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Pravitas World  作者: 月草
silver---world
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終章(2) 一部の者達が知る結末

『それでどうするかは決まったんだね?』

「ええ……」

 藍は電話の向こうの優しげな声に答える。通話の相手はOASPの百緑だった。

「もう家計も本当にやばくなって来たのよ……まったく……。だから収入のいいそっちの仕事に戻るしかないのよ、やっぱり」

『君は、三人もの子供を高校生になるまで母親の代わりをしてきたわけだからしょうがないさ。それにこれからはもう一人増えるしね』

「ルネはこちらで預かっていいのね?」

『ああ構わないよ』

「色々と問題があるんじゃないの? 来訪者ビジターを匿うということになるわよ。組織的にはかなりヤバイと思うんだけど……」

『はぁ……。そういうことは言ってはだめだよ。組織としてはそのことについては秘密にしてあるんだから。八年前から引き続き彩人くんの方もね。まあ、シェンナにはさすがに伝えたけど』

「彼女はあなたと違って信用があるから何の問題もないわよ」

『ひどいなー。今回って僕はかなり「正義」っぽく動いたつもりなんだけど』

「そのことについては……ちっ……感謝するわ……。たぶん彩人だけじゃない。幸祐や若葉にとってもその方がよかったと思っているから。それから若葉のことについても感謝しとくわ」

『若葉ちゃんは無事に退院できたかな?』

「おかげさまで。今日皆で若葉を迎えに行ってきたところよ。医者の反応もすごかったわ。奇跡でも起こったんじゃないか、なんて言っていたわよ。奇跡ではないのだけれど」

『それはよかったね。フェルメールも相当頑張ってくれたからなあ……もう帰ってから今でもずっと寝っぱなしだよ』

「あの子はどういう子なの?」

『一言で言っちゃえば僕の助手アシスタントだね。そりゃもう完全な治療専門の。あの子は異常プラヴィタスを使うと同時に睡眠を取る必要があってね。転換コンバート系だから。あの子はかなり頑張ってくれたよ、本当に。あの子も「元」僕たちの家で君が預かる?』

「もう勘弁して……それにその子はあなたが預かっているんじゃないの?」

『ああ、大変だよ。君は四人も育てるなんて本当に感心する。それでなんて説明したんだ? 彼らに君のことを』

「ある程度のことは仕方なく話したわ。できれば関わって欲しくなかったのに。彩人にもルネにも、この事件のこととか異常プラヴィタスのこととかは、忘れたことにしといてもらったわ。それにもう関わらないようにって念も押しておいた。それでいいかしら?」

『この事件についてのことだね? ああいいよ。話せるところまでだけど』

「今回の事件は一体なんだったの?」

『今回の事件を引き起こしたのは狩猟者ハンターで、彼らの目的は彼女の捕獲で間違いないようだ。それ以外の目的があったという線はないと考えてよさそうだよ』

「それで?」

狩猟者ハンターを裏で引いていた人物もしくは組織は判明していない。ミロリーという狩猟者ハンターはあれからいっこうに口を割らない、というよりは知らないと答えていると言ったほうがいいかな』

「知らない?」

 藍は繭を顰める。

 狩猟者ハンターというのは本来、誰かが雇うことによって動く人物もしくは組織のことである。まれに雇われずに自身で動くこともあるのだが、あくまでも希でしかない。実際は雇われるのが普通だ。そして依頼人が不明というのはいささかおかしな話である。

『OASPの方では調査を続けるつもりだ。それに今回動いていた狩猟者ハンターはそのグループだけではなかった。今はそいつらの残党狩りでまだ仕事は続いているよ』

「この色見地域に他にもいたっていうの?」

『ああ、君の住んでいる付近にはそのグループだけだったが色見市全体で見ると他にも確認できたグループだけで九つ。僕たちの到着が遅れたのもそっちの対処に手間を取らされていたせいだ。まるOASPの目を欺くための囮みたいに思えるけど、あれは果たしてただの広範囲捜索だったのか、そうでないのか』

「あなたは裏があると考えているのね?」

『まぁね。ともあれ事件は平和的に治まったと思うよ? 彼らも再会を果たせたことだし。まあ彼らはそれが再会だということもわからないだろうけど』

「あの子達にとって憶えていた方が幸せか、それとも忘れて新しくやり直す方が幸せか。だけど選択肢はもうないのよね」

 これで話も終わりだろう、と藍は思ったのだがそこへ百緑があることを持ち出してきたせいで、話は終わらなかった。


『あともう一つ気になったことがあるんだよね。君も気付いたかな?』


「なにがよ?」

 聞き返しに百緑が答えるまでにわずかだが間が生じた。

『ルネ・アージェント・ネージュが身に宿している異常プラヴィタスについてだよ』

「『結合ネクサス』のこと?」

『君はあの等級(ランク)をどう見る?』

「どう……って、狩猟者ハンターたちの目ではB等級(ランク)だったんでしょ? ―――まさか……」

『そうそのまさかじゃないかと僕は思ってね。あの時、白上彩人は確かにまた異常プラヴィタスを暴走させていたはずだ。そしてその結末にまた同じ結末を呼ぶものだと思っていたのに、違っているだろう?』

「彩人が『あれ』を生み出さずに、記憶を全て失うこともなかったということ?」

『ああそうだ。あの時の暴走を止めたのは間違いなく彼自身ではないようにしか見えなかった。暴走が止まったのは光の柱の中にルネ・アージェント・ネージュが入っていった直後だ。つまり、暴走を止めたのがもし彼女なのだったとしたら……』

「他の異常プラヴィタスへの干渉、って言いたいの?」

『……。そうだとしたら今回のことも、八年前のことも一大事だよね。一点にS等級(ランク)が揃うなんて、ただごとじゃないよ。もしかしたら彼らはいずれ改変者アルターとして……』

「させないわよ」

 百緑の言葉を遮るように言う。

『ふっ、言うと思った。光が消えてからは、彼らは仲良く抱き合っている状態だったけどね。若いっていいなぁ。あの頃に戻りたいよ』

「変な言い方をしないで! あの子達は命がけだったのよ。それにあのまま二人とも倒れたのだし」

『ともあれ今回の出来事はそういうことだ。それで君については助手アシスタントという扱いで働くことになるだろうが、単独の仕事もできるかもしれない。君の意思はシェンナに直接しておくとして、他に何かあるかい?』

「もういいわ。明日の準備をしなくちゃいけないし」

『ふーん。何か楽しいことをやるみたいだね。じゃあ来週中には一度支部の方に顔を出すように』

「わかった」


『久しぶりに会えてうれしかったよ』

「私は最悪だったわ」


 二人はそこで受話器を置いた。

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