02
「ギャギャギャア」
ん、何か声が聞こえる。
「ギャッギャアギャッギャア」
何だ?何だ?声と一緒に叩く音まで聞こえるぞ。あまりの煩さに目覚め音の方見ると、不細工なツラで身長1メートルちょい、体色が緑色の奴らが5匹居た。どうやらその手に持った棍棒で神樹の結界を叩いてる音のようだ。
「ん!?こいつは・・・・・ゴブリンか?」
急いで神樹に立てかけてた弓を取ろうと手を伸ばすが、その手は弓を掴めなかった。なんで掴めなかったのかと立てかけていた所を見ると。
「えっ!!弓が無い。・・・・・矢も矢筒ごと無くなってる」
寝る前にちゃんと神樹に立てかけていたはずだ。それが無くなるなんて。魔物は結界があるから入ってくる事は無理だ、だったら人間か?でもこんな危険な場所にそれも夜に来るか?それとも俺が寝つくまで待っていたのか?木の弓矢を盗る為に・・・・・ありえないよな。それに盗賊とかなら俺の命まで盗って行きそうだし、なんで無くなったのか訳がわからん。謎すぎる。
いくら考えても分からないので、放置プレイ中のゴブリンの相手をしてやる。
『クレアシオン』
左手の中に短弓が背中には矢筒が製作され、その時[木の矢から骨の矢へ変更し製作します]と表示されたので矢筒から矢を取り出し見ると、鏃が木から骨に変わっていた。
「おぉ、これが鍛冶の目利きの効果か。便利すぎだ」
弓に矢をつがえて、引き絞り狙いをつける。
「さて、この新たな矢の威力、思い知るがいい」
嬉しさのあまりテンションが上がり恥ずかしい台詞を叫びつつ、矢を放った。放たれた矢は寸分の狂いもなくゴブリンの目を貫き脳まで到達する。射られたゴブリンは痙攣を起こし大地に崩れ落ち横たわった。
それを目の前で見ていたゴブリン達は奇声をあげ、ますます結界を叩きつける。
「あぁー煩い煩い」
すぐに次のゴブリンへと矢を放つが胸へと刺さりまだ息がある、すぐさま2射目を放ち2匹目の命を奪った。それを見た残りのゴブリン達は慌てて逃げて行った。
朝一の戦いが終わりステータスを見てみるが変化は無かった。
「2匹倒した程度じゃ強くならないか」
そんな事を口ずさみながら弓を背負い、ゴブリンの死体に近づき視てみるが、素材として使えないみたいで何も起きなかった。
ポケットからスマホを取り出し時間を見るとまだ6時すぎだった。昨日は気づかなかったが、この世界は地球と時間軸がよく似てるのかもしれないと朝日を見ながら思う。
早めの朝食を取りながらずっと思っていた事がある、現代の日本から来た自分にとって地面の上で直に寝るってのがここまで辛いって思てなかった。そう、起きた時から身体中が痛いのだ。だったら、改善すればいい。俺には素晴らしい力が有るんだから。
『クレアシオン』
詠唱を終えると目の前には俺の力の結晶が製作された。
「フフ、フッハッハッハッハッハッ」
やばい今日は朝から変にテンション上がりっぱなしだ。だってしょうがないだろ?目の前に目の前にベッドがあるんだからなあぁぁぁ。鍛冶魔法の[武器・防具・その他を製作できる]って説明を見た時、もしかしてと思ってたんだよ。まさかここまで万能魔法だとはな、異世界人もびっくりだろ?ベッド使って夜営してるなんてな。フッハッハッハ・・・・・っとスマン。我にかえるよ。
さてベッドの寝心地はっと、
「・・・・・硬い、地面ほどじゃないが硬い」
Gランク素材で製作したベッドだもん、しょうがないよね。うん、あるだけマシだよね。ちゃんと睡眠の快適さは確保できたしね。快適さならこれも製作しようと詠唱する。
『クレアシオン』
ん?何も起こらない。LVが足りなかった時にでる表示も出ないって事は製作出来ないってことか?さすがに家はダメだか。じゃ、これなら。
『クレアシオン』
次は発動したようで、中々広い革製のテントが製作された。
「おぉーテントは製作出来るみたいだ。道具なら製作されるって事なのかな?まだまだ鍛冶魔法の事わかんないな、色々調べてみないと」
満足と言わないがベッドができ雨風をしのげるテントが確保できたのだ、後は強くなる事だ。ちょっと身体が重いがテントから出て魔物を探す。すぐに居た、14匹のグラシーラットが朝一で倒したゴブリンの死体に群がって食べている。それに狙いを定め、時間をかけずに淡々と仕留めた。
「グラシーラットぐらいなら、もう余裕だな」
グラシーラットの素材はもう確保してるから用は無い。それにさっきから身体がだるくちょっと辛い、やっぱり休憩するかと振り返ると愕然とした。
「えっ無い!!ベッドもテントも無い」
そう、昨日の弓と同様にさっき製作したベッドとテントが綺麗に消えていたのだ。何が起こったのか分からず周囲を見る。盗られたとしても、あの短時間でどうやって持って行ったんだ?戦闘時間なんてせいぜい5分以内だぞ。
「あ!!」
まさかラノベでよくある異次元収納系の魔法かアイテムで収納して盗って行ったのか?でも、それなら近づかないと収納できないよな?人が来た気配なんかなかったし。ほんと、どうなてるんだ。
「人の魂の力作を奪っていきやがって、絶対に犯人見つけてやる」
とりあえず、休憩する為にベッドを作ろう。慣れない異世界生活で疲れてるのかな?
『クレアシオン』
詠唱をした瞬間、激しいめまいが起こり身体の力が抜けていく。
「っ!!わす、れ、て・・・・・」
ベッドが製先されてるの薄れゆく意識の中で見ながら、崩れ落ちた。
「んっ、んん、うん???なんだ?なんで地面で寝て・・・・・あっ、そうだ魔法を使った時、意識を失って倒れたんだ」
俺はどれだけ意識を失ってたのか確認する為、スマホを取り出し時間を見る。
「今は13時すぎだから、だいたい5,6時間は倒れてたのか」
MP使い切ったら意識が失うから注意しろって神様に言われてたのに、あまりにも鍛冶魔法が便利だからついつい忘れてた。次からは気をつけないとな。身体の状態を確認する為にステータスを見る。
ユウト・カミシロ 17歳 男 人間
HP 17/17
MP 5/45(+5)
筋力 18
耐久力 16
器用さ 17
俊敏性 17
スキル 鍛冶の目利き 弓LV1
魔法 鍛冶魔法Lv1
「あっ最大MPが増えてる。」
それにしてもすっごい身体がだるい。これはMPが少なくなったら出る症状かも、3回目の魔法を唱えた後もだるかったし。
「それに悪い事ばかりじゃなかった。最大MPが増える条件はもしかして、全部MP使い切ったら増えるかもしれない。寝る前に試してみるか」
昼食とMPを回復する為、神樹の実を食べる。やっぱりそうだMPが回復したら身体のだるさも無くなった。
「これで犯人探しが出来る!!倒れたのは盗まれた物を製作する為に魔法を使ったからだ、全て盗人のせいだ。絶対ゆるすまじ」
忘れてた事を棚にあげ犯人確保に燃え上がる。結界の端にテントを製作し木の陰から、張り込みをする。そして3、4分ぐらい過ぎた時、またまた愕然とした。
「・・・・・消えた」
そう、見てるなかで消えたのだ『アグアシオン』を使った時みたいに。もう一度テントを製作して見てみる。そしてまた3、4分ぐらいで消えた。
「・・・・・」
次に弓矢を製作し、地面に置いて観察する。また3、4分後に消えた。MPを回復してからもう一度、同じ事をしてスマホで正確に時間を計ってみた。3分で消えた。
「・・・・・ふむ。」
2つの弓矢を製作1つは自分で持ち、もう1つは地面に置いて観察していると3分後には地面に置いてた弓が消えた。MPを回復してテントを製作し中に入って3分間待ってみるが消えなかった。次にベッドを製作しテントの中に弓を立てかけベッドで横になって待ってみるがこれも消えなかった。テントの外に出て待ってると3分後には全てが消えた。
「なるほど、触って無い物は3分で自動で消えてしまうんだな。そういえば魔物に刺さっていた矢が無くなっていたっけ、いや違うな矢は刺さっていたけど触れてる事になるよな?ってことは俺が触って無い物は自動で消えてしまうって事か?テントは俺が入ってたらテントの中の物は触ってなくても消えないって事だな」
どうやら犯人はいないようだ、いるとしたら俺だろ。自動で消えるなんて知らなかったし、まぁ必要な時に製作しろってことだな。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!消えるって事は俺の夢の計画が水の泡に・・・・・」
俺はこの鍛冶魔法を使った瞬間、閃いたのだ。自分で武器防具製作し、売って稼ぐ元手無しの無限金儲けを。まさかこんな事になるとは、やはりメリットばかりじゃなくデメリットもあるってことか。