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傍観者が綴るささやかな非日常

※この文章は小説と呼ぶには程遠く、高校時代に筆者達が体験したことを脚色しながら書き綴ったものである。




11月1日 13時13分

ゴールした瞬間、沢山のフラッシュが目に飛び込んできた。

県高校駅伝の7区5.0km。タスキをもらってただひたすら、逃げて、逃げて、いつ追いつかれるのかというプレッシャー。ようやく解放されたことによる安堵。そして、チームメイトにもみくちゃにされる。それが夢にまで見た都大路への切符を手に入れた瞬間だった。




10月31日 10時すぎ 

よく晴れた日だった。この時期にしてはやや暑いくらいの天気で、ジャージの上は着なくてもいいくらいだ。

自分たち付添と駅伝メンバーを含めた男女20名は公休をもらって試合会場入りしている。

明日行われる神奈川県高校駅伝に向けて最後の調整だ。

ここまできたら選手のやることはコンディションを維持すべく軽めのjogと流しと呼ばれる8割程度の力での短距離ダッシュだ。丹沢湖の周回コースに設置された各コースに選手と付添がそれぞれ2名ずつ散っていて、選手は明日のイメージをしながら、我々付添は選手が極度に緊張しないよう話しかけたり、横で一緒に走りながら選手のフォームや足音で調子を見ている。私は2区3kmを走る同級生の牛田の付添だ。

高校3年間、常にレギュラーで走ってきた牛田が、一度も選手にかすりもしなかった私を付添に選んでくれたことにとても感謝している。


「なぁ、牛田、今朝の新聞読んだ?翔陽、盤石の10連覇へ、だってさ。」

「読んだ。まぁ、下馬評じゃ仕方ない。明日が楽しみだな。」


高校駅伝では7人の選手が走るため、各チームの上位7名の5000m平均タイムが強さの目安となる。

前年2位の我々玉川は15分15秒切るくらいのタイム。これはスポーツ推薦のない県立高校にしては驚くべきほど速いのだが、当時その実感はない。


地元新聞での予想は以下の通りだ。

『1位藤沢翔陽(14分45秒)現在9連覇。10連覇はほぼ間違いなく、関東・全国での活躍を期待。

2位は前年3位の法制第二(14分55秒)と光洋(14分58秒)と鎌倉総合(14分58秒)の争い。法制は14分台の高木、岡松、渡、岡本に15分一桁の川野、松本、田端と粒ぞろい。光洋は県総体5000で1位2位の武蔵と豊平を軸に15分10秒前後の選手がそろう。鎌倉総合は昨年の県高校総体優勝の川田(14分30秒)がエントリーしていないが、それでも14分40秒台の多田と平を中心に14分台後半から15分前半で7人そろえている。ここまでが2~4位争い。

6位までの関東大会出場ラインには4校が争う。

まずは14分30秒台の澤田を擁する横浜学院。彼以外にも15分前半の選手がそろう。

昨年2位の玉川はエース矢沢の穴を埋めきれず。6位争いが妥当。とはいえ14分台に突入した伊佐と藤原を軸に4位も狙えるか。

14分40秒の杉山が引っ張る湘北は1区で流れに乗れるかがカギ。前年8位の東山大相模原は前年のメンバーが多く残っている。

優勝は藤沢翔陽が盤石。選手層で頭一つ抜けている。2位~6位までの関東大会をかけた争いが見どころだ。』


「こんなに長い文章でよくもまぁ好きかって書いてくれるよな。」

「トラックのタイムしか見てなければ、妥当だろう。でも、勝つのは俺らだ」


その言葉に私は不安や疑問は抱かなかった。そう。周りがどんなに馬鹿にしようと、明日のレースで勝つのは俺らだ。そう思うと、自分が走るわけではないのに、心臓の鼓動が速くなった。

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