表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
116/131

第壱話

 空亡が完全に力を取り戻し、太陽を黒く禍々しい巨城に変えてから、数日が経ちました。


 地震は頻繁に起こり、巨大な台風も軒並みやって来ています。それが日本だけじゃなく、世界中にです。


 日本の終わりだけじゃなく、世界の終わりまで近付いています。たった数日で、世界の人口の3分の1が亡くなりましたから。


「…………事態は最悪の状況じゃ」


 そして今僕達は、気温の格段に下がった日本で、いつもの鞍馬天狗のおじいちゃんの家で、空亡の討伐の話し合いをしています。それにしても寒いです。

 一気に気温が下がっているし、発電所も軒並み壊れていって、電気も使えないんです。


 それと最悪な事に、日本には沢山の原子力発電所があるんだけれど、それが全て崩壊して放射能が漏れ出しまくっているんです。日本は完全に、死んだ土地になってしまいました。


 僕達妖怪や半妖達は、人間とは違って妖気である程度は防げるけれど、それでも限界はあります。浄化はしないといけません。

 それの目処は立っているけれど、何より空亡が居る以上、現地時点で浄化は不可能なんです。


 と、ここまではこの数日で話し合った事なんです。


「おじいちゃん、結局空亡を倒さないといけないなら、今すぐにでも……」


「宇宙へどうやって行くんじゃ」


「あぅ……」


 そしてここに来てまさかの、SF展開です。おかしいな……宇宙とか僕達考えていなかったのに。何でこんな事に?


「そもそもじゃ、椿よ。太陽へ行くなど、我々妖怪でも不可能じゃ」


「太陽に住む妖怪って、中国にいませんでしたっけ?」


『…………』


 全員一斉に黙らないで下さい。


 どっちにしてもその妖怪も、空亡に飲み込まれていると思います。手先になっちゃってるだろうね。


「椿ちゃん……神通力でどうにか出来ないの?」


「里子ちゃん。例え万能とはいえ、使う側の体に限界があれば、出来ることは限られてくるんだよ。そもそも太陽までどれだけの距離があるの? そこまで僕の体力と妖気が持ちません」


「うむむむ……手詰まりか……」


 宇宙船なんて出来っこない。僕の神通力でも駄目なら、陰陽術なんてもっての外。咲妃ちゃん達は部屋の端っこで小さくなっています。


 自分達が油断せずに守っていれば、こんな事にはならなかったのに……なんて言いたそうな顔をしていますね。

 結局、あの最強陰陽師と呼ばれた4人も、空亡が力を取り戻し、あんな城を作って立ち去った瞬間、土塊(つちくれ)になって崩れてしまいました。


 体はとっくに空亡に弄られていたようです。そして用済みになって捨てられた。1番哀れです。


 それにしても、どうしたらいいのでしょう。


「伸びてる雷獣を叩き起こして、昔持っていたあの最強兵器のお城でも作らせる?」


「美亜ちゃん。それで大気圏が突破出来ますか?」


「精度によっては……って、難しいかしらね……」


「ここは自分が忍術でびゅーんと!」


「楓ちゃんは黙ってて」


「ぶぎゅる……!」


 皆各々意見は出しているけれど、あまり良い案が出て来ません。

 楓ちゃんは論外なので、僕の尻尾で押さえつけておきます。その後モフモフされそうだけど、そうなったら影の妖術で押さえておきます。


「より暗くなる一方ね……」


 作戦会議をする僕達を見ながら、雪ちゃんがそう言います。

 確かに、話し合えば話し合うほど暗くなっていきますよ。どうしようもないってやつです。


 だけどその時、暗くなっている僕達にとっては耳障りな音が聞こえてきます。ギターをかき鳴らす音、これはまさか……!


「ヘーイ!! アウトロー!!!! 辛気くさい顔して、どうしたらばっ!!」


 今そんな気分じゃないんですよね、飯綱さん。

 演奏しながら僕達のいる部屋に侵入してこようとしたから、思い切り扉を閉めて上げました。外で思い切りぶつかった音と、情けない声が聞こえたけど、気にしない気にしない。


「いたたた……分かった分かった。騒がない騒がない。それより良いのか? あんた達にとっては朗報でもあるんだぞ? 空亡と対峙する方法があるかも知れないんだ」


『何だって!!!!』


 だけど、真っ赤になった鼻を手で押さえながら、閉められた扉を開け、飯綱さんがそう言ってきました。

 もちろん、飯綱さんの言葉に皆は驚き、一斉にそっちに顔を向けて食いついています。僕だって同じだけどね。


 飯綱さんは、たまにとんでもない情報を持ってくるけれど、いったいそれはどこから持ってきているんでしょう。

 気になる……けれど、今は空亡を倒せる方法を探さないといけないから、飯綱さんの事は後です。


「続く震災で、世界中が、人類が疲弊していき、滅びるかも知れない。そんな中、ある存在が動き出したんだぜ」


「何ですか……それは。神様、とかですか?」


「ある意味それに近いかもな~そもそも、空亡が戦おうとしている存在も、人類を助けようとしている存在も、人間やら私達からしたら、同じような分類かも知れないね」


 焦れったいですね。いったいそれは何なんですか? いや、何だか嫌な予感はします。

 空亡は確かに、何かと戦おうとしていました。それは、僕達の住む星を犠牲にしてまでしないと、勝てない相手なのかも知れない。


 そう考えると、答えは1つしか出て来ないんだってば。


「飯綱さん。まさか、宇宙人なんて言わないで下さいね?」


「ん~惜しい! 五次元生命体だ!」


「もっと分からない!!」


 ファンタジー吹っ飛んでSFだよ、これ! いったい何を考えているんですか、飯綱さんは。


「飯綱さん、ちょっと真面目に……」


「良いや、大真面目さ。地球を悪い奴等から守っている存在がいるのさ」


『…………』


 飯綱さんが本当に真剣な顔をしています。嘘でしょう……本当にそんなのが居て……。

 皆も言葉を失って呆然としちゃってます。無理ないですよ。僕だって、思考が付いてこないですから。


「飯綱さん飯綱さん……とりあえず頭大丈夫ですか?」


「アウトロー!! 大丈夫に決まっているだろう! 私は常に、非常識を突き詰めるのさ! そして見つけた究極のアウトロー!! それこそこの星以外の生命体との接触!」


 どうしよう……飯綱さんが危ない妖怪さんになってきました。どこか変な宗教か、オカルト集団にでも毒されたんでしょうか?


「え~い! 説明するよりも見て納得するんだ! カモン! アクトゥリアン!!」


「はい、こんにちは」


『何かいる~!!!!!!』


 僕達の背後に、青くて細いグレイ型宇宙人に似た人が居たぁぁあ!! 本当に宇宙人ですか?! 居たんだ! 本当に!


 もう皆ビックリして、一斉に叫び声を上げてしまったよ。

 そして、突然のその存在の登場で、皆部屋の端まで飛び退いてしまいました。


「あぁ、すいません。驚かせるつもりはなかったのですが。多分どんな登場をしても驚くと思いまして」


 そりゃね、細長い有名な宇宙人の姿だし、真っ青だし。だけど、目は人の目に近いような、グレイ型宇宙人の大きな目に似ているから、そうでもないような……そんな微妙な所なんですよね。

 それと額には、良く分からないおかしな輝き方をするサークレットを付けていて、指は3本だけ。


 服装も、僕達では分からない素材で作られているのか、変に鮮やかな色を……していると思ったらいきなりくすんだ色になっているし、なんですかその服は……。


「どうだ? 信じただろ?」


「いや、というか飯綱よ、お主はなんてものを招待しとるんじゃ! それとこれと、どう空亡と関係して……!」


「それですが、あの太陽を変貌させた妖怪……ですか? あの生命体は、どうやら我々が厄介視している、ある敵対勢力の五次元生命体に、戦いを挑もうとしているようです」


『敵対勢力?!』


 その宇宙人の言葉に、皆が口を揃えてそう言います。


 そもそもこの展開は僕も予想外だったから、思考が追い着いていません。


 いったいこれからどうなるんでしょう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ