勇者本領発揮
レンにとってのこっちの世界という異世界は、優しいばかりじゃなかった。
そんな事、わたし達はわかりすぎている程わかっていたのに、レンを守る事ができない。
勝手の違う常識に、知識に、言葉や態度のニュアンスに、レンは振り回されている。
「嫌だったら、高校、いかなくてもいいよ」
私達の言葉にレンは首を横に振った。
「まだやれる事があるはずだから」
そうだった。彼はあっちの世界で「魔王」という最上級の理不尽と戦う勇者だったのだ。
レンは戦う、真摯に真面目に。諦めるという言葉も知らないようだ。
そんな姿を見ているうちに、わたし達にも変化が訪れた。
「俺、引きこもりをやめるよ。もっと世界についてレンに教えてやれるようになりたいんだ」
兄の顔も戦う漢の顔つきになっていた。
「私ももう逃げて終わりにしない、皆が私を見ないなら皆が私を見なくてはならないような気持ちに私がさせる!」
兄は大学院にすすみ海外留学を果たした、私はゲーム会社に就職した。
レンは、学生生活を結局は有意義な物に変えた。
部活で頭角を現し、生徒会に入り、努力とチャレンジ精神で周囲からの目を変えていったのだ。自分の時間を削って後輩の勉強を見たり、皆がやりたがらないような雑事を引き受けたりしていた。なかなかできる事ではない。
私達は頑張るレンを見て、歯を食いしばって努力した。




