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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
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第捌話 【1】

 アクトゥリアンさんが開けた扉の奥、その先の廊下をひたすら進んでいくんだけど、これって異空間とか亜空間かもしれません。なんだか辺りがグネグネと動いていますからね。


「アクトゥリアンさん……これ、大丈夫なんですか?」


「捻れた空間を無理やり繋いでますからね。はぐれたらそのまま、どことも知れない異空間に飛ばされ、取り残されますよ」


「勘弁して下さい……」


 それならそれで、尚更離れるわけにはいきません。こうなったら、はぐれないようにしっかりとなにかで繋いでおかないといけないですね。


「そうだ……」


 そこで、僕は自分の尻尾をアクトゥリアンさんの腰の辺りにまで伸ばし、それをしっかりと巻き付けます。


「その尻尾は便利ですね」


「えぇ、まぁ……触られる事ばっかりだけど、万能ですからね」


「確かに、この何とも言えない肌触りは極上ですね」


「……触らないで」


 すると、アクトゥリアンさんが巻き付けた僕の尻尾を触ってきました。まさか触ってくるとは思いませんでした。五次元生命体だから、感覚が違うかなと思ったけれど、そうでもなかったですね。

 それでも、アクトゥリアンさんと手を繋ぐわけにもいかないし、これしかないんですよね。肌触りがどうなってるか気になるけれど、誰かさん達が嫉妬しそうなので止めておきます。


 そうしてしばらく歩くと、また扉が現れました。


「一応私が感じた気配の場所を、この先に繋げましたが……さて、何がいるのでしょうか。ここは太陽ですから、空亡以外は何もいないと思ったのですよ……」


「空亡の中に誰か住んでいたとか? だって、この城も空亡そのものでしょう?」


「えぇ、そうですね。あの人型の姿は全て分け身なので、地球に現れていたのもそうなりますね」


 そうなると、空亡の中に何かがいたということになりますよね。それを空亡が閉じ込めていたとすると、もしかしたら空亡打倒の最善手になるかも……。


 今のところ僕達は、力任せで空亡を押さえようとしていますから。それ以外の手があるならそれに越したことはありません。


「さて、開けますよ。何が起こるか分かりませんから、直ぐに動けるように準備を……」


「は、はい」


 そう言って、アクトゥリアンさんが扉の取っ手に手を置きます。


「……くっ!!」


「ど、どうしました?!」


 すると、その瞬間アクトゥリアンさんが取っ手から咄嗟に手を離し、顔をしかめてきました。なにかマズいことでも起きたのですか?!


「もの凄く熱かったです」


「…………」


 真剣な顔で何を言ってるんですか? いや、でも、取っ手が熱いというとこは、扉の先は熱が籠もってるってこと? ま、まさか……太陽の核がこの先にあるのですか?


「とにかく、熱の対策をして進みますよ」


「はい」


 言われる前からやったけれど、どれくらい耐熱したら良いんだろう。太陽の核なら、もっと耐熱しておかないといけないよね。そうなると、いくら僕でもそんなに長時間はいられないよ。


 だけど、アクトゥリアンさんは僕が対策をしたのを確認すると、直ぐに扉を開けてきました。


「ちょっと……いくら僕でも長時間は……あっつ!!」


「ぬぅ!」


 神通力を使って耐熱してもこの熱さって……やっぱり、この先は太陽の核?! そんな所、行けるわけないですよ! というかアクトゥリアンさん、咄嗟に僕の後ろに隠れないで下さい。


「予想外の熱だった。いくら私達でも、星の核にはそう長くはいられない」


「僕だってそうです!!」


 それならなんで入ろうとしたのかな?! とにかく、急いで扉を閉めて戻らないと!


「しかし、この先に何かいるのは確かだ」


「そう言われても、この先に進めないほどの熱ですよ?! 戻りましょう!」


 すると僕が叫んだあと、その先から誰かの声が聞こえてきます。


「誰?! 近くに誰かいるの?!」


「へっ……女性の声?!」


 本当に誰かいました。でも、姿が見えないです。


「やっぱり誰かいるのね?! ちょっと待ってて!」


 すると、その女性の人が大声を上げたあと、扉の先の熱が弱まっていきます。これならなんとか進めるかも。


「これで来られる? ちょっとこっちに来て!」


 そう言われても、向こうが敵か味方か分からない以上、迂闊に近付くのは危ないです。

 だというのに、アクトゥリアンさんは扉の先へと向かっちゃいました。


「ちょっと待って下さい! 敵かも知れないんですよ?!」


「そうだとしても、確認しないと分からないでしょう。考えたところで不確定要素が多いので、直接見に行きます」


「そうだけど……」


 このままここにいたら異空間に取り残されるから、とにかく後を着いていくしかないですね。だから、観念してアクトゥリアンさんに続きます。


 その扉の先の熱さはさっきより和らいでいて、辺りを確認出来るようにはなりました。広い広いドーム型の広間になっていて、更に中心にある丸い球体から、もの凄い光が発せられているけれど――


「あなた達、どうやってここまで来たの?」


 どうやらさっきの女性の声はここから聞こえてきます。この中に誰かいるの?


「五次元生命体の私がいるので」


「……あぁ、なるほどね。妖怪がここまで来るのはおかしいと思ったけれど、あなたがいれば納得ね。それじゃあ、私をここから出してくれる?」


「出すって、その前に君は何者なんですか?!」


 光り輝く球体だからか、声を発している人の姿が見えないんです。

 だけど、いくら僕でもだいたいは分かってきました。でも、これが本物なら、空亡を制することが出来る。本物なら……ね。


「もう~だいたい察しているでしょう? 空亡が乗っ取った黒い太陽の中にいて、閉じ込められていて、灼熱と眩い光を放っているとなったら、答えは1つしかないじゃない」


「……体育会系のニート?」


「ボケるにしてはいまいちよ」


 そうですよね、分かってました。かなり早い段階で一刀両断されちゃいましたね。


「太陽神よ太陽神!! どの国でも神として崇められている存在よ!!」


 やっぱり太陽神でした。

 空亡が太陽そのものだとして、それじゃあ神話の中に出て来る太陽神はなんだって話しになるんですよ。


 多分空亡と、皆が語り継いでいる太陽神は、表裏一体の存在なんじゃないでしょうか?

 今回、色々な人達が空亡を復活させようと、いろんな所から負の念を集めまくっていたので、立場が逆転しちゃったんじゃないかな。


 そしてそれが完全に逆転し、空亡が主導権を奪い、太陽神はそのままここに閉じ込められた。


「君が本当に太陽神なら……ね」


「もう一回ここを灼熱にしようかしら?」


「ごめんなさいごめんなさい。本物です、すいません」


 太陽神じゃなければ、閉じ込められつつもあれほどの高熱を発することは出来ないですよね。つまり空亡でも、その力を完全に押さえることが出来なかったんですね。

 それほどの力を持っているんだから、もう太陽神で間違いないです。


「これは、助け出すと……」


「そうですね。空亡を封じ込める事が――」


「力を削いでくれないと無理。リョウメンスクナの力を取り込んで、私でも押さえる事が出来ない程になっちゃったから」


 ハッキリと言いましたね。どっちにしても倒すしかなかったよ。


 とにかく僕は御剱を取り出し、それに妖気を流すと、太陽神の封じ込められている球体に狙いを付けます。


「それなら、とりあえずそこから出しますね」


「えっ、いや……出してとは言ったけれどそんな簡単には……」


 確かに呪術の力も感じるけれど、そこはプロフェッショナルの美亜ちゃんと一緒に仕事したりもしてました。今の僕なら、この結界はなんとかなります。


「てぃ!」


 そして僕は、御剱を上から下に振り上げ、球体の表面を覆っていた空亡の結界を剥ぎ取ります。


「うそっ……!」


 するとその球体は、シャボン玉が弾けるようにして霧散しました。その瞬間、またとてつもない高熱が発してきたけれど、一瞬だったからなんとか防げました。

 でも、ちょっとだけ尻尾が焦げちゃったかも……後でブラッシングしないと、2人に怒られそうです。


「まさか……こんな簡単にこの球体を壊すなんて……」


 その後、驚いた声を出しながら、太陽神がその姿を現してきます。

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