今の内にサービスタイム楽しんじゃえ!」


「わぁぁぁっ!! 何これ! お湯が、ちょっと……縄みたいに……しかもこの縛り方はダメェ!!」


 僕がやる前に、先に妖術をかけられていました。

 しかもその瞬間、お湯が縄みたいになってから、蛇みたいに動き出し、凄い速度であっという間に僕を縛ったけれど、その縛り方が危ないんです!


「あぁぁぁ!! 止めて! 吊さないで!」


 所謂その……SMなんかで良く使われる縄の縛り方だったんです。

 それを見て、雪ちゃんと里子ちゃんは鼻血を出して卒倒。香奈恵ちゃんも鼻血を出しながらも、何とか意識を保って、どこからか取り出したカメラで僕を激写しているけれど、これは雑誌に載せられないからね! 後で消去するからね!

 僕は今裸なんだよ! それでこんな縛られ方……完全に18禁だってば!!


「この縄解いてぇ!! 大人しくするから、解いてぇ!!」


 だけど、必死に訴える僕を余所に、他の妖狐の女の子達が凄い笑みで近付いてきます。


「誰かぁ!! 助けてぇ!!」


 僕、こんな事をしている場合じゃないような気がするんですけど、なんで事になるんでしょう……?


 ―― ―― ――


「んっ、いい湯ね~」


「あら妲己。あんたも来たの? しかもお酒って……」


「良いから良いから、ちょっと付き合ってよ美亜」


「まぁ、飲めるから良いけど……あんた重要な話をしてたんじゃ……」


「あ~私は知ってるからね。何せあの子の中に居たのよ。あの子が普通じゃない事くらい分かってるのよ」


「あぁ、ここにある情報みたいなものって、椿の事ね」


「そうよ。それで聞きたいんだけれど、あんたが椿と一緒にいるのは何でよ」


「それと椿の情報と何の意味が?」


「良いから答えて」


「そりゃ当然……し、親友だからに決まってるでしょ? 全く、お酒あって助かったわ」


「酔いのせいに出来るもんね、ふふ。良いわ、あなたはそれで良い。そのままでいてあげて、例え椿が椿じゃなくなってもね」


「どういう事よ? あんた何を知ってるの?」


「どうせ直ぐに分かるわよ。ほら、飲みなさい」


「全く……相変わらず食えない妖狐ね……」

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