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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
第壱章 意気自如 ~変わらない椿の意志~
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第参話 【1】

 周りの人達の目が変わり、僕達の方に襲いかかって来る。

 これは祟り? 呪い? 黒い妖気が噴き上がってる時点で、もう悪い事しか考えられない。 


 早くしないとこの人達が妖怪化しちゃう。

 それを狙う組織亰骸が、この状況を作り出しているとしか……。


「白狐さん、黒狐さん!」


「分かっとるが、お前が1人ずつ妖気を剥がしていくのか?!」


「いえ、ちょっと無理します!」


 そして、僕は出来るだけ襲ってくる人達を引きつけると、両手を左右に広げ、持ってる妖気を全て使う気持ちで妖術を放ちます。


「黒羽の妖砕矢、散華(さんか)!!」


 すると、僕の体の周りに太くて黒い矢が沢山現れ、襲って来る人達に向かっていきます。

 更にこの矢、貫通能力も付けたので、次から次へと妖気を剥がしていく事が出来ます!


 そして次々と襲ってくる人達を貫き、黒い妖気だけを剥がしていきます。

 この矢は実体は貫けないから、そのまますり抜けます。でも実体のないものは貫くので、憑いたものを剥がすには打って付けです。


 そして貫いた人達は倒れていき、気絶していきます。見たところ妖怪化はまだしていませんね。良かった……。


「おっと、頑張り過ぎだ椿」


「はぅ……ごめんなさい、でも早くしないと。黒狐さん、妖怪食のいなり寿司……」


 その後もの凄い疲労感が襲ってきた僕は、後ろに倒れそうになるけれど、黒狐さんが受け止めました。

 そして妖気を回復するために、妖気を含んだ妖怪食のいなり寿司を求めます。

 まだ本命がいるかも知れないんです。こんな事態にした亰骸と、その原因となった妖怪が。


 白狐さんは妲己さんと共に辺りを警戒しています。白狐さんは体術が得意だから、敵が動いたら直ぐに行動出来ます。


「もう、お母さん……今のは危なかったんじゃないの?」


「んぐっ、意識飛ぶ寸前でしたね」


 黒狐さんからいなり寿司を受け取り、急いで口に放り込んでいる時に、香奈恵ちゃんが呆れた顔をしてきます。

 でもね、その表情は娘として心配しているというよりも、親友として心配しているような感じですよ。


「んぐっ! んぐぐ!!」


 しまった、急いで食べてたから喉に……! お茶、お茶!


「ほら椿、落ち着け。敵はまだ……」


 いや、来てる! 来てるんですってば!! 妖気を感じるんです、黒い妖気と一緒に普通の妖気もね。


「おやおや、こんな所に妖狐とは……大丈夫ですか? もし宜しければお手を貸しますよ」


 急に目の前に現れたその妖怪は、一枚の大きな布切れを体に巻いているだけで、髪の毛はなく、目もないです。そして大きな鼻が、ニンマリとする口の上に付いている。あと爪が長いです。


「あら、結構よ。撫座頭(なでざとう)。あんたは猫被って、自分の罪や災いを人に押し付けるからね」


「んぐんぐ……ふぅ。と言うことは妲己さん、この妖怪が?」


「えぇ、この辺りに災いを振りまいている元凶よ」


 黒狐さんから貰ったお茶を飲み干し、僕は妲己さんにそう聞きます。でも聞く前に、その妖怪から黒い妖気を感じるので、間違いないですね。


「ふむぅ……私の事が分かっておりましたか……それなら仕方ありません。この事態、あなた達が原因とさせていただきましょう」


 あ~そういう作戦でしたか……厄介な僕達を封じる為に……人と妖怪の架け橋をしている僕の信頼を、人々から奪う為にこんな事を!!


「白狐さん、黒狐さん、この妖怪さんはお願いします!」


「おぉ、別に良いが、椿はどうするんじゃ?」


「僕、怒りました。僕の相手はあいつだ!!」


 そして僕は、白狐さんの力を解放し、僕から見て斜め前の店の屋上にいる人に向かって、飛び掛かります。

 僕は怒ると、男だった時の口調がたまに出ちゃうけれど、別に良いよ。男の子だったんだし。それに、その方が相手もビックリするんだよ。


「な、なんやと?! こっちに気付いて……!」


「火車輪展開……狐狼拳(ころうけん)!!」


「がふっ!!」


 スカジャンとGパン、そして金髪の髪を遊ばせている男性のみぞおちに、僕は思いきり拳を撃ち込みます。

 この火車輪、香奈恵ちゃんの前世というか、生まれ変わる前のカナちゃんの時に使っていたものです。


 今は僕のものになっているけれど、任務や仕事の時は、いつもこれを腕に付けています。

 そして、それを展開すると炎の輪になるので、後ろに向けて噴射させ、ブーストさせることで僕の拳の威力を上げているんです。これが僕オリジナルの技『狐狼拳』です。


「がっ……あがっ、ぎゃふ……!」


 そのまま相手の男性は苦しそうな表情を浮かべ、屋上から落ちると、途中看板とかに当たって地面に落ちました。


「あなたは亰骸の一員ですね? 何でそんなに僕達の邪魔をするんですか!」


「ぐっ、げほっ、ちっ……うるさいわ。邪魔なんはおのれや。妖怪と人間が仲良しこよしなんざ、出来るわけないやろうが! あぁ!」


 あっ、この人からも妖気が……この人も妖怪? とういうことは、今回のこの亰骸という組織には、妖怪と半妖しかいない?


「それにな……俺は人間やけど、中には人間止めたい思う奴もおるねん! 人間の世界滅ぼしたいと思う奴もおるねん! 亰骸はそんな夢を叶えてくれる場所や! 最高やねん!! 邪魔させん!!」


 そう言うと、その男性はポケットからピルケースを取り出すと、そこから錠剤を出しました。


 まさか、その薬は……?!


「ダメです! それは飲んだらダ――」


「黙れや、クソ妖狐。人間の事も妖怪の事もなんも知らんと、よう仲良しこよしなんて言えたもんやな!!」


「――っ!!」


 そしてその人はそれだけ言うと、沢山の錠剤を手に取り出して一気に飲み干しました。

 止める暇すらなかったよ。その前に怒鳴りつけてきたのもあったし、ちょっと竦んじゃいました。


「ちょっと、つば……お母さんがどんな気持ちで頑張って……」


 そんな中で、香奈恵ちゃんが必死に僕を擁護してきます。

 大丈夫ですよ、香奈恵ちゃん。ちょっとショックだったけれど、こんな人が現れるのも考えてはいましたよ。


「香奈恵ちゃん、大丈夫です。僕は大丈夫。良いですよ、そんなに言うなら君の言い分を聞かせて下さい」


 そして、見る見る内に姿が変貌していく男性に向かって、僕はそう言います。


「あがぁっ……はっ、あっ……言うかよ、クソ妖狐が……!」


 その前に苦しそうだけど大丈夫でしょうか?

 額に角、手足は猛禽類の脚みたいになり、獣のような尻尾も生えて、体毛まで増えていってます。


 これ……妖怪って言えるのかな? 色んな妖怪をごちゃ混ぜにしたような、そんな姿になっちゃってます。


 でもちょっと待って、あの薬を飲んでそんな風になるということは、あの薬って……。


「キシャァァア!!」


「うわっ!!」


 なんて考え事をしていたら、相手が急に僕に飛び掛かってきて、その脚で引き裂いて来ました。

 動けるようになったならなったって、そう言って欲しいですね。急に来るなんて……。


「ちょっとは落ち着いて下さい」


「なにっ……! 完全に不意を突いたんやぞ!」


「えっ? 意識あるの?!」


 普通はこんな風に人じゃ無くなっちゃったりしたら、意識が人じゃなくなったり、暴走したりする事が多いのに、この人変貌する前と変わらない受け答えをしてきます。


「お母さん!!」


「あっ……!!」


「油断し過ぎや、クソ妖狐」


 嘘……尻尾が蛇みたいに変化して、僕の腕に噛みついてきた……。


「んで、こうや……!!」


 そして、そのまま相手の頭上まで高く持ち上げられると、僕を地面に叩きつけようとしてきます。

 でも、そうはさせませんよ! 僕がどれだけの数の激闘をしてきたと思ってるんですか!


「ほっ……!! 黒焔狐火、業炎剣(ごうえんけん)!」


 僕は空中で頭が下に向いちゃってるのを、バク転するようにして上に戻すと、その後に妖術を発動させて、手から黒い炎の剣を出します。そして、相手の尻尾の蛇を切り落としました。


「ぐっ……! やっぱやるな……」


 すると今度は、相手は撫座頭に向かって叫びます。


「おい、撫座頭! そっちは進めとけ! 俺はこいつをやっとくさかいに、計画通りにやれ!」


 計画? これは何かの計画の一部、もしくは何かをしようとしているという事? ということは、本気で止めないといけませんね。


 そして僕は、いつも持ち歩いているどんな物でもいくらでも入る、ある妖怪の妖具である巾着袋を取り出して、そこから僕の主力武器、石で出来た刀剣御剱(みつるぎ)を出しました。

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