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僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
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第参話 【1】

 瓦礫の山、極端に気温が落ち込み寒くなった外、未だに揺れる地面、空は黒い雲に覆われて、昼間なのに夜みたいに暗いです。


 今の地球はこんな感じで、本当に呪われてしまった状態ですね。

 アクトゥリアンさんの言うように、先ずはこれを何とかしないと、僕達が空亡を倒す前に人類が滅亡しちゃいます。


 既に人類の半数、もしくはそれ以上が犠牲になったと、1週間前の最後のニュースでやっていました。

 そうなると当然、人間達の認識で保っている僕達妖怪の存在も、消えてしまうかも知れません。


 つまり、人類滅亡は妖怪滅亡でもあるので、先ずは生き残った人々を助け、何とか生き延びてくれないといけません。


「でも、僕達がどうやって……」


「そうねぇ、あの宇宙人さんが言っている事が正しければ、リョウメンスクナの呪いの拡散器になっているものが、地球のあちこちにあるのよね」


「それを破壊すれば……と簡単に言うがのぉ」


「……なんでこんな状態になっている富士山に、僕達が登らなければならないんですか?!」


 今僕達は、とんでもない状態になっている富士山を前にして、絶望しちゃっています。

 実は、呪いの拡散器をそれぞれ分担して処理する事になり、日本で1番影響を及ぼしている巨大な拡散器を、僕達3人が処理する事になりました。


 メンバーは僕と玉藻さん、そして葛の葉である咲妃ちゃんです。この2人は呪いの処理には長けているからと、僕の方に組み込まれました。


 これはおじいちゃんとアクトゥリアンさんが話し合って決めた事だから、僕はただそれに従うだけだけど、海外にまで行ってる妖怪さんもいるから、それはそれで少し不安なんです。


 美亜ちゃんなんてロンドンですからね。大丈夫でしょうか……。


「さぁ、ちゃちゃっと終わらせて、空亡を倒しに行くぞ」


「玉藻、あなたそう言いながら捕まってるでしょうが。張り切ると駄目なのよ、あなたは」


「なんじゃと? 言うのぉ、葛の葉」


 玉藻さんが言うと、咲妃ちゃんがそう言い返します。それに玉藻さんが不機嫌になってますよ。でも、ちょっと待って下さい。


「……あれ、2人って面識あるの?」


「私も長生きしてるからね」


 あぁ、そっか。皆が認識している事柄の、そのずっと前から2人は存在しているとしたら、どこかで接触していてもおかしくはなかったです。


 だけど、それならそれで早く教えて欲しかったよ。


 どういうわけか、玉藻さんも妲己さんも葛の葉さんも、面識のある妖怪さんと会っても、初めて会ったような素振りをするんです。


「あのさ、なんで皆隠すのかなぁ……面識あること」


『基本的に良い出会いじゃないから』


 つまり敵対していた時もあるということですか。それは確かに気まずいでしょうね。

 でも、2人揃ってそう言ってきて、本当は仲が良いんじゃないんですか?


「ほら椿ちゃん、今はそんな話よりも、この山の頂上に行かないと」


「うっ……」


 そうなんですよね。この富士山の頂上に、リョウメンスクナの呪いを拡散しているものがあるんだけれど、登りたくないなぁ……こんな真っ黒で熱い溶岩を出し続けている富士山には……。


「……妖術で防げ――」


「ないのぉ。強力な呪いのかかったマグマだからのぉ。観念せぇ、隙間を見つけてそこから登るか、溶岩を吹き飛ばすしかない。ただ吹き飛ばした所で――」


 そう玉藻さんが続けようとした瞬間、地面が激しく揺れ、富士山の頂上が爆発するように噴火し、真っ黒な溶岩が噴き出してきました。


「――噴火して次の溶岩が来るから意味がないの!」


「その前に岩! 岩、避けないと!」


 今の富士山は、活発に噴火を繰り返してしまっています。

 呪いの拡散器が置いてあるからか、真っ黒な溶岩と真っ黒な岩を噴き出して、麓の町や東京の町を壊滅的な状態にさせてしまっているのです。


 呪いを拡散しているものって、頂上にあるんだよね。噴火に耐えているのか、そもそも噴火自体が呪いの拡散器から出ているのかも知れません。これは近付くのも一苦労ですよ。


 その前に、もう僕の知る日本じゃなくなっていくのが、凄く悲しいよ。だけど止めないと。もう僕達しか止められないのなら、止めないと!


「あ~もう! 避けながら登ります!」


「ふふ、その調子ね」


「だからここは私達に任されたのじゃな。それなら、何とか頂上まで一気に行くぞ」


 そして、溶岩を避けながら登っていく僕の後ろから、玉藻さんと咲妃ちゃんが着いてきます。


 ただ、富士山は普通に登る時でも、しっかりとした装備じゃないと体調が悪くなったりするから、油断してはいけません。

 妖怪とはいえ、これだけ高い山を一気に登るんだから、妖気で守っていても少しくらいは体調が悪くはなりますよ。


「よっ、ほっ! 玉藻さん、咲妃ちゃん、大丈夫?!」


 溶岩の隙間を見抜き、まるで川を流れる岩や枝で川渡りをするようにしながら、僕はひたすら富士山を登ります。

 正規の登山ルートはもうなくなっているから、ひたすら真っ直ぐに登っているけれど、ちょっとキツかったかも。

 後ろから続く2人を気にしながら行くけれど、その2人が僕の前を指差しています。


「……げっ?! 嘘でしょう!」


 何だろうと思って前を見ると、何と真っ黒な岩だと思っていたものから、手と足が生え、鋭い牙の付いた口が彫り込まれ、空亡の妖気を身に纏った妖魔へと変貌しました。

 いや、これはリョウメンスクナの妖気かな? 呪いの力で、無理やり物質を妖魔化するなんて……。


「これを倒しながら、溶岩を避けながらは骨じゃのう」


「広範囲を吹き飛ばす妖術でいこっか」


「そうですね、咲妃ちゃん! 神風鉄槌!」


「あっ、椿ちゃん……それ溶岩まで舞う……」


 しまった……広範囲となると、僕の場合風の妖術しかないんで、ついやってしまいました。

 妖気と神通力を沢山混ぜた風の塊を、目の前の岩の妖魔達に放っちゃったよ……。


「でも、心配ないぞ。大丈夫そうじゃ」


「……そうですね」


 すると、目の前の岩の妖魔達が、彫り込まれた口を大きく広げ、僕の放った風の塊を飲み込み、そのまま食べちゃいました。


「ゲゲゲゲゲ!!!!」


 そして更に手足の付け根から体が出来てきて、人の形を成していきます。

 相手に力を与えちゃったかな……妖術は厳禁ですね。そうなると――


「あ~もう! 僕達は急いでいるのに……狐狼拳!」


 物理でいくしかないです。

 腕に火車輪を取り付け、それを広げて展開させた後、炎を逆噴射して威力を付けると、勢いよく岩の妖魔を殴りつけました。


「ゲゲ!!」


 岩の妖魔は体の真ん中に大きな穴が開き、そのまま崩れたけれど、まだ沢山いるんですよね……このまま一体ずつ倒していってもキリがないです。


「しょうがいなぁ~結界陣!」


 すると、咲妃ちゃんが何か札みたいなものを取り出し、それを足下に叩きつけると、僕達の周りに光り輝く円陣が出現しました。もしかして、バリアーか何かですか? それなら最初から使って欲しかったです。


「本当なら祝詞を唱えて強化した方が持つんだけれど、急いでいるからね~」


「……えっ、咲妃ちゃん、この結界どれくらい持つの?」


 一応僕達が動いたら結界も動いているから、このまま移動出来そうだけど。妖気はほとんど込められていなくて、弱そうなんだよ……。


「ん~と、30分も持ったら良い方かな。それと、2~3発攻撃を受けたら壊れるかな~と言うわけで――」


「い、急ぎます!!」


 それならそれで、強化した結界を張って欲しかったです!

 とにかく僕達は急いで走り出し、富士山を一気に登っていきます。


「こんな事なら、咲妃ちゃんのお供の月翔さんも連れて来るべきでしたね」


 そう僕がボソッと呟くと、咲妃ちゃんが首を傾げてきます。


「……月翔?」


「咲妃ちゃん嘘でしょう? 灰狐の月翔さん……」


「……あ~居たわね」


 もしかして完全に忘れていたのでしょうか。となると、月翔さんはどこで何をしているの? もしかして、陰から見守っ――てますね、妖気を感じました。


 妖魔がひしめく中で、中々妖怪一体の妖気を掴めないので気が付かなかったよ。

 でも何だろう……心なしか悲しみのオーラも感じるけれど、気にしない気にしない。この結界が働いているうちに、一気に登り切らないといけないからね。


 そして、僕達は妖気を全身に纏い、黒い岩の妖魔と溶岩の間を縫いようにして走り抜けていきます。

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