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僕はずっと何かを求めて。

作者: 久川梓紗

「私の大切な…」の前編です。

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 何かを求めていた。



 ずっと、何かを。




 それが何かは分からない。




 けれど、何かを求めてはいたんだ。




 それが何かは分からないけれど。




 興味も薄くて、特に執着心もない。





 そんな僕は何かを探していた。





 けれど、何十年生きた今でもそれは分からない。




 日々がとてもつまらなかった。





 景色がすべてモノクロだ。





 白と黒の世界。





 それしか分からない。





 他の色なんて見たことがない。





 僕の名前を呼ぶ人はどんな色をしてるのだろう。




 君が今見ている景色は美しい?




 僕はそうは思えないけど…。






 それでも君は僕に向かって「綺麗だね。」と微笑んで言った。





 だから、僕は頷く。






 その景色が美しいかなんて分からない。




 ただ、僕に微笑んでいる君は美しかった。





 白色に輝く光に照らされてモノクロの世界の中でも輝いていた。





 こんな毎日が続けば幸せだろうな。と夢をみていた。




 願っていたんだと思う。










 ___それでも死は突然に訪れる。










 君の声が聞こえなくなった。




 昔の君が僕の頭の中で動くだけだった。






 それから、___ピクリとも動けないかの様に。










「今日から君はハリーだ!」




 君が僕に元気な声で名前をつけた。




 僕が返事をしたら君は嬉しそうに笑った。




 それから何年君のそばにいれたのだろう。




 君にとっては数年でも、僕にとっては数十年のことになる。


 




 楽しかった。幸せだった。









 それが、僕の前世の記憶。















「初めまして。夏川(なつかわ)先生」





 僕が君と出会ったのは、あれから何年後だったのだろう。




 君は昔からの夢を叶えて、学校の先生になったね。




 嬉しいよ。




 僕が、ハリーだって分かるかな?





 …わかるはず無いよね。





 ___気づいてくれたら僕は言葉にならないほど嬉しくて、感激するだろう。




 けど、気づいてもらえなくてもいいかな。




 僕が君にであってやっと、求めていたのが分かった気がした。






 __僕が産まれてから探し求めていたものは…






 君だったんだ。






 前世からの記憶なんて本当はないのかもしれない。





 自分が君の飼っていたペットだったなんて自分の妄想なのかもしれない。





 けれど、君を始めて見たとき、ずっと深くに沈んでいたののが突然僕の目の前に洗われたんだ。






 ずっと夢をみていたんだ。






 君と同じ景色を見ることを。






 同じ配色をされた世界を見ることを。







 君と同じ言葉で話せることを。










「おめでとう。夏川…石井(いしい)先生。」





 君が白いドレスを着て、輝いている姿を見るのは辛かった。





 僕が君の愛人になりたかった。





 それでも君が僕に向けて「ありがとう。」って照れ臭そうに笑顔で言ったものだから…。




 そんなことを言えるはずもなくて。






「君がもっと大人だったら……」






 君がポツリと小さく言った言葉が僕の耳に聞こえた。






 君の顔が何とも言えない顔だったから、馬鹿な僕は君に抱きついた。







 君は驚いて、今の僕の名前を呼んだ。






 君の身体は大人になっていた。






 立派な女性だった。





 僕の肩にすんなりと収まって、君が歳下みたいだった。





 ___ずっと離したくない。








 そう思った。






「ハリーは元気だよ。」






 君の耳元で囁いた。




「え?」




 君は僕のことを見上げてキョトンとした顔でみてきた。









 ダメだよ。








 そんな顔で、男をみちゃ。









 ダメだよ……。








 僕は君の頭を撫でて君から離れた。





 君は僕の名前を呼んだけど、僕は無視することにした。






 今、君に答えてしまったらもう我慢ができないから。





 __おめでとう。先生。





 _____幸せになって。(みどり)









 誰かさんに会うまでの十五年間探し求めていたものは前世の記憶。






 君の幸せ。






 そう思いたい。






 舌に塩っぱさを感じる。






 あぁ…また探し求める日々がくる。






 でも…もう、探し求めても答えは見つからない。





 だってもう、何もできないから。





 僕はまだ何かにとりつかれた様に生きていく。





 君のことは忘れることは無いだろう。






 …幸せを。














『と言うことでハリー!私は“夏川(なつかわ) (みどり)よろしくね!』






 僕の目の前で無邪気に笑うモノクロの子供のだった君は、薄いピンクのレースをふんだんに使った華やかな白い衣装を着て、僕のしらない男性と嬉しそうに腕を組んで教会を歩く女性になっていた。




 ___でもその時の君の姿を見えたのは一瞬で、あとは光と水で…何も見えなった。

閲覧ありがとうございます。

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