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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第壱章 意気自如 ~変わらない椿の意志~
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第伍話

 あれから1週間、僕達は伏見稲荷の家で様子を伺っていたけれど、あの事件の事、人間の男性が妖怪化して巨大化したのは、完全に僕達の仕業にされちゃいました。


 あの翌日に、僕達は手配書に載ってしまうくらいのスピードでした。どうやら、近くを烏天狗さんが飛んでいたらしく、彼の証言も相まってのことらしいです。


 僕達がやった所を見てはいないのに、僕達の行動が全て、犯人としての行動として見せられていたのかも知れません。


「お姉さま……大丈夫です。ここ伏見稲荷には、天狐様もいますし、強力な結界で撫座頭の能力が届いていません」


 そして、自室で椅子に座って難しい顔をする僕に向かって、ヤコちゃんがそう言ってきます。


 ここ伏見稲荷大社とその周りは、強力な結界が施されていて、撫座頭さんの能力を弾いていました。

 だから、ここにいる天狐様と、ヤコちゃんとコンちゃんは大丈夫でした。それと、天狐様に用事で呼ばれていたお父さんとお母さんもね。


「椿、悪かった。思った以上に相手の能力の広がりが凄くてな……」


「銀狐、あれは私達ではどうにもならなかったわよ。あの天狐ですらあわ食っていたでしょう?」


「う……うむ」


「それ程に厄介な薬を開発されたって事よ。それで椿、どうするの? このまま泣き寝入りするの?」


 僕の後ろからお父さんとお母さんがそう言ってくる。

 泣き寝入り? しませんよ。どうやって撫座頭を倒そうか考えていたんですよ。


 今は体が黒い妖気によって霧散して、ほぼ妖気だけの存在になってしまっている。

 それを元に戻せれば……と思ったけれど、それって殆ど不可能な状態なんじゃ……そうなると、祓うみたいにして除去しないとダメなのかな?


 そしたら撫座頭さん、死んじゃうよ……う~ん。


「椿、あんたどうせ、撫座頭を殺さないようにして解決しようとか、そんな事を考えているんでしょう?」


 すると、今度は妲己さんも僕の部屋に入ってきて、そう言ってきます。なんで分かっちゃうのかなぁ。


「言っておくけど、それは100%無理だからね」


「なんでそう言う事が言えるの? 妲己さん」


「あのね……体を失った妖怪が元に戻るなんて事――」


「でも、妖怪ってそもそも無から生まれたりもしてませんか?」


「…………」


 あっ、妲己さん黙っちゃった。図星を突かれたみたいで、顔を引きつらせて返答に困ってます。

 確かに妖怪は、物から生まれたり生き物からが多いけれど、幽霊からだってあるし、その怨念が濃くなって実体を持つこともあるんです……って、それだ!


「怨念……悪霊からの妖怪化……」


「あ~なるほど……その手ね。でもそれじゃあ、どうやって怨念を与えるの? そもそもあれはもう、相当な怨念になってると思うけど?」


 妲己さんはいちいち指摘してきますね。

 確かにあの黒い妖気は、異常な程の負の気に満ちているけれど、怨念まではいってないんだよね。そのギリギリ手前で留めているんです。


「あの黒い妖気は、怨念まではいってないです。妲己さん、僕の感知の能力の方が高いことは分かるよね?」


「……はぁ、分かってるわよ。それじゃあ、どうやって怨念を与えるの? 呪い? それが出来る子はもう……」


 そうですね、でもそんなのは……。


「取り返せば良いんです」


 そして僕はそう言うと、椅子から立ち上がって自室を出ます。丁度来ているんですよね、僕の大切な妖怪さん達が……まさかいきなり寄越してくるなんて、ありがたいですよ。


 多分、1番取り戻すのが簡単な妖怪さん達と半妖さん……。


「椿~!! 出て来なさい!!」


「椿、香奈恵……嘘だと言って!」


「椿ちゃ~ん!! 私への愛は嘘だったのぉ!!」


「姉さ~ん! 出て来るっす!!」


 美亜ちゃん、楓ちゃん、里子ちゃん、雪ちゃんです。

 多分僕と1番仲が良かったから、手荒な真似はしたくないおじいちゃんが、この4人に説得して来るように言ったんだ。


 でも残念、それが1番の失敗だよ。


「つ、椿よ。友と戦うのは……」


「ん~? 戦うつもりはないよ」


 だってこの4人なら、戦わずして僕が勝てるからね。

 そして4人だけなら、僕の黒羽の矢で相手の妖気を弾いてしまえば、元に戻ると思います。


 だから、僕は堂々と玄関から出て、その前にいる4人と目を合わします。


「椿……あんた、何で何も変わらない目をして……」


「椿、お願いだから真実を言って、違うって、やってないって言って!」


「そうだよ、雪さんの言うように違うって言って!」


「姉さん……」


 あぁ……やっぱり皆、まだ僕の事を信じようとしてくれている。

 でも、僕達が悪いことをしたという情報も信じ込まされているから、葛藤しているんだ……ごめん、僕が弱かったから、僕が不甲斐なかったら、こんな苦しい思いをさせちゃって。だからお詫びとして……。


「そうだね。でもその前に……僕の尻尾触る?」


『触る~!!』「っす!」


「黒羽の矢」


『あっ!!』


 はい、これで3人です。

 そもそもこの3人なら僕の尻尾でこうなるんで、後は簡単なんですよ。恥ずかしいけれど念の為、後ろを向いてから尻尾と一緒にお尻もフリフリしといたからね、効果は抜群ですよ。


 そして賢い美亜ちゃんなら、今の展開で気付くと思います。


「あぁ……そう。私達、何かに操られている……もしくはあんたが悪い事をしたと、そう思い込まされているのね」


「……うん」


「そう、それなら早くしなさいよ」


 そう言って、美亜ちゃんは腕を組みながら目を閉じました。


「ありがとう、美亜ちゃん」


 そして僕は、美亜ちゃんにも黒羽の矢を放ち、美亜ちゃんの身に纏わり付いていた気持ち悪い妖気を弾きました。


 ―― ―― ――


「なるほどね……例の黒い妖気でパワーアップした、撫座頭の仕業だったのね……」


 その後、何だかスッキリとした表情になった4人に、事の顛末を話しました。


「全く、無粋な事……してくれる。モフモフ……」


「ほんとほんと~私と椿ちゃんを引き裂こうなんて、許せない! はぁ~モフモフ~」


「最低っすね! 亰骸とかいう奴等は! あぁ……最高にモフモフっす~」


 そして、他の3人もようやく撫座頭の能力から解放されて、僕の話を聞いて憤慨しています。

 4人とも憤慨しているんだけど、顔は崩れているんだよね。だって、僕の尻尾触ってるもん! いや、触らせているんだけどね。


 1週間だけとは言え、僕の事で苦悩していたと思うと、心が苦しいんです。だからせめてもの償いに、僕の尻尾を触らせて上げてるんです。


「お母さん……大丈夫? はぁ~モフモフ~」


「くっ……うぅ……香奈恵ちゃん、君は触るのを許可してないよ?!」


「えぇ、良いじゃん~もう1人増えても~」


「5人はキツいんです!」


 もうね……白狐さん黒狐さん、そして妲己さんにも色々と開発されちゃって、尻尾はね……尻尾はもう僕の性感帯の一部になっちゃったの!

 それでも我慢して触らせているんです。でも、香奈恵ちゃんはダメ!


「ほら、お母さんが睨んでいるから、香奈恵はダメ」


「ぶぅ~雪ばっかり~」


「雪お姉ちゃん」


「う~良いもん、また寝ぼけたフリして触るから」


 香奈恵ちゃん、今の聞きましたよ。

 どうりで朝起きたら尻尾がムズムズするわけだよ。香奈恵ちゃんが触っていたんですね。今度から気を付けましょう。


「それで椿、これからどうするの?」


「うっ……くっ、そ、それなんだけど……美亜ちゃん、今日本全国を覆っている撫座頭に、怨念を与える事って出来ますか?」


「無理ね。大き過ぎるというか、範囲が広すぎるわね。ただ、私は金華猫(きんかびょう)だって事を忘れないでね。相手が空にいるなら……何か使えるでしょう? ただ、どうやるかは分からないから、あんたが考えなさい」


 あぁ、そう言えば美亜ちゃんは金華猫でした。

 金華猫って、飲み水とかに自分の尿を入れて、自分の姿を見えなくさせることが出来るんですね。


 それと金華猫って、異性に化けて魅了し、そして呪って病気にさせるんですよね。ということは……。


「雨に美亜ちゃんのおしっ……あうっ!! くっ……ごめんなさい、美亜ちゃん!」


「ふん、そもそも撫座頭が男か女かも分からないし、普通の呪いでいくしかないわよ。ただ、近付いたら警戒されて、また能力を使われるかも知れないから、姿を消しておくに超した事はないでしょって言いたかったのよ」


「分かってる、分かってます!」


 でも、美亜ちゃんはしばらく僕の尻尾を強く弄り続けました。お陰で僕は腰が抜けちゃいましたよ。


 とにかく、美亜ちゃんの力で相手の怨念を上げ、無理やり実体化させることは出来ると思う。だけど、それにはまだまだ色んな壁があります。


 そしてお父さんとお母さんは、天狐様に呼ばれてから、思い詰めたような表情をしたり、真剣な顔になったり、何か考え事をするような顔を頻繁にするようになっています。


 いったい天狐様に何を言われたの?

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