勇者はブレなかった
「うにゃにゃ」
あ、よだれ垂れた。ふきふき。
心なしかスッキリした目覚めだ。背中が痛いけど!
私はのびをして、気が付いた。
ここがダイニングだという事に!
そして目の前には仁王立ちの大魔神が!
「ごめんなさい。お母様!!」
私は、母に土下座をした。
まぁ飲みに飲んだものである。ダイニングは相当酒くさくなっていた。
あと、あちらこちらに缶が転がっている。
目の前には日付の変わった後に帰宅したと思われる母。
テーブルには突っ伏したまま寝入っている兄。
そしてダイニングの入り口あたりで剣を抱えたまま座って寝入っている勇者(仮)ブレなく設定に忠実な奴だなぁ~
「どういう事なの?これは?」
母は笑っている。しかし目は氷のようだ。怖い!
「いやー。面目ない」
その後、テーブルに突っ伏したままの兄を部屋まで誘導し、ベットに押し込み、酔ってて寝ぼけてる勇者のコスプレをしている外人を客用布団に押し込んだ。
気が付かなかったけど結構臭うね?何日かお風呂に入ってないみたい。
「ま、夜更かしは身体に毒だし明日聞くわ」
そう言い放つ母から解放されたのは、明け方近くになった頃だった。
なんであのタイミングで目が醒めたし!?
間の悪さを恨むが、母には逆らえない。
こうして危機感の薄い母娘は、少ないであろう睡眠をとるべくそれぞれの寝室へと引き上げていった。
翌朝、驚愕する事になるとは思いもせずに
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「ふにゃにゃにゃ~」
短めの睡眠だったが、いつもの時間に目が醒めた。
ゆうべの事が夢のように思われる。
いやー日頃の鬱憤晴らしまくったわー。
だからかな? 睡眠不足な割にすっきりしてるのは?
爽やかな気分でカーテンを引いて窓を開けた。
そして目に飛び込んできた光景に私は目を剥いた。
「な、何してんのーーーー!!!!」
昨日のコスプレ外人(勇者((仮)))が、あろうことか弓でカルガモ狙ってる!
「やめてー、それ伝助じいちゃんのカルガモ農法のカモだから!!」