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06

 あれから南に行くか、西に行くか考えた末、川があるだろうと思う西に行く事にした。ただ単に川があれば、人が住んでる場所があるのでは?と思ったからだ。生活するのに、水が必要なのは身をもって経験したのでね。これで今後の方針が決まった。


「さて、どうするかな?進むか、帰るか」


 洗濯した服を乾かすのに、かなりの時間を使ってしまったのだ。太陽を見るともう夕方だ、あと数時間で夜が来るだろう。


「夜営はできないから一旦、結界に帰るか」


 途中で使えそうな草を刈りつつ帰る事にした。





 あれからすぐ帰って来て、木のフォークを骨のダガーで削って、棒状にして端に浅い穴を作った木の皿と真ん中に浅い穴を作った木の皿を用意した。次に弓の弦を切り、棒に巻きつけて、また弓に結び直す。


「これで準備OKだ。よし、やるぞ!!ウオォォォリィヤァァァァーーーーー」


 帰る時に刈ってきた草と削った時にできた木屑の上に、端に穴を作った木の皿を置き、足で踏み固定する。次に穴に棒をあてがい、もう一つの木の皿で棒の上を押さえる。そして弓を前後に激しくストロークする。


「おっおっ、煙が出てきた。まーだまだー」


 煙がどんどん出てきて火種ができ、下の草と木屑に燃え移った。その上に草と木のフォーク・スプーンなどを製作して置いていき、火が大きくなり焚き火を作った。これは数種類ある火起こしの中の弓切り式火起こし方法だ。前にテレビの番組で先住民がやっていた色々な火越し方法を見て憶えていた。手でするより簡単みたいなのでおすすめだ。


 なんでいまさら火を起こしたかと言うと、これからは夜営をしなくてはならない事に気が付いたのだ。今まで必要性を感じなかったから忘れていた。食事も神樹しんじゅ の実があり気候も寒くもないし暗くなったらすぐ寝てた。それに結界に居たら、魔物の心配もないので、火を起こさなかった。


 だが、ここを出て行けば、獣を狩って飯にする時も夜営時の周囲の警戒の為にも火は必要だと思ったから火を起こす練習をしたのだ。


 それと、鍛冶魔法の新たな事を発見した。弓切り式火起こし器を製作しようと思っても製作できなかった。それに木の棒・弦ってのも無理だった。なんで弓切り式火起こし器が製作できなかったのか分からないが、素材そのものとか、物の一部分を製作することは無理のようだ。これは他の物でも確かめたから確定だ。





 火の準備が出来たので、夜営練習の続きを始める。次は飯の用意をする為、獣を狩ろうと思うが、ここで生活を始めてから獣なんて見たことが無い。


「やっぱあれかな~グラシーラットかな・・・・・ネズミかぁ」


 ここから出て行った後の為とはいえ、ネズミを食べるのには躊躇する。でも生き抜く為にはと焚き火の周りをグルグル歩き葛藤する。


「はぁ~狩るか」


 石の実を放り投げグラシーラットが来るの待つ。





 あの後、運悪く、いやいや、運良くすぐにグラシーラットを狩れ、目の前には血抜きをした1匹のグラシーラットが横たわっている。


「・・・・・ネズミ、いや獣なんて捌いた事ないぞ。どう捌くんだ?魚と一緒か?」


 えーっと漫画で鳥を捌いてた時は羽を毟って、て読んだ事あるな。ネズミの場合は毛を毟るのか。って毟るのすんごいめんどくさいですけど、中々毟り取れないしよ。


「あぁ!!焚き火の中に放り込んで、丸焼きでいいじゃん」


 さっそく放り込もうとしたけど、内蔵を取ってない事に思い出し、腹を切り開く。中を見た瞬間


「オエェェェェェェ」


 盛大に吐いた。


 これまで魔物を何匹も殺してきたから、肉を切る感触とか血の匂いは慣れたけど、どの戦闘も内臓が出るような殺し方はしていない。初めて生で内臓を見た。大丈夫と思ってたけど、大丈夫じゃなかったようだ。


 えずきながら、内臓をどうにか取り出し、焚き火の中に放り込んだ。焼けるまでに地面に掘った穴に内臓を捨て、血が付着した場所に土を被せた。革の水筒を取り出し手を洗い、喉を潤した。


 しばらく経つと肉の焼ける良い匂いが辺りに充満してきた。


「久しぶりの肉の匂い。美味そうだ」


 そろそろ焼きあがってるだろうと、ネズミの丸焼きを大皿に乗せた。


「・・・・・グロい。ネズミの焼死体だよこれ」


 次、獣で料理する時は原型を残さないようにしようと誓った。


「さて、試食か。美味そうな匂いはするが、ネズミなんだよなー」


 葛藤の末、食べる事に決めたのだが、ネズミの姿焼きを見て食べる気持ちが萎えていく。だが、今後の為と気持ちを奮い立たせ意を決して食べてみる。


「いただきます」


 骨のダガーで背の部分の皮を切り、肉を切り分け、一口食べてみた。


「ん・・・・中々、いやこれは美味い!!」


 鶏肉を食べてる感じだ。さっきまで「ネズミだよなー」とか言ってたのに、ガツガツ食べ久しぶりの肉を味わう。


 肉を食べながら、今やった夜営練習の問題点を考える。さっき思った通り、獣の姿焼きは作らない、萎える。それと、この肉の素晴らしい匂いに釣られて、ゴブリン共がギャーギャー、ギャーギャー喚いて結界を棍棒で叩いてる。飯を作る時は要警戒だな。警戒といえば寝てる時だ。俺は1人だから寝てる時、魔物が近づいて来ても対処ができない。これの対策をどうにかしないとな。後は・・・・・実際に夜営した時に考えよう。


 肉を食べ終えた後、煩いゴブリン共を弓で一掃し、ベッドで横になりながら手元にある1センチ程の無色透明な六角柱の物を見る。


「これは、やっぱりあれか?」


 グラシーラットの内臓を取り除いてる時、心臓の近くから出てきたのだ。これは漫画・小説でよく見る魔石って物ではないだろうか?そうだとすれば、金になる可能性もある。今まで知らなかったから、すべて捨てていたけど、今度からはちゃんと確保しようと思い、気づく。


「これってゴブリンの中にもあるのか?」


 さっき一掃したゴブリンを見ながら思うのだ。もしあるのなら、取るのか?獣で吐いたのに、人型の解体なんて出来るのか?と、だが


「・・・・・全て解体する必要はないじゃん。心臓の所だけパッと切り開いて、パッと魔石を取ったら、いいだけじゃん」


 と、骨のダガーを片手にゴブリンの死体へと近づき、心臓近くの胸を切り開いた。


「ウッ・・・・・オエェェェェェ」


 またも盛大に、さっき食べた物を吐き出した。涙ながら、探すとグラシーラットと同じ物が手に入った。


「これも慣れるのだろうか・・・・・ウッ」






 あれから日が完全に暮れた。今までなら、もう寝てた時間だが、今日は焚き火があるので起きている。パチパチと火が弾ける音を聞きながら、明日からの探索を考え準備する。


 今日は石の実を周囲に撒きながら進んだが、あれぐらいの魔物なら問題なく倒せる強さになったし、イノシシの大きさならすぐ見つけれるから、迂回する事も可能だ。夜営の時だが、石の実を四方に放り投げ、寝る近辺に食器類を散乱させとけば、近づいて来ても音がなり、ある程度は魔物対策になるのではないかと思う。


 それと念の為に防具を装備する事にした。鎧の形状をイメージして製作する。出来たのは、革の胸当てと革の手袋だ。動きを阻害されないように胸当てを、武器が滑らないように手袋を製作した。それから必要な物をバッグに入れ、準備が終わりしだいベッドで横になり早々と眠りについた。

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