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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
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第陸話

 翌朝。といっても太陽が黒くて、和洋折衷の大きなお城になっちゃってるので、日の光もなく寒いんですけど、それでも今日、僕達はあの城に突入します。


 メンバーは僕のお父さんとお母さん、白狐さん黒狐さんだけです。妲己さんと玉藻さんは、地上で香奈恵ちゃんや飛君を守って貰わないといけないですからね。

 一応念押しはしておきました。2人とも悪い妖狐だったからさ……。


 そのほかのメンバーは、全員でこの地球で生き残った人達の救助です。


「椿よ、準備は出来たか?」


「はい! 白狐さん!」


 準備を済ませた僕は、白狐さんにそう答えます。スパッツを下に履き、スカートタイプの巫女服で戦闘しても下着は見えないようにしました。

 それと上の服も、袖をあまり長めにしないようにして、肩の部分だけが出ているものにしています。この方が腕を振りやすいからね。


「うむ、パンチラ対策も完璧だな」


「パンチラって言わないで下さい」


 その通りなんだけど、他に言い方はなかったのかな? でも、黒狐さんや白狐さんが戦闘中にいちいち鼻血出されるのも困るからね。


「ふっ、分からんか白狐。スパッツはスパッツでな、お尻の形がハッキリと分かり、これまた――うごっ!」


「いつも通りで安心しました」


 これから死地に行くというのに、黒狐さんはそんなことを言いますか。尻尾をハンマーに変えて殴っておいたけれど、逆にいつも通りの2人を見て、少し緊張が和らぎました。


 因みに白狐さんと黒狐さんはいつも通りの格好ですか、大丈夫かな……。


 その後、僕達は1階へと降りていき、大広間に入っていきます。そこには既に、アクトゥリアンさんが座っていて、真剣な表情を浮かべています。


「…………」


「…………」


 ついでにその斜め前には里子ちゃんも座っていて、これまた真剣な表情でアクトゥリアンさんを見ています。

 これ、オチが読めちゃいました。だって、アクトゥリアンさんの目の前には、里子ちゃんの作った朝ごはんが置いてあるんですよ。


「……うん、素晴らしいです。私達の記憶の奥底にある『お袋の味』見事に再現されています!」


「本当ですか?! やったぁ!!」


「はい、おはようございます」


 こっちもいつも通りで、安心どころか脱力しちゃいました。とりあえず2人の会話を遮る事になっちゃったけれど、2人に朝の挨拶をします。


 朝からなにやってるんでしょうね、この2人は……。


「おはよう、椿ちゃん! 今朝ごはん用意するね!」


「あっ、はい」


 気のせいか、里子ちゃんが無駄にテンション高い気がします。無理してる?


「あっ、里子ちゃん、僕も手伝うよ」


「いいよいいよ、椿ちゃんはこれから決戦なんだから、体を休めておいて!」


 せっかく2人になって、無理してないか聞こうとしたのに。でも、あの反応はやっぱり無理してますね。

 他の皆もいつもと空気が違うし、僕を不安にさせないように、心配している事を悟られないようにって感じです。


 別に大丈夫なのに……って、なんでだろう。昔戦った相手より更に強大で凶悪なのに、僕の心は穏やかで静かです。

 確かに地球規模で起きている呪いのせいで、人類は滅亡寸前だけど、それでも僕達はまだ存在していて、海外の妖怪さん達もいっぱい加勢に向かってくれています。もちろん自国を守ってくれること優先だけどね。


 妖精さんや首なし騎士のデュラハンさん、ちょっと醜悪な格好をしたチュパカプラ、ビックフットもいましたね。皆、日本を中心に起こったこの事態を解決しようとしています。


「はい! 椿ちゃん! 朝ごはん!」


 そんな事を考えていたら、里子ちゃんが朝ごはんを持ってきてくれました。

 いなり寿司が添えてあって、お肉が中心になってますね。精をつけようとしてくれてるのが分かるけれど、里子ちゃんの笑顔がそろそろ限界そうですね。無理するから……。


「里子ちゃん、大丈夫ですよ。僕は負けませんから」


「…………椿ちゃん」


 あれ、皆シーンと静まり返っちゃいましたよ。どうしたんでしょう?


「……うむ。椿、お主はもう我々妖怪の中でも最強と言っていいのだろう。その佇まい、皆を不安にさせない雰囲気。そして何といっても神々しい。もはやなんの言葉もいらんか。この世界の未来、頼んだぞ」


「はい、おじいちゃん。ううん、鞍馬天狗さん」


 実は昨日寝ている間に、空狐が僕の夢の中に出て来て、今までの空亡との戦い、世界の情勢、妖怪さん達の事、その全てが僕の頭の中に流れてきたんです。

 夢の中で空狐さんは、ちょっと面白くない顔をしていたけれど「もう全てお前に任す、好きにやってみろ」と言っていました。


 その時からかな、頭の中の不安や焦燥が全部掻き消えて、僕のやるべき事が全て分かったんです。

 僕の中のモヤモヤとか、そういうのが全部消えて、スッキリとクリアになった感じだよ。


「つ、椿様……」


「椿ちゃん……」


「椿、あんた……」


「なんですか? 皆して目を丸くして」


 いなり寿司を食べながら、僕は昨日の夢の事を思い出していたけれど、何故か皆が驚いた声を出しています。龍花さんまで驚いちゃってるよ。滅多に驚かないのに。


「椿よ、素晴らしい姿だな」


「へっ? あれ?!」


 白狐さんまでそんな事を言ってきたから、自分の姿を確認すると、真っ白な毛色なのに殆ど目に見えないほどの細かな毛質になっていました。

 フワフワの雪が集まったような、空気の塊が集まって可視化されたような、そんな感じの尻尾になっちゃってるよ。なんですか、これは……。


「…………うわぁ」


 触り心地は抜群というか、この世のものとは思えないほどのフワフワで、夢見心地になりそうな程にモフモフしていました。


「椿よ、ひと撫でさせてくれ」


「駄目です」


「何故だ、夫だろう」


「いや、これ駄目です。永遠に撫でられそうだから、というかそれどころじゃないでしょう。帰ったら触らせるか……ら!」


「いたっ……!!」


 黒狐さんは既に腕を伸ばしていたから、手の甲を引っぱたいておきました。


「椿。きっとあなたは私達と同等の存在、神狐として覚醒したのでしょう。自然界に、人間の世界に溶け込むようにして存在する妖狐としてね」


「……そっか」


「俺達の娘だから当然だ。さてそうなると、空亡が哀れに思えてくる」


 すると、僕と一緒に朝ごはんを食べるお父さんとお母さんがそう話してきます。

 空亡が哀れ……ですか。確かにそんな感じがするけれど、それでも油断だけは駄目ですからね。


 里子ちゃんの用意してくれた朝ごはんを食べながら、これからの動きを頭でイメージします。上手くいけば、多分全くの被害を出さずに空亡を倒せそうですね。


「……う~む。最初は成功確率が低かったのですが……椿さん、あなたがそのレベルに至るとは思わなかったですね」


 僕達の様子を見て、アクトゥリアンさんが呆然としていますよ。最初は強力な助っ人みたいな感じだったのに、何故か今はただの移動手段要員となりつつあります。


「しかし……アレが動く可能性は十分にあります。私達はそちらの対応をしますので、空亡はお願いしますよ」


「空亡が戦おうとしている奴ですね。倒せないんですか?」


「幾度となく制裁は加えていますが、それでも懲りませんね。因みに、消滅させたり命を絶つことは出来ません」


「へっ? なんで?」


「五次元を行き来できるので、別の世界の自分を置き換えてくるんです」


「…………」


 要するに命を絶たれても、それが無かったことになるの? それって無敵じゃないですか……。


「ですから、彼等の相手は私達がやりますので、ご安心を」


「あ、は、はい……」


 次元の違う戦いの話しに、僕も白狐さん黒狐さんも、お味噌汁をすすって傾聴するしかなかったです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺したり消滅させても別の世界の自分を置き換えて復活してくるって空亡がやろうとしてることってただの無駄じゃね?
2021/12/16 15:33 退会済み
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