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姫勇者ラーニャ  作者: 松宮星
最後の戦いのはじまり
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真龍の代行者と邪龍! 真っ向勝負!

『あなたの旅は終わるわ、シャオロン』

 シャイナに戻ったオレに、妻は未来を告げた。

『星はそう告げている。龍とあなたの絆は、シルクドで終わる』

 どういう意味だ?

 オレが真龍にふさわしくない人間になるという事か?

 爪を振るう資格を失う?

 オレが死ぬのか?

 それとも、『龍の爪』が壊れてしまうのか?

 まさか、龍神湖の真龍が死ぬという事はあるまいが……

『質問はやめて。答えられるわけないでしょ? 私は見たままを語っているだけなんだから』

 妻は目を閉じ、天体の星の配置から感じる事を、再び言葉とした。

『その時がくれば、あなたにはなすべき事がわかるわ。それを成し遂げても、成し遂げられなくても、未来は変わらない。あなたは、二度と、龍の為に働けなくなるのよ』



 目の前に巨大な邪龍が現れた時、確信した。

 これがオレの運命だ、と。

 目の前の敵を葬る事こそ、オレのなすべき使命なのだ、と。 



 汝、魔を憎み、龍と共鳴し、戦えるか?

 汝、我が爪を己が爪とし、魔族を切り裂けるか?



『龍の爪』を振るう事を許された日、オレは龍の思いに触れた。



 龍神湖の底に、真龍は眠る。

 半ば眠り、半ば目覚めて、半睡をしている。

 山ほどもある巨大な真龍は、岩のようであり、滑らかな鋼のようであり、やわらかな雲のようでもあった。

 真龍はジャポネの守護神であり、その半睡によってジャポネを緑豊かな豊穣の国としていた。

 龍は己の信奉者にその爪を譲った。爪に宿る邪を払う力で魔族を葬るべし、と。体より離れてもそれは、龍の一部であった。人がその爪を用いて邪悪を討てば、邪を払う心地よさは龍にも伝わる。龍は龍神湖で半睡しながら、人と共に邪悪を討てる事を喜んだ。

 爪の振るい手は、かつてはアキフサの先祖の神主達だった。しかし、時が流れ、インディラ教に席巻され、龍信仰は廃れ忘れ去られていった。龍神湖は聖域として守られたものの、龍を祭る部族は減り、龍神湖のほとりの社より神主は居なくなった。

 約三百年前の事だ。無人の社に、七代目勇者ロイド様とその従者達が訪れた。西国を蹂躙していた火龍を鎮める力を求め、水龍の伝説の地へとやって来たのだ。魔を憎む彼等の心は真龍と通じ合い、古えの神主さんの霊をこの世に呼び戻した。神主さんは右手用の『龍の爪』を、従者の一人、シャイナ国の武闘家リンチェンに譲った。この世に邪龍が現れた時、必ずやその爪をもって邪悪を葬るという約束の下に………

 そのリンチェンが、オレの先祖なのだ。

 それから三百年。オレのご先祖達は、約束を守り、大魔王が復活していない時代であっても、魔族が邪龍を使役する折には、必ず『龍の爪』をもって邪龍と戦い滅ぼしてきた。

 そして、オレも……汚らしき魔を祓う為に、爪と共に戦ってきた。右手用の『龍の爪』を盗られた時も、古えの神主さんから左手の『龍の爪』をお借りして戦った。

 左手の爪は、十三代目大魔王をセレス様が討伐した後、お返ししたけれども……

 オレはずっと、真龍にも古の神主さんにも恩義を感じていた。家族と村の復讐を願った子供に、御力を貸し与え、その後も、振るい手である事をお許しくださったお心の広さに感謝を抱いてきた。

 そして、今……

 オレは、爪の運命の敵と出逢ったのだ。

 真龍の代行者の真の敵だ。



「あ〜あ、カルヴェルも無粋ですねえ。邪龍は三体ほど召喚しようと思ったのに」

 僧侶ナラカは少し離れた場所にいる。彼の前に出現したものに阻まれ、オレ達は大魔王に近づけずにいる。

「残念です。邪龍はほんの一体、四天王もたったの七だなんて……お相手としてもの足りないでしょうが、楽しんでくださいね、みなさん」

 距離が開いていても、大魔王の声ははっきりと聞こえる。心話を用いているのかもしれない。

 オレは火を噴く馬に乗馬した魔と戦っていた。

 ヘスケトと言うらしい。サントーシュ様が心話で教えてくださった。セレス様のお話も思い出した。セレス様のおじい様、ランツ様が倒した魔だ。物語では強敵だった。

 素早く力強く駆る馬に乗り、ヘスケトは槍を振るい、魔法を放つ。雷が得意魔法。鎧を浄化すれば勝てるそうだ。憑依体の肉体も魂も鎧に吸収し、ヘスケトは生きる鎧となって存在している。鎧こそが本体なのだ。

 対戦中も、地鳴りを感じる。邪龍が歩く度に地が揺れるのだ。そして、気をつけていないと炎が飛んでくる。邪龍は鰐のような口から、炎を吐く。その末広がりな炎の余波が、かなりな範囲に及ぶのだ。火は砂を焦がした後、すぐ消えるのだが、熱気は残る。周囲の気温があがっている。

 邪龍はラーニャ様を追いかけている。短距離の移動魔法でナラカを追っている今世の勇者の背を、襲っているのだ。苛烈な炎と巨体にて。

 邪龍は放置されている。周囲に四天王やら小物魔族があふれている今、挑む余裕のある者はいない。巨大すぎる龍に単独で挑むのは無謀と言えた。しかし……オレは闘いたい。ラーニャ様の従者としても、『龍の爪』の使い手としても。

「シャオロン」

 ヘスケトへと竜巻を放っていたオレの横に、ジライさんが跳躍して現れる。『ムラクモ』を抜いている。

「行ってもいいぞ、ここは手は足りている」

 覆面に黒装束のジライさんは、それだけ言うと、ヘスケトへと斬りかかって行った。

 やっかいな魔ヘスケトもひきつけておかねば危険なので、ジライさんは残るのだ。葬る手立てを、見つけられぬ現状であるのに。

 ジライさんこそ、ラーニャ様のもとへ駆けつけたかろうに……譲ってくれたのだ。

 オレはジライさんに対し頭を下げてから、小山のように巨大なものへと向かって行った。



 サントーシュ様が、心話で邪龍の情報を伝えてくださる。けれども、この敵だけはオレはよく知っている。ご先祖の敵だったんで子供の頃から知っていたし、童話めいていたオレの知識はセレス様が昔、補ってくださった。セレス様が語ってくださった『勇者の冒険』のお話の中で、オレは邪龍の話をひときわ熱心に伺ったのだ。

 邪龍の全身を覆う黒い鱗は、いかなる刃も拒む。『勇者の剣』でも斬れないのだ。刃を拒み、肌を硬化させる高位の邪法が常にかけられているからだ。その邪法は、どんな神聖魔法でも解けなかった。龍は魔法障壁と共に存在しているので、人の魔法がかからないのだそうだ。

 火龍である邪龍が何体、エウロペで暴れたのかは定かではない。十体は居たと思われる。

 オレのご先祖のリンチェンは、『龍の爪』の振るい手として、火龍に挑み、五体を倒した。無敵とも思える邪龍にも、弱点はある。刃が通じる箇所があるのだ、鱗の無い場所……頭部の角か、目か、炎を吐き続ける口。水を司る真龍の加護を受け、リンチェンは灼熱の炎をものともせず、その口の中を斬り、邪龍を退治したと昔語りは伝えている。

 勇者ロイド様は、邪龍を操っていた四天王カリブクスを三の書ごと斬り捨てた。召喚主を失った邪龍は今世に留まれず、消滅した。魔界へと戻ったのだと言われている。

 だが、今回は、四天王ではなく、大魔王となったナラカが召喚主だ。

 召喚主を退治して邪龍を今世から消す道は、オレにはない。大魔王を倒せるのは勇者だけなのだ。

 聖なる武器をもって、邪龍に挑み、まずは、ラーニャ様から邪龍を引き離す。

 ラーニャ様の敵はナラカなのだ。

 それ以外の敵を引き受けるのが、従者の役目なのだ。



 巨大な火龍の弱点は、頭部に固まっている。

 小山ほどもある邪龍のそこまで、跳躍で届くはずもない。ジライさんでも無理ではなかろうか? それに正面は危険だ。近寄る者に、追いかけるラーニャ様に、邪龍は口から火を噴きかけ歩いている。

 火龍の背後から近寄り、激しくのたうっている龍の尾の動きを目で追う。龍の尾は長い。ほぼ地上へと達している。

 巨大な龍のものだけあって、太い。幅広の街道ほどもある。

 だが、道とは異なり、それは絶えず動く。鞭のようにしなり、右へ左へ、時には斜めとなり、感情のままに動く。殴打攻撃向きだ。それの一撃で城壁が砕けそうだ。

 気ままに動いているようだが、よく見れば、ある程度の調子(リズム)はある。

 それをしばらく見つめ、それからオレは跳躍した。

 龍の尾の上へと着地し、その上を走る。

 足裏は、岩を踏みしめている感触だ。鱗は硬く乾いている。

 うねりだしたそれから落ちないように、先を見極め、飛び、尾の上に着地し、更に先へと跳躍する。

 時間をかけぬよう一気に駆け上り、龍の胴体へと到達した。

 邪龍の背は、草木一本ない岩山の上のようだ。

 揺れ動く背の上を、走る。

 鱗と鱗の間から、黒い煙が噴き上がる。

 蒸気だ。

 油断から対応が遅れる。少し浴びてしまった。両の膝から下がヒリヒリと痛む。火傷を負ってしまったようだ。

 妻からもらった、魔法結界の守りを左手に握り締め、走った。これで熱も防げるはずだ。

 龍の胸の辺りまで進んだ時だろうか。

 思いがけぬ反撃をくらったのは。

 邪龍が振り返ったのだ。

 肩越しに振り返り、そして……

 巨大な鰐のごとき口を開き、鋭い牙を覗かせ、そして……

 紅蓮の炎を噴出したのだ。

 邪龍が自分の背に向けて、炎を吐き続ける。

 凄まじい炎がオレの全身を包み、更にその先の宙を焼いてゆく。

 衝撃に、全身がビリビリと揺れる。妻の魔法結界が炎を防いでくれねば、オレは丸焦げになっている。

 前に進めず、ジリジリと下がってゆく。突風に飛ばされそうだ。全身が風に叩かれているようだ。

 火龍の息吹は想像以上の威力だ。

 だが……オレは……

 水龍の代行者だ。

 負けるわけにはいかない。

 精神を集中し、水と竜巻を願い、右手を振るう。

『龍の爪』が炎の息の一部を切り裂き、押し戻す。

 進むべき道だ。

 オレは巨大な邪龍の口をめざして走り、爪を振るい続けた。



* * * * * *



「すげぇ、シャオロン様、邪龍と真っ向勝負だ」

 シンが魔法でけっこうな高みまで連れてってくれたんで、上からシャオロン様と邪龍の戦いを眺めた。

 シャオロン様は邪龍の背にのっかって、炎を吐く邪龍の顔めがけて突進している。

 シンが俺の口を使って、呪文の詠唱を始める。魔力が高まってるのはわかるが、呪文自体がわからないので、魔法で何をするつもりなのかがわからない。

 周囲に光の矢が何百も生み出される。それが、龍めがけて宙を飛んだ時にはさすがにびっくりした。

 下にはシャオロン様も居るのに!

《浄化の矢だ。魔族にしか殺傷力はない》

 呪文を詠唱しているんで、シンは思念で答える。

 次々に飛んでいく矢が、龍の顔面を狙う。

 しかし、それは龍に届く前に、バキバキと折れてしまう。龍の前には魔法障壁がある。

《やはり、この程度の魔法では通用しないか》

 邪龍はあらゆる魔法をはじく。俺はそう習っている。

《違う。実在化制御の魔力効率の問題だ》

 ん?

《邪龍は魔界においても、魔法的性質の高い存在だ。だが、今世に具現化するにあたって憑依体に憑いたが為に、あの邪龍は、本来の能力からかなり劣った存在に堕ちている。魔法許容量は、さほど高くないはずだ。むろん、人間レベルの放てる魔法ではその殻は破れんだろうがな》

 えっと……?

 シンがちょっとイラっとした感じに説明する。

《あいつの魔法防御力を超える魔法なら通用するという事だ》

 ああ、なるほど。

 足元の、シャオロン様の動きが止まる。

 邪龍の顔前には、外部からの攻撃を防ぐ、物理・魔法障壁がある。刃が通る箇所を魔法結界で守護しているわけだ。

 霊力のあるシャオロン様にはそれが見えているのだろう、結界に向け、爪を振るっている。

 少しづつ結界は削がれている。が、邪龍の吐く炎を、すごい間近で喰らってるわけだから、シャオロン様の方もダメージがある。炎こそ防いでいるが、龍の黒の気に全身が貫かれているようなものだ。精神力がない者なら、魂がバラバラになるような衝撃だろう。

 このまんまじゃ、シャオロン様が危ない。

 何かすごい魔法無いのか、シン? 邪龍の防御力を超えるようなヤツ。

《ある》 

 おぉ、さすが!

《しかし、魔力が足りん》

 バ……

《バ?》

 いやいやいやいや。

……さっきの無駄撃ちが悪いんだ。魔法を乱発するから、魔力切れになるんだろ?

《違う。憑依体が悪いからだ。父上のお体を使わせていただいているのなら、高位の魔法が連発できるのだが……》

 く。

 俺が悪いのか。

《きさまの体でも使えるか試してみるか……》

 シンは詠唱を切り替えた。

 回復魔法だ。

 シャオロン様の焼けた足と衣服や靴が元通りになり、尚、キラキラした光がその体にまとわりつく。

《あの光が、精神及び肉体の傷を癒す。これで数分もつはずだ。戦闘意欲を失わない限り、あの男が死ぬ事はない……戻るぞ》

 戻る?

《父上から魔力をいただく。体内に多くの魔力を溜めた後、邪龍を攻撃する》

 わかったと、答えた時には、ガジュルシン達の前に居た。

 無詠唱の移動魔法だ。

 行きは空中飛行ですっとんで行ったのに、帰りは一瞬だった。

 兄弟ともに砂の上にあぐらをかいている二人が、俺を見る。正確にはシンを、だが。

 ガジュルシンは、ガジャクティンの前に座っている。背中に触れている弟の右手に、魔力を吸わせているのだ。指を動かして印を結んでいる。所作のみで発動する魔法を使用しているようだ。

 ちょっと離れた場所では、護符に囲まれた円陣の中で、タカアキが座り込んでいた。お貴族様とは思えない所作で、小瓶をラッパのみしている。カルヴェル様特製疲労回復薬を飲んでの、休憩中のようだ。

 そのそばの宙には、大魔術師様が浮かんでいた。前方をみすえて何か呪文を唱えている。前衛達を防御しているのか、魔族達を攻撃しているのか。

 サントーシュは、怪我人の治療をしていた。新従者だ。他にも治癒にあたってる知らない顔が居る。この近辺、救護所になってるっぽい。

 ざっと周囲を見渡してから、肉体を操っているシンがガジュルシンを見つめる。

「邪龍を討伐する為の力が不足しています。魔力をいただけますか、父上?」

《わかった》

「ご命令を」

 口布を外すシンに、ガジュルシンが頷きを返した。

《汝が主人ガジュルシンが命じる。戦闘に必要なだけの魔力を、主人から吸収せよ》

「ありがたき幸せ」

 シンは笑みを浮かべると、ガジュルシンの頬を押さえて、顔を合わせ……

 接吻した。



 て。



 何してんだよ、おまえ!



 舌も入れてるし、これは、挨拶のキスじゃない!



 うわ、うわ、うわ!



 口づけさせられているガジュルシンは、最初こそあっけにとられていたものの……

 すぐに、顔を真っ赤にして、すごい顔で俺を睨みつけ始めた。

 本気で、怒ってるぞ、これは。

 当たり前か。ガジュルシンの背後にはガジャクティンが居るし、周囲にはカルヴェル様やら新従者達がいるわけで……

 うわぁぁ!

 やめろ、シン!

 これじゃ、俺がキス魔の変態みたいじゃないか!

 目の端に、硬直しているガジャクティンが映る。兄と義理の兄の接吻シーン見たら、そりゃ固まりたくもなるだろう。けど、おまえ、聖なる魔法担当だろ! 呪文を詠唱しなきゃマズいんじゃ?

 ハッとして、ガジャクティンが詠唱の続きを始める。多分、心話でガジュルシンが『呪文を絶やすな』って注意したんだろう。

 誰かが怒鳴っている気がする。ガジュルシンの心話だろうけど、よく聞こえない。シンが俺には聞かせないように、ブロックしてるみたいだ。



 そんなこんなで、口づけが続く……



 体が取り戻せない……



 くそぉ……



 悪夢の時間が終わるまで、数分かかった……



「ありがとうございました、父上」

 晴れやかな声のシン。頬の筋肉も口元も緩んでいる。絶対、こいつ、今、ニヤけてる。

《早く行け!》

 ガジュルシンの思念が怒鳴る。接吻されてる間、ずっと真っ赤だったんだ。今も、リンゴみたいな色だ。

 潔癖で恥ずかしがり屋のガジュルシンにしてみれば、公開拷問されたようなものだし……いや、公開羞恥プレイか。

 周囲の視線が痛い。

 特にガジャクティン。

 すまん!

 困惑しきった表情の義弟に、俺は心の中で頭を下げまくった。

 妙ににこやかなカルヴェル様とサントーシュも、それはそれで嫌だけど。タカアキは、俺達なんか、どうでもいいみたいだ。二瓶目を、ぐびぐび飲んでいる。

「それでは、又、のちほど」

《もう来るな!》

 怒るガジュルシンに、シンが笑う。

「私はあなた様のしもべ、そしてこの体は『影』。離れられない運命にございましょ? 言霊に縛られぬよう、今の言葉は戯れと判断し、聞き流します」

 ムカつく、この馬鹿蛇。

 だけど、その笑い方は、妙に子供っぽくって……本当に楽しそうだった。



 体の一部に接触すりゃ魔力の受け渡しはできるんだよな? タカアキがそう言ってたよな? と問うと、そうだとシンは心の中で答えた。

 なら、何で接吻したんだよ? って聞いたら、少しぐらい役得がなければつまらないとかぬかしやがった。

 相手が嫌がる事するなよ! と、怒ったら、恥じらうお姿はかわいらしかったなと嬉しそうに言いやがる。

 ガジュルシンは父親なのに……と思ったら、更に言えば異種族で年齢差もある、だが、男同士というだけで既に人間界では禁忌なのだろう? 一つでも禁忌に触れれば、どう転んでも禁断の恋。ならば、禁忌が多い方が、父上も、より背徳美を感じてくださるのではないか? とか、白蛇神はおっしゃる。

 姫巫女も変だったけど、こいつも変……やっぱ、白蛇神の感覚は人間と違うわ……



「攻撃魔法に専念したい。空中浮遊も防御結界も無しだ。魔力を充実させるまで三分かかる。邪龍から離れすぎぬ位置で、逃げ回っていてくれ」

 了解の意志を伝えると、シンは移動魔法を使った。

 出現した途端、横なぐりの風と、剣戟の音、地鳴りを感じた。そこかしこで、従者達が敵と戦っている。四天王以外にも、小物魔族も、まだけっこう居る。

 空気の淀みを感じ、俺は魔法道具で結界を張った。シン神様のに比べりゃちゃちな結界しか張れないけど、瘴気漂う場所に(なま)で居たら毒されて、しまいには死んじまう。

 四足の龍は、斜め後方に居た。立ち止まり、己が背のものに向かい火を噴いている。

 近寄って来た小物魔族を『虹の小剣』で浄化しながら、俺は走った。

 小山ほどもあるデカい邪龍をめざして。

気分は、少し「ワンダと巨●」……アグロが大好きでした。

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