間違いなく一番! 姫勇者と従者達!
夜が明けた。
部屋の中で少し体を動かして、ジライに付き合ってもらって体術の稽古をしてから、白銀の鎧をまとい『勇者の剣』を背負って、食堂に行った。
そこに居たアジンエンデやシャオロンに、おはようと挨拶をする。
アジンエンデは、ケルティ風の男性服を着ていた。今日は、慣れた服で戦うのかな? 服の下はあの赤いHな鎧なんだろうけど。
シャオロンも道着。動きやすい格好が一番だものね。
大魔術師様のお城の食堂の真ん中の長テーブルには、朝、昼、晩と、一定の時間、ご馳走が湯気を立ててずっと並んでいる。毎回、メニューが違うそれは、長時間そこにあっても冷めないし、新鮮だし、幾らとっても量が減らない、魔法の食事だ。けど、幻ってわけじゃない。ちゃんとおなかにたまる。不思議。
ジライが運んできた、果汁とパンとスープとサラダと卵と腸詰肉を食べる。どれも、みんな、美味しい。
シャオロンもアジンエンデも、静かに食事をしている。
のんびりと時間が過ぎる。
日常って感じ?
こんなんで良いのかしらと思っちゃうほど、穏やかだ。
デザートのヨーグルトを食べていたら、食堂にデカいのが現れた。
不愉快なんで、さっさと食べ終えて私は席を立った。
「ラーニャ」
追っかけてくるし。
朝食、食べなさいよ、私なんかほっといて。
「待って、ラーニャ、話を聞いて」
廊下を歩く私の後を、デカいのがついて来る。ジライもついて来てるだろうけど、姿が見えない。
そいや、昔も、こうだったなあと思う。勇者ごっこを私としたい時、こいつはしつこく後を追っかけて来た。OKがもらえるまで、執念深く。勇者ごっこは私とが一番、楽しいからって。
「お守りの袋、もう開けない。絶対、開けない。だから、ごめん、許して」
無視して、私は歩き続ける。
情けない声で話しかけてくる義弟を、後ろにくっつけて。
「ねえ、お願い。今日だけは仲直りして。今日を過ぎたら、ずっと怒っててもいいから。今日、僕、死んじゃうかもしれないし」
不吉なこと言ってるんじゃないわよ、馬鹿。
私は足を速めた。
「待って! お願い、笑顔を見せて!」
はぁ?
「ラーニャの笑顔が見たいんだ!」
なに、それ?
私は足を止めて、振り返った。
途端に、バカでかい義弟の顔が、パッと輝く。
「笑えっての?」
「うん。笑顔が見たい」
「私、役者じゃないんだけど?」
「うん。ごめん。でも、ラーニャ、ずっと怒ってるんだもん」
「あんたが馬鹿やってくるし、ナラカと戦ってる最中なのよ。ヘラヘラ笑えるわけないじゃない」
「そりゃそうだけど……ラーニャ、覚えてる? 僕に最後に微笑みかけたのがいつだか?」
「はぁ? 知るもんですか」
そんな事、覚えてるわけないじゃない。
「すっごく前だよ」
怨みがましい目で、義弟が私を見る。
何時だったっけ……?
「最後になるかもしれないから……ラーニャの綺麗な顔を見ておきたいんだ」
惰弱で後ろ向きな男なんて、大嫌い。
大嫌いだけど……
まあ、仕方無いか、義弟だし。
返事保留にしちゃってるし。
笑いかけてもらってないって、怨んでるっぽいし。
よし、笑ってやろうじゃないの。
私は目元と口と頬の筋肉を動かした。
これで、どう?
完璧でしょ?
「いや、そういう、公的儀式用の笑顔じゃなくって、普通に笑って欲しいんだけど」
むぅ。
普通? 普通って何よ? じゃ、これで、どうだ?
「口元を歪めて、ニヤリとか……それ、普通?」
むぅぅぅぅ。
生意気、生意気、生意気。
義姉として、リクエストに応えてやってるのに〜〜〜〜
笑えばいいんでしょ! 笑えば! 笑ってやるわよ!
くそぉぉぉぉ!
「ラーニャ……」
ガジャクティンが、私の両肩をポンと叩いた。
「ありがとう……もういいよ」
むぅ?
「ごめん、僕が悪かった……楽しい気分でもないのに、笑えとかひどかったよね。許して」
同情されている……ような?
「でも……必死に笑おうとしている、可愛いラーニャが見られて嬉しかった。満足したよ、ありがとう。今日のラーニャを胸に、僕は戦うよ」
う!
やめろ!
笑うな!
私は、義弟をぶっ飛ばしていた。
無駄に笑わないでちょうだい! あんた、ますますお父様に似てきてるんだから! 声や顔だけじゃなくって、雰囲気というか、オーラというか、そういうのひっくるめて全部、似てるんだもん! 微笑まれたら、心臓に悪いわよ!
* * * * * *
カルヴェル様の移動魔法で、僕等はシルクドの砂漠へと移動する。
姫勇者一行は、先ほどから移動魔法のきらめきに包まれている。が、まだ術は発動しない。砂漠神との約束の時間が過ぎるまで、待機しているのだ。
しかし、もう間もなく、だ。深く息を吸って呼吸を整えた。
背後から僕を支える手。振り返って見た。インディラ忍者装束が目に入る。今は、シンだ。アーメットとシンは、めぐるましく入れ替わる。兜に口布で素顔を隠しているけれども、目元の肌が露出しているのですぐわかる。青白い肌は隠しようが無い。どちらが肉体を操っているのかはすぐにわかる。
「お楽に……」
同じ声帯を使っているのに、シンの声の方が甘くしっとりとしている。音楽的だ。
シンはまるで騎士のようだ。僕を『可憐な乙女』として扱い、守護しようとしている。声を失い、しかも体が丈夫ではないからだろう。生まれたての純粋な神は、僕を憐れんでいるのだ。
対抗意識を燃やしているのか、アーメットも妙に過保護だ。
それに、少しおかしい。昨晩から、僕が魔法を使おうとするとひどく嫌がり、決戦に備えて体を休めておけとしつこかった。心話も使わなくていいとまで言い出したので、何故? と、尋ねた。アーメットは驚いたように僕を見て、首を傾げた。何故かわからないって。でも、間違いなくナラカ戦で無茶するはずだから、休める時は休んでいて欲しいと願った。
しゃべれない僕は、無茶などできないのに。大技が使えないのだから。
視線を感じた。
背の高い弟が、僕を見ている。
僕は、弟に微笑みかけた。
《ガジャクティン、頼りにしているよ》
弟が嬉しそうに、僕に頷きを返す。
ガジャクティンがナラカの能力を封じていられる時間は、一時間……
それよりも長くなると、危険なのだ。血族だからこそできる能力封印の神聖魔法を、本来、ガジャクティンは大伯父には使用できない。
大伯父本人の魔力に対し、ガジャクティンの能力が低すぎる為だ。魔力もインディラ神への信仰心も、不充分なのだ。
手首・足首の魔法制御用の輪を用い、ガジャクティンは、僕の体から膨大ともいえる魔力を引き出して術を行使し、魔力行使による肉体疲労をその身に受けてくれる。
一時間を越えれば、魔力制御用の魔法道具が壊れるかもしれないし、魔法による負荷がガジャクティンの肉体や精神を傷めつけるだろう。
一時間以内に、ラーニャが大伯父を討ち取れねば……おそらく、負けだ。
『勇者の剣』は大伯父に破壊され、この世は大魔王ケルベゾールドに蹂躙される。
闇の時代が始まるのだ。
* * * * * *
「おひさしぶりですね、みなさん」
移動魔法で跳んでった先、晴れた砂漠に、ナラカが居た。
「会えて嬉しいです」
私達とナラカは、普通にしゃべってどうにか声が届くぐらいの距離に、離れて向かい合っていた。
私の背後から、すっごい殺気。文字通り、ぶっ殺す! って感じ。タカアキとガジュルシンだろう。ガジャクティンもけっこう闘志むきだし。
それ以外のメンバーは、わりと落ち着いている。
ナラカも、今日という日を待ちきれずにいたんだろう。約束の『七日後』になった途端、移動魔法を使ったわけだから。
あいもかわらぬ姿。重たそうな黒髪を一つの三つ編みに束ね、黒の魔術師のローブをまとい、魔法使いの杖を持っている。
ナラカは私達に対し、微笑みかけた。親しい者に接したかのように。
「確認しておきたい事があります」
私達ではなく、私達の遙か後方を見つめ、それから左右をナラカは見渡した。どこもかしこも砂だらけ、彼方まで砂の山しか見えないけど。
「私が戦うのは、姫勇者様とその従者だけ……と、いう事でいいのですよね?」
のんびりとした口調で、ナラカが問う。
どういう意味?
「そのようにしていただけると助かります」
大僧正候補のサントーシュ様が、ナラカに丁寧に答える。
「我々の戦いが周囲に被害をもたらさぬよう、この場所を囲むようにインディラ僧侶達を配置しました。内部の魔法・物理攻撃が他に漏れぬよう、又、神霊魔の影響が外に出ぬように結界を張らせます。それ以外の、魔法は使わせませんし、結界の質を変える事もありません。たとえ、私や姫勇者様達があなたに殺されようとも、決して、敵対行動はとらせません。存在する事をお許しください」
ずっと遠くにインディラ僧達がいるのか。巨大都市レベルの結界を張る為に、ぐるっとデカい円になっているのかな?
「私達の戦いの余波を封じるだけで、聖なる結界は張らないという事ですね?」
「はい」
「わかりました。彼等は放置します」
「ありがとうございます」
「ただし、一人でも私に刃向かう愚か者がいたら、全員を敵対者とみなし攻撃をしますからね」
「肝に銘じさせます」
サントーシュ様がうつむき、目を閉ざす。心話でインディラ僧全員と連絡をとっているんだろう。
「ナラカよ」
大魔術師様が、ホホホと楽しそうに笑いながら問いかける。
「姫勇者の従者を名乗る者であれば、誰であれ戦ってくれるかの?」
その問いに対し、大魔王は面白そうに当代随一の大魔術師様に尋ねる。
「この場に及んで、仲間を増やすんですか?」
「うむ。史上最強の大魔王と戦うのじゃ、ちぃっとぐらいオマケしてくれてもいいじゃろ? 従者を増やさせてくれ。頼む」
ナラカが快活な声で笑う。
「いいでしょう。何人でも増やしてください。私と敵対したい者は、誰であれ歓迎します」
「ありがたい」
老魔術師様がニヤリと笑う。
「気前がよい大魔王様で、助かった。さっそく、新従者達を呼ぶかの」
カルヴェル様がニヤリと笑った時には……
私の右手で、魔法のきらめきが発生していた。
大魔術師様の分身が、移動魔法で私の従者になりたい人達を連れて来たようだ。
えっと……
さすがに、びっくりした。
ナラカも、すかした顔をちょっと崩し、それから声をあげて楽しそうに笑った。
「やはり、あなたって最高ですね、カルヴェル」と、言って。
私は新従者達を見渡した。
砂漠にずらっと並んでいる。
知った顔もいるけど、ほとんど知らない。初対面な人ばっか。
国籍はさまざま、宗教もさまざま、武器もさまざま……歴戦の戦士っぽい人、神官っぽい人、魔法使いっぽい人……
えっと……
四十三だ。
四十三人いる。
私の従者って、今、アーメット、ガジュルシン、ガジャクティン、カルヴェル様、ジライ、シャオロン、アジンエンデ、タカアキ、サントーシュ様、イムラン様といるわけだから、合わせると五十三?
あ、いや、待て。アーメットは私の影武者要員だから、従者扱いになってないのよね。こっちは九か。それでも五十二?
間違いないわ、従者の数、歴代勇者の中でトップになったわ! ダントツの一位よ! 一番従者の数が多かったロイド様だって十四人だったんだから!
「自己紹介ぐらいさせた方がよさそうじゃの。ラーニャとて知らぬ顔が多いゆえ」
大魔術師様がホホホと笑う。それに対し、ナラカは覚えきれるとも思えませんが、どうぞ、とにっこりと微笑んだ。
「勇者に名を覚えてもらえないうちに死ぬんじゃ、かわいそうすぎますものねえ。勇者と従者が親睦を深める時間ぐらいあげますよ、終わるまで、攻撃はしません」
「最初はやはりこのお方からいくべきであろうな」
カルヴェル様本人が右の掌でさししめした人物が一歩、前に出て、私に対してちょびっと頭を下げた。
慌てて、私も、そちらへと向き直り、姫勇者にふさわしい所作で挨拶を返した。
ペリシャ風ターバンの戦士だ。なかなかに格好いい、おヒゲのおじ様。でも、知らない人だなあ。曲刀を持っている。
「イスファン聖戦士長ホマーユンだ。我が国の危機を救った姫勇者への感謝と、我が国を穢した魔への報復の機会をお与えくださったナーダ国王への感謝をもって参戦する。これは我が意志のみなららず、新国王アクバルアサド様のご意思である事をここに伝える」
え?
ナーダお父様?
続いて、他のペリシャ人が挨拶をする。
私の背後で、ジライがぼそぼそと呟く。新従者達の名乗りの邪魔にならないよう、小声で。でも、みんな、新従者の自己紹介より、ジライの説明に耳を傾けていた。
「ナーダめが呼びかけたのです、各国の王と、主要宗教の長、魔術師協会に。シルクドの砂漠で大魔王と勇者の決戦となる、正義の志のある者は共に戦っていただきたい、大魔術師様の移動魔法をもって現地へは案内する、と」
お父様が! 呼びかけてくださった?
「ガジャクティン様より知恵の巨人の話を聞いてより、ナーダは戦力を増やす策をこうじていました」
私の為に……?
「大きく未来を変える事が、大切なラーニャ様を死から遠ざける事に繋がると考えたのです」
私の為? 私の為? 私の為? いやん……幸せすぎて、顔がゆるんじゃぅ。
「七日後と期日も定まった事により、呼びかけやすくなったのも幸いでした。聖なる武器の使い手、もしくは、神聖魔法の使い手のみを集めました。全員、魔と戦えます」
私を守る為に……
四十三人も……
ありがとう、お父様……ラーニャ、愛を感じる……
「国王の親書を持って、カルヴェル様の分身と共に各地を回ったのは、名だけは売れた過去の英雄。人望のない男ですが、度胸があり、はったりは得意でした。『英雄』の肩書も生きたようで、そこそこの成果をみせてくれましたな」
むぅ?
過去の英雄って……もと勇者の従者でしょ? お母様の代の従者って、お父様とカルヴェル様とシャオロンとジライと……赤毛の戦士アジャン。
シャオロンは他の仕事をしてたし……てことは、赤毛の戦士アジャンが……
アジンエンデ……良かったわね、お父さんが私達の為に働いてくれたんだって。
顔の向きを変えられないから、彼女の顔が見えない。喜んでるのかな?
まだ自己紹介が続いている。新従者達が名乗る度に、私は挨拶を返している。四十三人もいるから、絶対、覚えきれない。確信をもって言える。だけど、私の為に来てくれたんだし、『お父様の私への愛の結晶』も同然なんだし、聞かないわけにはいかない。
でも、いくら見渡しても、赤髪、赤髭の、素敵なオジ様は、新従者達の中にはいなかった。何か……見るからに不審人物って人はいたんだけど。
「赤毛の戦士アジャンは来ないの?」
私はなるべく唇を動かさないよう、小声で背後のジライに聞いた。
「あれには、まだ別の仕事をさせております」と、ジライ。
「なれど、ナラカ戦に勝る働きどころはありませぬ。間もなく合流するでしょう」
と、そこで、新従者の自己紹介が、知った人の番となった。
「神官のキヨズミいいます。よろしゅうに」
「サムライ マサタカにござる。よろしくお導きのほどを」
タカアキのお付きだった二人。
顔と名前ぐらいは知っている。
で、二人の主人はというと……
突然、ジャポネ語で叫び出した。
うわぁ、ジャポネ語なんてわかんない! と、思ったら、急に理解できた。ありがとう、『勇者の剣』……
「阿呆! そもじら、何しとるんや!」
タカアキったら、新従者達の団体の方へ行っちゃった。あ〜あ、まだ自己紹介が続いているのに。一応、聞いてるふりをするのが礼儀なのになあ、もう。
タカアキは、神官衣にタスキ掛けをし、『破魔の強弓』を左手に、矢筒を腰につけた普段よりも勇ましい格好。戦闘スタイルだ。
タカアキに近寄られた者は、一人はそっぽを向き、もう一人は深々と頭を下げた。
「従者になりたいって、そっちの男がうるさいんで、仕方無いんでついて来ました」と、そっぽを向いている白粉神官が言う。
「ご当主様に無断での行動、お許しください」と、ヒゲのオジサンが頭を更に深く下げる。
挨拶は続いてるけど、タカアキとそのお付きの会話のが気になる。むぅ。
「マサタカ……そもじ、どうやって戦う気や? 鱗もないのに」
サムライの方は霊力がからっきしないものの、姫巫女の鱗を飲んだおかげで、力のおこぼれをもらえていたそうだ。姫巫女がナラカに捕まったんで、鱗は吐かせたってタカアキは言ってたけど。
「戦えます。『マサタカ』様から鱗を頂戴し、飲みましたゆえ」
「は?」
「仲介しました」と、そっぽを向いている神官が右手をあげる。
「娘の鱗やさかい、相性も良く、よお馴染んでます。マサタカ、戦えますえ」
「ほんまか、『マサタカ』?」
と、タカアキが自分の左手首に話しかける。そこに霊体の白蛇がいるんだろうが、霊力が無い人から見れば、ただの危ない人よ、あんた。
子供に同じ名前をつけてるから紛らわしいけど、ようするに白蛇の父親が、蛇娘から鱗を貰って霊力を得たってことよね。
「勝手しおって……」
タカアキが、神官の方を睨む。
「そもじ、麿の後継者やろ? 麿なき後、一族を束ねるはずの男が何でここに居るん?」
そっぽを向いていた男が、タカアキと向き直る。主人に怒られてるのを、全然、気にしてない顔だ。
「主さん居らん一族束ねてもしゃあないでしょ? 面倒なだけで、おもろいことありません。一族の長の座は、トシユキに押しつけました」
「何やて」
「ご当主様」
サムライが砂の上に、正座して頭を下げまくる。土下座ってヤツ?
「ミズハ様とご当主様が居られねば、この命、とうに尽きておりました。最後までご一緒しとうございます」
「マサタカ……」
「キョウに置いといても、そいつ、追い腹を切りますえ? どうせ死ぬんなら、戦場で使ってやるのが慈悲にござりません?」
「……マサタカはわかる。そやけど、キヨズミ、そもじは何で来たんや?」
「決まってるやあらしまへんか」
神官がにっこりと笑う。
「タカアキ様が、みっともなく死ぬサマを見て、指さして笑う為におざります。長年の目の上のコブが、今日、ようやくのうなるのかと思うと、ほんま、心が晴れ晴れしますわぁ」
タカアキが、『破魔の強弓』の鳥打(弓の上辺部)で神官の頭をポカリと殴る。聖なる武器でツッコミかよ。
ちょっと意外。タカアキの事情、全然、知らなかったけど、セットのおつき、個性、けっこう違ったんだ。
そして、自己紹介も最後の一人に……
見るからに怪しい人。
あっちこっちの国の戦士や神官、魔法使い、立派な方達の中に入ると、あんた、浮きまくりよ。戦士風の格好に、口布って……盗賊じゃあるまいし……
「ホウロウ、ノ、センシ。オノ、ヲ、ツカウ。ナ、ハ、ナイ」
かたことすぎる共通語……
胸をそらし、私達に対し気安く微笑みかけるその中年男は……
斬首斧のような、立派でデカい斧を背負っていた……
北方バンキグ人のくせに、南に来ちゃっていいわけ?
カラドミラヌ……