Program4 カレン=ソウ、大丈夫、
新しく小説企画をやる事にしました。
気になる方はぜひご参加あれ。
今回はギャグパートがおおいです。
似非なのは気の迷いです。
地下生物兵器研究所・〈マンション〉
そこは研究所内に設立された、生物兵器として造られた少年達の収容施設であり、大量の人造人間が収容されている。
ちなみに全館風呂付きの個室であり、内装も職員用の寮よりいいんじゃないかと噂される程。
その中の一室で、
「ほ〜ら、流すわよ〜」
カレンはそう言って、目の前にいる少年の身体の泡を流し始めた。
頭に、身体に、たっぷり纏わり付いていたそのふわふわを綺麗サッパリ落とされた少年は、まるで濡れた動物ー実際そうなのだがーがやるように、身体を震わして水滴を辺りに飛ばした。
「あぁもう、やめなさい」
カレンは少年にバスタオルを被せ、優しそうな声を発した。
バスタオルの中で少年は動きを止め、髪を拭き始める。
「ちゃんと拭けているんですか?それ?」
そう心配される程優しく、悪く言えば弱々しく。
その後も少年は身体を拭き続け、バスタオルをカレンに手渡す。
「……ん」
「…………」
「…………」
「………拭けてませんね、」
そしてカレンは少年の身体を力強く、悪く言えば乱暴に拭き始めた。
「………痛い」
そんな声も聞こえない位に。
さてと、ご飯にしますか。
そう呟いたカレンは、少年に服を着けさせる。
今日も胸に晒しと呼ばれる包帯のような布を巻き、黒の短パンだけといういつも通りの着こなしで、少年は脱衣所を出た。
そして食事は基本的に食堂で食べるのだが、今回は特別だった。
「ルーチェ、今日はあなたにプレゼントがあります」
ルーチェと呼ばれた少年は『プレゼント』と言う言葉の意味が解らないらしく、白銀の髪を揺らして小首を傾げる。
カレンとルーチェはその足で室内のリビングに入り、カレンはルーチェを椅子に座らせた。
「はい、プレゼントですよ」
そう言ってカレンがテーブルに置いた巨大な発砲スチロールの中身は、
「あなたの好きな、マグロですよ」
「!」
ルーチェの顔は相変わらずの無表情なのだが、瞳だけが尋常じゃない位に輝き出した。
「さあ、好きなだけ食べなさーーー」
カレンの言葉が終わるその前にルーチェはマグロに飛び付き、頭から被り付き始めた。
それを見てカレンは微笑し
「相変わらずお魚が好きなんですね〜」
と呟いてルーチェの頭を撫でた。
+++
ルーチェがマグロを半分食べ尽くした頃、
ドアを叩く音、
ルーチェはその音に反応して動きを止めた。
「あら、来たのですね」
カレンはドアを開き、客を招き入れた。
そこに立っていたのは助手のエドガーだった。
「いらっしゃい。取り敢えず入りなさい」
「あ〜、はい。(〈マンション〉来んの始めてだな〜)」
部屋に入ったエドガーの顔を見て、カレンは顔をしかめ、
「何ニヤついてんですか?」
「え?別にニヤついてなんかー」
「だから裏で『女の敵』って言われてるのですよ?」
「え?俺裏でそんな事言われてんの!?ヒドくねッ!!」
「さて、あなたを呼んだ理由なのですが……」
「スルーですか!?」
漫才をしながらリビングへと歩く二人。
まあ取り敢えず座りなさい。
そう促されたエドガーは、ブツブツ言いながら椅子に腰掛けた。
ルーチェは咄嗟にマグロを抱き寄せ、エドガーを睨みつけ始めた。
「いや盗らねえよ」
その言葉は信じられないようだった。
そして、カレンが何の前触れもなく本題を切り出した。
「あなたにはルーチェの教育係になって頂きます」
突然の話にエドガーは驚き、言葉の意味を理解した瞬間すぐに首を横に振った。
「イヤイヤイヤ教育係って!俺にガキの子守をしろって言ってるんですか!?それなら他当たってくださいよ〜!!俺ガキ苦手なんですからね!!」
とにかく嫌だとオーバーに語るエドガーに、
「それなら仕方ありません」
「え?いいんすか?良かった〜」
それを聞いて心底ホッとした様子のエドガー。
しかしカレンは、
「それでは別の仕事を押し付け……、任せてもよろしいでしょうか?」
とドスの効いた声で問い掛ける。
勿論一瞬で地の底に叩き堕とされたエドガー博士。
しかもエドガーの経験上、こんな声で問い掛けるということは大抵何か裏がある。
ー……な、何を押し付けられるんだ?
エドガーは身構えた。カレンは微笑した。ルーチェはマグロの大トロの部位を食べ始めた。
「あなたには………、
唾を飲む音が響く。
この子の子守をして頂きます」
「……って結局同じじゃねーか!!!」
エドガーはいきなり椅子を蹴倒し、勢いよく自分の上司にケチをつけ始めた。
カレンはそれをなだめるかのように声と言動を和らげて、
「落ち着いて下さい。別にたいして難しい仕事でではありませんよ。……一歩間違えたら死にますけど」
「あんた今何つった!?死んじゃうの下手したら!?イヤだよそんなの!!!」
「大丈夫ですよ、本当に下手しないと死ぬことはありません」
だけど、とまだ反論しようとするエドガー。
それを見てカレンは微笑し、エドガーの頭に手を乗せて、
「大丈夫ですよ、あなたは私の息子なんですから」
と言って頭を撫でた。
その間エドガーは無言で顔を俯かせる。
「やって、くれますか?」
「………はい、」
エドガーはどこか絞り出すような声でそう答えた。
「……ごちそうさま」
ルーチェが指をしゃぶる音が響く。
カレンは満足げに頷き、よろしいと言った。
「それでは、私は新しい仕事が入っているので、後はよろしくお願いします」
「……はい」
「……バイバイ」
手を振るルーチェと拳を握るエドガーに見送られ、カレンは部屋を後にした。
その時のエドガーの呟きは、カレンには届かなかった。
+++
生物兵器研究所・カレンの研究所
「しかし博士、よろしいのですか?」
「何がですか?」
カレンは部下の研究員にそう訊かれ、パソコンにデータを打ち込みながら訊き返す。
中年の研究員は書類を整理しながら、
「エドガー君ですよ。彼だけで、あの『化猫』の相手ができるのでしょうか?」
するとカレンはふっ、と笑みを漏らした。
「大丈夫ですよ、彼なら心配いりません。彼は、私の息子なのですから」
研究員はそれを聞いて微笑み、
「なら、いいんですが」
、と言って作業に戻った。
カレンも作業に戻る。
「また造れますから」
その言葉が研究員の耳に入ることはなかった。
感想、お待ちしてます。