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03

 今日は昨日と違い煩くない清々しい朝だ。昨日の起こされ方は酷かったからな。それに身体もあまり痛くない、ベッド最強だ。テントを開けて外を見るとまだ日の出前のようで、時間を見る為にスマホを取り出し電源を押すが反応がない。


「あぁ、ついに充電切れか、これで時間の確認もできなくなってしまったな。もう、使えないけど捨てるのもなんだし地球の思い出として持ってるか」


 日本に居た時は四六時中スマホを触ってるスマホ依存症だったのに、異世界に来てからほとんど触ってなかったんだよな。異世界生活が楽しくてヒマじゃないのかもしれない。スマホ依存症を治したかったら異世界へだな。





 朝食をとりながら昨日考えた最大MP増加方法が正しのか確認する。もし正しいのなら張りきって意識を失っちゃおう。


 ユウト・カミシロ 17歳 男 人間


     HP   17/17

     MP   45/45

     筋力  18

     耐久力 16

     器用さ 17

     俊敏性 17


     スキル 鍛冶の目利き 弓LV1

     魔法  鍛冶魔法Lv1


「・・・・・増えてないわ~。わざわざ気持ち悪い思いまでして意識失ったのに最大MPを増やす方法では無かったのか」


 確かにこんな方法で最大MP増やせるなら、この世界の人達はおそろしいほどのMP持ってることになる。そんな都合がいい事があるわけない、浅はかな考えだった。


 気を落としながらも恒例の魔物狩りをする為、テントから出て周りを見渡すがどこにもいない。この2日間で思っていた事がある、あまり魔物がいないのでは?と。確かに10匹以上のグラシーラットが現れたこともあるが、遭遇率でいえばこの2日間では数えるぐらしか魔物と戦闘をしてないのだ。


 それに神様はDランクまでの魔物が出るから危ないと言ってただけで、いっぱい魔物が出るから危ないとは言ってないのだ。そして魔物は3種類しか見ていない。それから察するにたぶんイノシシがDランクでグラシーラットとゴブリンは雑魚だ。


 魔物との遭遇率が低くイノシシにさえ気をつければが大量に現れても、あの足の速さなら逃げれる。ちょっとぐらいここから出て探索しても大丈夫なんじゃないかとそんな都合の良い考えが頭をよぎる。


 思い立ったが吉日だ。いつまでも受身じゃ強くなれない、強くなる為ちょっと探索をする事にしてみる。ここからそんなに離れなかったら大丈夫だろと、革のバッグを製作して神樹しんじゅ の実を放り込み、弓を装備して使ったMPを回復させる。


「これで準備万端だ!!よし、行ってみるか」


 南に森があるので、そっちに行ってみようと思う。結界の境界線まで来て、周囲を見るがイノシシの影はない。そして俺は意気揚々結界から足を踏みだした。





 あれからまっすぐに50メートル程進んで結界の外を探索をしてみたが、一切、魔物と出会わなかった。このまま先へ進もうかと考えるが、この先から草むらの背丈が腰ぐらいまで高くなっていて見通しが悪く魔物の発見が遅くなる。進むか戻るか考えた結果、今まで何も無かったし慎重に進めば大丈夫だろって考えて進む事にした。ある程度、草を掻き分けながら進んだ時、横から棍棒が振り下ろされた。


「いっつぅ」


 反射的に左腕で防いでしまって、かなり痛い。見ると2匹のゴブリンが手に持った棍棒を振り下ろしていた。どこから現れた?隠れて待ち伏せしていたのか?急いで距離をとる為にもと来たほうへ走る。後ろを確認するが追いかけて来ていない?ゴブリン共はその場で奇声をあげながら地面を叩いて威嚇していた。


 追いかけて来ないのだったらと、俺はその場で反転し弓を構えようとするが腕に痛みが走り弓を落としそうになる。その時、背後から走る音が聞こえてきた。


「ぐぁぁぁぁぁぁ」


 振り向く前に鋭い痛みを後頭部に受けてよろけてしまった。背後にもゴブリンが隠れていて二段構えで待ち伏せされていたのだ。追いかけて来なかったのは俺の足を止める為か。顔をあげるとゴブリン2匹もこちらに向かって走って来ている、このままではまずい逃げなければ囲まれる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 2匹が到着するまえに振り返り大声をあげ弓を振り回す、その行動でゴブリンがたじろいだ瞬間、全力で結界に向かって走った。急いでバッグから神樹しんじゅ の実を取りだすが、神樹しんじゅ の実は石のようになっていて食べれそうでなかった。バッグの中身を確認すると他の実も石のように変化していた。


「はっはっはっ・・・・・っ、うそだろっ、なんで石みたいになってんだよぉーーー」


 後ろを見みると先頭に1匹、離れて2匹のゴブリンが追いかけて来ている。やばい足がだいぶキている、このままだと追いつかれて殺される。走りながら弓矢や石のようになった実、バッグを次々と後ろに放り投げる。


 喚き散らしてる声を聞き、威力はないが鬱陶しく邪魔になったんだろうと思う。ちょっとでも距離がひらいただろうと思い必死に走り続け、結界までもう少しの所まで来た。


「あっ」


 逃げ切ったと思ったが後頭部のダメージでとうとう足がキて、こけてしまった。急いで結界内に逃げ込もうとするが先頭を走っていたゴブリンに片足を捕まえられてしまった。


「くそ、放せ、放せえぇぇ」


 もう一方の足で蹴って蹴って蹴りまくる。それでもゴブリンは放そうとしない、残りのゴブリン2匹も、もう目の前まで迫ってる。このままじゃ殺られる!!


「くそがあぁぁぁーーー」


 俺は無意識に右腕をゴブリンに突き出した。


 手には肉を貫く感触を味わい、ゴブリンの悲鳴が響くと同時に足を拘束する力が解かれ這いずって結界内に逃げ込んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、たす、かった。っ、な、んだ最後の、あ、れは?」


 結界の外を見ると胸から骨の槍が生えているゴブリンが倒れている。他の2匹はすでに背を向け走り去っていた。気になる事はあるが今は治療が先だ。後頭部からは血が流れ左腕は腫れているのだ。ふらつく足でどうにか起きあがり、神樹しんじゅ の実を採りに行く。


 神樹しんじゅ の実のおかげで完璧に傷が回復するが気持ちは晴れない。今までは一方的に倒してたから、それを実力だと思って行動した。それがどうだ、守られた場所から外に出た瞬間に雑魚だと思っていたゴブリンで死にかけ命からがら逃げのびたのだ。勘違いもはなはだしい。俺はこの異世界をゲームみたいな感覚で楽に捉えていたのかもしれない。ここはリアルだ、日本より確実に死が近いリアルな世界なんだ。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー」


 情けなくて、悔しくて、怖くて、生きてる事が嬉しくて、涙を流し色んな感情を空に向かって叫んだ。





 あれから心が落ち着いてマシになった。叫んだ、おかげかな?俺はあの死にかけた一戦で、より一層強くならなければと思った。ステータスをあげる事もそうだが別の事もあると思い知った。一つ、知識が足りない。弱点・行動など魔物について知らないのだ。ゴブリンが二段構えで待ち伏せする知恵があるなんて思ってもいなかったし。それに神樹しんじゅ の実の事もそうだ、石みたいになる事もだ。知らない事が多すぎる。


「でも、これは教えてくれる人いないしな、自分で調べるしかないのか」


 二つ、近接戦闘を出来るようになる事。あの時、近接戦が出来ていたら違っていたかもしれない。三つ、俺は鍛冶魔法を使いこなしてない。まだまだ鍛冶魔法は色々できると思うのだ。あの最後、俺は槍でゴブリンを突き刺した。でも詠唱はしていなかった。その前に槍をイメージすらしていなかったのだ。これから色々確認しなきゃならない事がたくさんあるが、俺はもっともっと強くなれると思った。

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