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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
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第漆話 【2】

 一通り僕のお母さんに説教された後、廊下の先へと進んで行きます。

 その間こっちにやって来た妖魔はというと、説教がてらお母さんが蹴散らしていました。まるで群がるハエを蹴散らすような感じで……。


 説教中のお母さんは止められないですからね。


「椿、行き止まりでもUターンして戻るんだぞ」


「それはお父さんもです」


 この辺は僕、お父さんの血を引いてるなって思うよ。同じ事しようとしていたなんて。


 そうやってしばらく歩いていると、広いホールみたいな場所に出ました。ここが太陽の中とは思えないほどに真っ暗で、熱さも全然ありません。

 神通力と妖術で防いでいるとはいえ、多少の熱はあるはずなのに、全くないんですよ。


 そしてこの広間は、無駄に広々としていて天井が高いです。和洋折衷の城なので、壁とか装飾は和風なのに、柱や階段は洋風になっていて、禍々しさも足されたこのお城の内装は、一言で言うと――


「まるで魔王城じゃな」


 僕が思っていたことを、一足先に白狐さんに言われちゃいました。そう、魔王城みたいなんです。


「しかしのんびりもしていられない。正面から来るぞ」


「ぬぅ、数が多い」


 すると、僕達の正面側の先にある大きな扉が開かれ、そこから大きめの妖魔が何十体も現れ、こっちに突撃してきました。


 このままここで戦っていてもきりがないです。


「神刀御剱、刀吹雪(かたなふぶき)!!」


 そこで僕は、御剱を上から下に振り下ろし、神通力を混ぜた妖気から大量の刀を作り出します。そして、それを目の前の妖魔目がけて飛ばします。


『ぐぎゃぁぁあああ!!』


『ぎぃぃいいい!!』


 獣みたいな姿の妖魔もいれば、虫みたいな姿の妖魔もいましたね。本当に、魔王城のモンスターみたいじゃないですか。


「ほぉ、これは中々。これなら早い段階で空亡の所に辿り着けそうですね」


 妖魔を退治していく僕達の背後では、アクトゥリアンさんが感心しながら見ていて、あとを着いてきていました。

 ただ、指輪が光っているし、途中で何か呟いているので、何かしながら着いてきていそうですね。


「椿、横へ!」


「気付いています!」


 すると、更に巨大な妖気を察知した僕は、お母さんの叫び声とともに横に飛び退きます。それと同時に、上から何かが落ちてきて、もの凄い衝撃と爆風を撒き散らしました。


「うっ……誰ですか!」


「クキキキ……侵入してきたものは、容赦なく殺せ。空亡様の邪魔をするものは、殺ーーーす!!」


 その雄叫びとともに土煙が舞い散り、相手の姿が見えました。

 巨大な体躯に鎧を着ているような体表。体付きは人間みたいなのに、額からカブトムシみたいな角が出ています。

 体色は真っ黒で、光沢があるのか少しの光源から見えたりしますね。


 太陽からの光が完全に失われたわけじゃないから、完全な暗闇ではないけれど、それでもその体色は見えにくいですね。

 妖気から妖魔だと分かるけれど、喋る妖魔はもういないはずだよ。それは寄生する妖魔が、人間に寄生して喋っていただけだからね。


 それなのに、今目の前の妖魔は喋っています。空亡が新たに作った妖魔……ということかな。


「白狐さん黒狐さん! お父さんもお母さんも、離れないでひとまとまりになって――」


「いや、既に遅いような……」


 僕が言い終わる前に、黒狐さんが上を見上げています。まさか……と思って僕もそっちを見ると、さっきの妖魔が高く跳び上がり、角の付いた頭を下にしていました。まさか、それで突き刺す気?!


「危なっ……!!」


「ズッドーーン!!」


『わぁぁぁああああ!!』


 僕の予想通りにその妖魔は、カブトムシみたいな角を地面に突き立て、床を崩してきました。咄嗟に避けたけれど、崩壊した範囲が広すぎてダメでした。


 僕達はそのまま、抜けた床から落ちていきます。


「白狐さん、黒狐さん! お父さんお母さん!!」


「うぬっ、椿よ! 手を!!」


 落下していく中で、白狐さんが僕に向かって手を伸ばしているけれど、遠すぎて届きません。

 というか、アクトゥリアンさんの空間移動で何とか出来ないのかな? このまま落下していたら、空亡の下に辿り着くまで時間がかかっちゃうよ。


「アクトゥリアンさん! 空間移動とかで……!」


「……いや、この城の中は宇宙空間のハズなんですけどねぇ」


「……あれ?」


 同じように落下しながら、アクトゥリアンさんが首を傾げていました。

 確かにこの城に入った瞬間、無重力を感じて神通力と妖術で重力と空気を作ったけれど……って、僕達の周りには重力を作っているから、落ちるのは当然ですよ。


「アクトゥリアンさん……僕達、重力作ったよ」


「いや、そうなんですが……何も下に重力がかかるわけではないのに、何故下に?」


「僕、難しい話は分かりません……」


 確かに周りに重力は作っているけれど、無重力の中に重力を作るなんて誰もやったことがないから、普通はどうなるかなんて分からないんですけど……とかやっている間にも落ちているし、白狐さん黒狐さんと離れていくし!


「下に……何かありますね」


「何でも良いけれど、とにかく妖魔を!」


 むこうは無重力の中で動いているので、落下せずに浮きながらこっちに向かってるんですよ! しかも僕のほうに!


「クキキキ!! 空亡様の邪魔するもの、抹殺!」


「くっ……神炎尾槍(しんえんびそう)!」


 このままだと、更に追い打ちで地面に叩きつけられると感じた僕は、尻尾を槍みたいに鋭くし、白銀の炎を纏わせると、それで妖魔を突き刺します。


「ギッ!!」


 割とあっさり刺せたけれど、相手は止まらずにそのまま突っ込んで来てます。

 これで倒れないなんて……というか燃えないです。いや、酸素がないから燃えないよ。しまった……。


「クキキキ!! くたばれ~!!」


「うっ……!!」


 そして、今度は妖魔が僕の尻尾を掴み、思い切り振り上げてきました。

 このまま思い切り地面に叩きつけるつもりですか……そうはいきません! 似たような展開はよくやってますからね。


「この……」


「クキ? 何する気だ?」


 丁度地面が見えてきたから、このまま体勢を変えて……。


「狐狼拳!! 砕壊(さいかい)!」


「なっ……! グギャァァアア!!」


 崩れていた体勢を真っ直ぐにして、相手の頭の後ろに拳をやると、そのまま火車輪を展開し、白銀の炎でブーストさせ、相手の後頭部を殴り付けながら、その下に見えていた地面へとめり込ませました。


 思い切り床が抉れちゃったけれど、大丈夫だよね? この下宇宙空間じゃないよね……。


「……床、抜けてない。セーフ」


 実は地面に叩きつけてから気付きました。床が抜けていたら危なかったよ。


 それよりも、辺りを見渡しても白狐さんと黒狐さん、そしてお父さんとお母さんが落ちてくる様子がないです。別の所に落ちちゃったのかな? 結局、離れ離れになっちゃったよ。


「……全くもう。妖気は感じるから合流は出来そうだけど……どうやって上に上がったら良いんだろう?」


「ふ~む。この城の内部はどうなっているんでしょう。流石の私も、ここまで複雑化しているとは思わなかったですね。模範的な城の内部かと思っていましたよ」


 そして何故かアクトゥリアンさんは横にいました。なんで僕と同じ所に落ちてきたのでしょうか……。

 でも、アクトゥリアンさんの言うとおりで、この場所、かなり変な事になっていました。


 さっきのホールみたいな場所は、無駄にだだっ広い所で、先の壁が見えなかったんです。

 今、この僕達のいる場所は、螺旋階段が上に向かって伸び、その横には沢山の扉、更には柱時計が沢山立ち並び、時を刻む音が辺りに鳴り響いています。


「空間がぐちゃぐちゃになってますね」


「……空間が」


 空亡もアクトゥリアンさんのように、空間を操れるようになっているということ? それなら想定した以上に厄介じゃありませんか。


「まぁでも、この位なら容易く移動出来ますが」


「えっ……ちょっと! 待ってください!」


 だけど、アクトゥリアンさんは全く焦る様子もなく、近くにあった扉に近付いていき、躊躇なく開けました。

 その先はまた長い廊下が続いていたけれど、行って良いのそれ……というか、行っちゃってますね。このまま追いかけないと、僕はここで延々と迷うことになるかも。


「あ~もう!」


 僕の事は考えているんでしょうか? その後、更にアクトゥリアンさんが何かを探し始めましたね。

 とにかく早く白狐さん達と合流しないと、この状態を狙わない空亡じゃないと思います。


 急がないと……。

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