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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
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第漆話 【1】

 朝ごはんを食べ終えた僕達は、身なりを整え、作戦を再度頭の中で復唱し、玄関へと向かいます。


「椿ちゃん、また今回もご飯用意しておくからね!」


「あっ、はい。晩御飯までには戻れると思うから、お願いします」


 この前も大きな戦いの時に、里子ちゃんはしっかりと晩御飯を用意していましたからね。今回も同じように用意してくれています。

 お昼ご飯はいなり寿司を用意してくれていて、それを巾着袋の中に入れていますよ。本当に何でも入るから便利だし、今でも重宝してます。


「さて、準備は良いですか? 地球の方は、私の仲間達が指示します」


『よろしく』


 アクトゥリアンさんと同じような宇宙人さん達がいっぱ~い。また急に現れたからビックリしました。


「椿よ、驚いたら我の背に隠れる癖はどうにかならんか?」


「あっ、あれ……?」


 ビックリしたら無意識に白狐さんの背に隠れちゃう。ただそれを、香奈恵ちゃんと雪ちゃんがニヤニヤして見ていました。早く出発しないと、また何を言ってくるか……。


 それと、こっちもこっちで大変だし、もしかしたら誰か消滅しちゃうかもしれないんです。

 妖魔は以前よりも強くなって、かなりの数増えているんですから……。


「椿、とりあえずこっちは私達がいるから、安心しておきなさい」


「そうじゃ。私達がいる中で、万が一なんてそうそう起こらんわ」


 すると、不安そうにする僕を見て、妲己さんと玉藻さんがそう言ってきます。確かにこの2人がいればって思うけれど、何が起こるかなんて、分かりませんからね。


「うん、だけど油断はしないでね」


 その僕の言葉に、2人ともしっかりと頷きました。


「さて、それではそろそろ行きましょうか」


 そして、アクトゥリアンさんが僕達4人に向かってそう言うと、手のひらを広げ、目の前に様々な色に変化している流動する空間を出現させました。


「なっ、なんですか……これは」


「異空間、もしくは亜空間と言いましょうか。こことは違う空間です。そこを通路とし、この世界の宇宙空間、あの黒い変容した太陽の元へと繋いでいます。つまり、ここを抜けたらもう敵陣です」


「そんな直行で行くとは思わなかったです」


 ということは、もう戦闘準備をしておいた方が良さそうですね。直ぐに敵が襲ってくるかも知れない。


 それにしても、アクトゥリアンさんは凄い能力を使って……と思ったら、指に見たことのない指輪を付けていました。

 キラキラと輝き、変なオーラみたいなものを発していて、僕達の知らない未知のエネルギー使っているような感じがします。


「それでは、地球の方はお願いします」


『はい!!』


 その後アクトゥリアンさんが仲間の人達にそう言うと、それに一斉に返事が返ってきて、そしてそれぞれが他の皆に指示を出していきます。

 もの凄くテキパキしているし、皆もそこから作戦開始と意識したのか、素早く動き出しましたね。


 皆も頑張って下さい。僕も、絶対に勝って帰ってくるから。


「行きましょう! アクトゥリアンさん!」


「はい、皆一斉にどうぞ」


 僕の言葉にアクトゥリアンさんがそう言ってきます。だから、遠慮なく目の前の異空間に飛び込もう……としたけれど、やっぱりちょっと不安というか、未知のものの前に足が竦んじゃいます。


 本当に大丈夫ですよね? これ……。


「何をしている椿。早く行くぞ」


「あっ、待って黒狐さん。本当に大丈夫? この空間」


「何を言っている。白狐が先に行くから大丈夫だ」


「我か?! お主が行け!」


「もう~何しているの、2人とも。一緒に行きなさいよ~」


「そうだ。早く行かないと後がつかえる」


 お父さんとお母さんもちゃっかりと僕の後ろにいて、2人に先に行くように言ってますね。2人も怖いみたいです。

 ただ、それを見ていたアクトゥリアンさんは、満面の笑みを浮かべながら僕達に近付いてきます。


 怒ってる? 怒ってるのかな?


「4人で行きなさい」


「わぁぁあ!! 押さないで!」


「おぉぉ! お主ちょっと待て! 心の準備を……!」


「大丈夫なのか?! 本当に大丈夫なのだろうな?! 別の世界に飛ばされたりはないよな!」


「あらやだ~」


「ちっ、椿と金狐、お前達だけは守るぞ!」


 結局アクトゥリアンさんは僕達4人の背中を同時に押して、その異空間へと放り込んできました。

 決戦の前に、まさか度胸試しをされるとは思わなかったです。後ろで美亜ちゃんが「何やってるの」ってため息付いてるの、聞こえたからね。帰ったら覚えててよね。


 そして僕達は、アクトゥリアンさんと一緒に異空間の中へと突入します。グネグネしたこの空間、酔いそうだよ。


「さっ、こちらです」


 そして僕達を押したアクトゥリアンさんが、後ろから現れて道案内してきます。

そのままその空間を歩き、おかしな景色に酔いそうに……なんて事もなく、すんなりとどこかの建物の中に到着しました。


「あ、あれ? もう着いたの?」


 慌てて神通力で無重力対策と、空気の確保はしたけれど、なんにも言われてなかったから危うく宇宙空間にやられるところでしたよ。


「言いませんでしたか? 五次元生命体なので、四次元はとうに超越しています。つまり、移動する時間すら惜しいので省略しました」


 慌てふためいて対策している僕達に向かって、アクトゥリアンさんがそんな事を言ってきます。時間すら超越って、嘘でしょう。

 でもそれは良いけれど、いきなり到着するなら言って欲しかったです。黒狐さんが危うく昇天するところでしたよ……。


「はぁ……はぁ、あ、危ない。ち、血が……沸騰しかけたぞ!」


「うぬぅ……アクトゥリアンよ、この事は説明して欲しかったな」


 もちろん、白狐さんと黒狐さんはアクトゥリアンさんに文句を言います。


「それは申し訳ありません……が、最初に説明したので分かっていたかと」


「いや、色々とあったからすっぽ抜けてました」


「あぁ、なるほど。地球の人達は記憶保持がまだ不十分でしたか」


「それってつまり、あなた達は一度言われた事はずっと記憶し続けられるということですか?」


「えぇ、少しの情報でも考えられる可能性を示唆でき、対策を咄嗟に取れますが……私達の常識で動くべきではなかったですね」


「そういうことです」


 あまりにも発展し過ぎたのかな。言っている事が僕達と多少ズレてるよ。

 たまに銀河規模の事を言ってくるし、アクトゥリアンさんの話にはついていけなかったりするんですよ。


「あぁ、だけど私達は、身体能力がそこまで高くないので、力押ししてこられると困ってしまうんです」


 そう言うと、アクトゥリアンさんは直ぐさま僕達の背後へと回り込みます。それと同時に、僕達のいる薄暗い廊下の奥から、巨大で禍々しい妖気を感じました。


 妖魔がこっちに来てますね。

 つまり、アクトゥリアンさんはこうした力任せによる戦闘は出来ないということですね。平和的な種族って言っていたから、それも関係あるんでしょうけど、咄嗟に僕達の背後に隠れないでほしいですね。こっちはまだ戦闘準備が出来てませんよ。


「全くもう……アクトゥリアンさんは……」


「椿よ。この少人数だ、バラバラにはならないよう、ひとかたまりになって動くぞ」


「そうですね」


 白狐さんにそう言われ、僕は巾着袋から御剱を取り出し構えます。


 空亡の妖気はこの上から感じる。本当にそこに居たらだけどね。


 とにかく、沢山いる妖魔を倒しながら上に行かないといけないけれど、空亡の味方は1人もいないです。消耗戦になりそうだけど、相手は何をしてくるかは分かりません。


 こうなったらスピード勝負をしかけましょう。


神化狐火(しんかきつねび)神炎砲(しんえんほう)!」


 そして僕は、御剱を持った右手を上に掲げ、その先から大きな狐火を作り、そこから熱線を放ちます。


「このまま天井に穴を開けて、空亡の下に直行します! って、貫けない……」


 熱線が当たって爆発した天井は、壊れるどころか全く傷つきませんでした。硬い……。


「椿よ、少し驚いたぞ」


「せっかちね~気持ちは分かるけれど、今ので私達の居場所を知らせちゃったわよ~」


「あぅ、ご、ごめんなさい」


 白狐さん黒狐さんは目を丸くしていて、僕のお母さんは目を細めて怒気を放っていました。

 因みにお父さんも手を上に上げていたけれど、もしかして僕と同じような事をしようとしていた? それなら、僕と一緒にここに並びましょう。

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