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姫勇者ラーニャ  作者: 松宮星
極光の剣と龍の爪
15/115

初めての戦い! 重たいわよ、あんた!

「ラーニャ、起きろ」



 頬をぴたぴたと叩かれ、体を揺さぶられる。

 私は目を開けた。

 ランプを手に、アジンエンデが私の寝台のすぐそばに立っている。

 私はすぐに体を起こした。私は寝起きが良い……と、いうか環境のせいというか、人災のせいというかで、寝起きが良くならざるをえなかったのだ。起きてすぐに動けなきゃ、セクハラを延々とやられかねない。

 周囲はまだ暗い。

 まだ真夜中だろうか?

「村の外に魔族がいる」

 私の精神は、しゃきっと覚醒した。

「魔族?」

「舅殿の結界があるから、奴等は村の中には入れん。とるにたらぬ小物だ。ほっといても朝には消えていなくなるが、周囲に瘴気を撒き散らされるのは迷惑なので処分する。私と共に戦うか?」

 小物魔族――ろくでもない器に憑依した為に、力は弱く、知能も低い魔が外に居るのか。

「戦うわ」

 私は寝台から飛び降り、呪文を詠唱し、白銀の神聖鎧をその身にまとった。腰には『虹の小剣』を差す。

「どんな小物であれ、退治してゆくのが勇者の務めだもの。教えてくれてありがとう」

「礼には及ばん」

 そう言ってアジンエンデは、赤の下着姿としか見えない体にバンドを通し、背に『極光の剣』を背負う。

「村の内外の掃除は、舅殿と私、シベルア司祭殿の仕事だ。手伝ってくれるおまえに、私が礼を言うべきだろう」

 鎧を装着したので出入口そばの『勇者の剣』をわしっと掴んでみた。思った通り……

「舅殿の『知恵の指輪』に惹かれるのか、魔族の来襲は少なくはない。一ヶ月に、一、ニ回ある 小物ばかりだが、な。光に誘われる蛾のように、『知恵の指輪』のきらめきに誘われ集い、そして、魔は我等に狩られるのだ」

 重い! 『勇者の剣』が男の人の体重並に重い。これを抱えて走れと言うの?

 アジンエンデは南の方角に顔を向けた。そっちに魔族がいるの? 魔族がどの辺にいるのかも、そもそも村のそばまで来ていることすらわからない。魔の気配なんて感じられない。彼女にはどうしてわかるのだろう?

「行くぞ、ついて来い」

「ちょっと待って!」

 こんなモノを担いで村の外を目指してもカメの行進すぎて、朝日が昇っちゃうわ!

 私は大声を出した。

 頼るのはしゃくだけど、絶対、そばにいるはずだもの。

 私が寝起きがよくなったのも、覗いてはちょっかい出してくるあいつのせい。

 こういう時ぐらいしか、あいつには使いどころはない。徹底的に利用してやる!

「アーメットを至急、ここに寄越して! 魔族退治をするの! 村の外まで『勇者の剣』を運ばせて!」

「承知!」

 頭上から聞こえた返事に、アジンエンデがぎょっとする。ランプを天井に向け、きょろきょろと落ち着きなく辺りを見渡している。

「何だ、今のは?」

「ジライよ」

 私の簡潔な説明に、アジンエンデはますます混乱する。

「ジライって……おまえの従者の忍者だろ? え? 舅殿の家に泊まっているのではなかったのか? なぜ、天井から返事が?????」

 私はため息をついた。

「『姫勇者を護衛する』って名目で、あいつ、しょっちゅう、私をストーキングしてるのよ。覗きが趣味なのよ」

「覗き……?」

「お風呂だろうがトイレだろうが、覗くのよ、あいつ。今日のあなたの家であったことも、み〜んな覗かれてたと思った方がいいわね」

 庇って嘘をついてやる気も、あたりさわりのない表現を選んで物事を穏便に進めてやる気もない。

 ありのままの事実をつきつけられ、アジンエンデの顔がカーッと紅潮する。一軒家に女同士という気安さから、ずっと、彼女、レイの鎧姿の上に何にもまとっていないのだ。ムシムシ暑かったから、さっき盥に水を張って、私、体を拭ってもらったし、お礼に一部鎧を外した彼女の背を濡れた手ぬぐいで拭いてあげたりもしたのよね。

「覗かれているのなら、先に言え! 私、さっき、胸の鎧も下半身のも外してしまったぞ!」

「ああ、それは、大丈夫よ、だって、ジライは」

 と、そこまで言いかけた時、背後にフッと気配が二つ現われる。ジライとアーメットだ。

「この覗き魔!」

 アジンエンデは『極光の剣』を抜き、覆面に黒装束のジライへと斬りかかった。

 この(ヒト)、カッとすると剣を抜くのが癖なのね。昼間も上皇様にも斬りかかってたし。斬りかかる前に、ランプはテーブルの上に置いたようだ。投げ捨てて斬りかからないあたり、冷静よね。

 ジライはほんの少し、体をずらしただけでアジンエンデの攻撃を避けた。

「アーメット、ラーニャ様の為に、剣を背負い、戦場までお運びせよ」

 右左下突きを不規則に素早く放つアジンエンデの攻撃を軽々とよけ、ジライはアーメットに命令したりしている。抜刀すらしていない。アジンエンデの攻撃など、歯牙にもかけていない。

 戦士としての技量に差がありすぎるのだ。

 くぅ〜〜〜

 悔しいけど、ジライの方が私達より圧倒的に強いってわけよね。

「女、安心せい、我はラーニャ様の愛らしいお姿を目で愛でていただけ。きさまなぞ、眼中になかったわ」

 ひょいひょいと攻撃をかわしながら、ジライが言う。

 て、待って、愛らしいって何処が? まさか胸のことじゃないでしょうね!

「きさまが乳牛のごとき脂肪の塊の胸を晒そうが、尻を掌でこすろうが、あまつさえ股を大きく開き×××を弄ろうが、何も感じぬ。M女の裸体なぞで、勃起せぬわ」

「体を洗っていただけだ! 誤解を招く言いかたはよせ! ていうか、やはり行水を覗いていたのだな! いや、誰がM女だ!」

 もう何処から怒っていいかわからないって顔で、アジンエンデが叫ぶ。

 二人がそんなやりとりをしている間、黙々と、アーメットは上半身にバンドをかけ『勇者の剣』を背負う。

 ジライに振り回される誰かを見るのなんか慣れっこで気にもしてないって感じ。

 ちょっとかわいそうね……こいつの育ちも。

 私とアーメットが出口へと向かうと、外側から扉が開いた。

 そこには、ランプを持った大柄な男が一人。

「魔族退治なら、僕も行く!」

 息弾ませているのは、無駄に体の大きい義弟だ。後宮育ちのガジャクティンは、私、同様、魔族に縁のない人生を歩んできている。小物とはいえ魔族との戦いなど、見るのも初めて、戦うのも初めてなのだ。

「村の物見櫓(ものみやぐら)の上からの、見学でよろしければ」

 アジンエンデの剣を避けながら、ジライが王族であるガジャクティンに一応の敬語を使いながら言う。

「魔法を使える方々は、未だに、アジャンめの捜索に時間をとられております。防御・回復の魔法を唱えられる者がそばに居りませぬ上、ラーニャ様はこたびが初陣。小物相手でも油断は大敵。このジライ、申し訳ございませぬが、ラーニャ様の護衛を優先いたします。魔族相手に戦う(すべ)を持たぬ方の護衛までは務められません」

 う!

 神聖魔法も使えなきゃ、聖なる武器もない奴は、ひっこんでろと!

 さりげなく、きつい!

 ガジャクティンが喉を詰まらせる。

 ジライ、私やお母様以外の人間にはSだものね……

 ガジャクティンを甘えさせてやる気は、ゼロだわ。

「そこのデカい坊主! 私と一緒に来るか?」

 アジンエンデが叫ぶ。

「常に私の背後にいるのなら、守ってやるぞ!」

 赤毛の女戦士の意外な申し出に、義弟が糸目を丸くする。

「ついて行きます! お願いします!」

 ジライをジロリと睨んでから、アジンエンデは愛剣を背におさめた。

「なら、来い。こっちだ」

 アジンエンデは家を出てずんずん南へと進み、ランプを持ったガジャクティンがその後を追う。同情したわけではない。ガジャクティンを伴うのは、ジライへの(つら)当てだろう。

 しかし、ジライの方は、基本的にガジャクティンには興味がないので、あてつけをされても気にしていない。彼の生命をアジンエンデが負うのなら任せたと、あっさりと引いている。

 自分が果たすべき義務を果たさず王族の子供を死なせては(お母様に怒られるから)マズいと考えてるようだけど、自分があずかり知らぬところで死ぬ分には構わないと思ってるんじゃないかしら、こいつ。

「さ、ラーニャ様、参りましょう。背中は私めがお守りいたしますゆえ、ご存分に戦いなさいませ」

 私はアジンエンデが置いて行ったランプを手に、頷いた。



 村の周囲は高い木の塀にぐるりと囲まれている。塀にも地面にも地中にも上皇様の施した魔封じの結界が何重にも張り巡らされている為、魔族は内には入れないのだそうだ。

 木の塀に群がるように、木、岩、水、獣、鳥、などに憑依した魔族が集まっていた。

 この世に存在する何かに宿ることで、魔族は現世に干渉する能力を得ている。しかし、魔族の能力は、宿主の技量によって制限される。魔界で高位の力を誇っているものでも、知性が低いものに憑けばそれに見合うほど愚かとなり、木に憑けば火が弱点となり、水に憑いて干上がればこの世から消滅してしまう。

 どれほど力の強い魔族であっても、この世界に出現した時点で、この世界の理の支配を受けるのだ。

 ここにいるのは、無機物や知性の低い動物等、ろくでもない器に憑いたモノばかり。自我の強い人間に比べ憑依は難しくないけど、その分、それに憑いて出現してもたいした力は使えない。できるのは、瘴気を撒き散らし、人を殺し喰らうことぐらい。

 朝日と共に消える運命の弱い魔族ばかりだったが、長くとどめておけば地が瘴気に冒されてしまう。

 門番に出入口の戸をすばやく開閉させ、私達は外へ出た。背後で戸が閉まる。

 とっとと浄化するぞと、アジンエンデは『極光の剣』をもって魔族の群れにつっこんでゆく。

 ガジャクティンがランプを持っているので、彼女の戦いっぷりは闇より浮かんで見えた。

 腰までの髪をふわりと舞わせ、赤髪の女剣士が右手へ左手へと武器を持ち替え、迫り来る敵を紙切れか何かのように斬り裂き浄化していく。

 その動きは両手剣を扱う者とは思えぬほど軽快。短時間で多くの敵に刃を向けようとしている。

 そうか……と、気づいた。

 魔族相手に聖なる武器で戦うのなら……

 深く斬る必要はない。

 切っ先でほんの少し傷つけるだけでいいのだ。相手に与えるのはかすり傷でいい。

 聖なる武器が持つ浄化の力が、触れるだけで魔をあるべき世界へ返すから。

 だから、彼女は両手剣を片手で使う技術を身につけたのか。その方が多角的に戦えるから。

 ああん、でも……

 アジンエンデがザクザク斬るから、敵が近くにいなくなっちゃったじゃない。

「ほい、交替」

 と、アーメットにランプを奪われたと思うと、ズジンとのしかかる重い武器を握らされた。

 何で? と、思った時には足元に何か黒いモノが迫っていた。

「ひ!」

 手の中のものを握り締め、ソレに向かって動かした。

 途端。

 変な手ごたえがあり……

 胸が熱くなった。

「お見事!」

 と、ジライが言った。

 て、ことは魔族を斬った……のかしら?

 勇者の魔族の初退治?

 相手の姿も見えなかったし、ただ刃を向けただけなんだけど。

 地面すれすれの低いところを、素早く動く黒いものが走ってくる。それが近づいてくる度に、私は手の『勇者の剣』を振り回した。重くて持ち上げるのがつらいので、剣のきっさきを地面に向けたまま。

 勝手に刃にぶつかって魔は四散してゆく。

「お見事!」

 私が魔族を倒すと、毎回、ジライがそう言う。

 こんなんでいいのかしらと、我ながら苦々しく思う。

 ただ剣を振り回してるだけじゃない。

 上段・中段から私に迫って来る敵は、『ムラクモ』をの使い手ジライと、左手にランプを持ち右手に『虹の小剣』を持つアーメットが倒してくれる。そう、私の腰に差していた『虹の小剣』は気づかぬ間に弟に奪われていたのだ。まあ、今、使わないからいいんだけど、せめて断りなさいよ。

 周囲を忍者二人に護衛してもらって、足元にもぐりこもうとする奴だけを、箒でお掃除するみたいに適当にふりまわしてる剣で倒すだけなんて……

 何つう姫ちゃんプレイ。

 半人前すぎて格好悪い〜〜〜

 でも、このバカ剣が重たすぎるせいで持ち上がらないんだもん。頭の上の敵とかに対応できるはずもない。

 それでも、足元の何かに剣先を当てる度に、ゾクッとした。

 心が弾むというか……

 何っていうか……

 快感?

 魔を斬る事に、私は喜びを感じていた。

 一匹でも多く斬りたい……

 全ての魔を葬りたい……

 何か非常に殺伐とした願望が頭をよぎる。

 これはもしかして、『勇者の剣』の感情なのだろうか? 

 持ち手である私にまで感情って伝わるものなのかしら?

 とか思ってたら、

「お見事、五匹目!」

 と、ジライが褒め称えたもんだから、『勇者の剣』の切っ先を地面に向け、後ろ蹴りをくれてやった。

「いちいちうるさい! 数をかぞえないでちょうだい!」

「承知……」

 自分は二十匹以上倒してるくせに〜〜〜

 子供扱いして〜〜〜〜〜

 ていうか、アジンエンデの剣を軽々と避けてたんだもの、本当は私の攻撃も簡単によけられるのにわざとくらってるでしょ、あんた〜〜〜〜

 ジライのやること、なすこと何もかも気に喰わなかった。

 魔族相手に一人で戦える一人前の勇者に、早くなりたかった……



 夜がしらじらと明け始めた頃には、魔族は消え失せていた。

 足元掃除だけでも、十匹以上倒したと思う。アーメットはそれ以上。ジライは……言いたくないが、倒した数の桁が違う。正確な数は知らないけど、間違いなく。

 けっこう遠くまで倒しに行っていたのだろうアジンエンデが、義弟と共に戻って来た。二人とも怪我はしてないようだ。赤毛の女戦士はきっちりガジャクティンを守ってくれたようだ。

 いつもはふてぶてしいほど自信たっぷりな生意気な義弟が、珍しく神妙な顔つきをしていた。魔族との戦闘を目の当たりにして、びっくりしたのだろうか? それとも、アジンエンデに守られるだけの役立たずだったのがつらかったのだろうか?

「今日はありがとう、アジンエンデ」

 そう言って、ガジャクティンは自分が着ていた夜着の上着を脱いで彼女へと差し出した。厚い胸板の十四歳とは思えない、肉体が露となる。

「着て」

 赤毛の女戦士は、一瞬、何を言われたかわからなかったようだが、すぐに顔を真っ赤にしてガジャクティンの上着を受け取った。

 赤い鎧の上に剣を担いで来てしまい、裸同然の格好のまま外で戦っていたのだ。夜の間は闇に隠れていたからいいけれども、もう朝日が昇り始めている。物見櫓にいる門番とかにしっかり見られちゃうわよね。

「すまない、ありがとう」

 いったんバンドを外し、バンドごと『極光の剣』をガジャクティンに持ってもらってから、アジンエンデは服を着る。『極光の剣』は『勇者の剣』と違って、非資格者が触れても怒らない『性格の良い武器』のようだ。

 アジンエンデも大柄なので、ガジャクティンの上着だけではミニスカート状態だった。横の幅は余ってるんだけどね。

 下も貸そうか? と、問うガジャクティンに、気持ちだけで充分と笑みを浮かべアジンエンデは断っていた。笑うときつそうな顔立ちがちょっと幼い感じになる。

 私の視線に気づき、『極光の剣』を持ったアジンエンデが私に近づいて来る。

「初陣はどうだった?」

 私は肩をすくめた。

「『勇者の剣』と仲良くなりたいって気持ちが、一層、募ったわね」

「大事にしてやれば剣は応えるさ」

 すれちがいざまに私に、『かわいい弟だな。私の背後を狙おうとする敵を殴り飛ばしてくれていた。優しくて女性思いだ。いい男になるぞ』と囁いた。

 え〜と……

 それって……

 ガジャクティンのこと……?

 あのくそ生意気な義弟のどこが〜〜〜〜?

 反論したかったが、アジンエンデはさっさと歩いて行ってしまう。アーメットには会釈をしたけど、ジライは完璧に無視して。

「ラーニャ、アーメット」

 私の後ろに無駄に図体のデカい義弟が立つ。

「ちょっとだけ『虹の小剣』を持たせて」

 アーメットが目でいいよな? と、聞いてきたので、好きにすればって感じに見返してやった。

『虹の小剣』の装備条件は『美貌』。お父様が昔、使ったこともある武器だから、ガジャクティンも使えるはず。

 アーメットから手渡された小剣を右手に、ガジャクティンが宙を切る。体の周囲に張りつけるように振り回すというか、ギリギリの所で刃を避けるように上手に小剣を扱う。さすが、片手剣でも印可のガキね。

「ふーん」

 左手に持ち替えて同じ動きをしてから、ガジャクティンはアーメットに『虹の小剣』を返した。左手でも利き腕並に小剣を扱えるとか……本当、ムカつくガキだわ。

「ありがとう」

 と、言ったガジャクティンの声がちょっと小さかったような気がした。元気もなかった。あんまそうは見えないけど、落ち込んでるのかしら、こいつ、今。

 だから、言ってやった。

「昨夜のことは気にしちゃ、ダメよ。あんた、体だけはデカいけど十四歳の子供だもの、おミソでも仕方ないわ。気にしなくていいのよ」

 ガジャクティンがすごい形相で私を睨む。

 あれ?

 何で?

 慰めてあげたのに?

 私、おミソ勇者だもの。おミソの辛さはよくわかるから元気づけてあげようと思ったんだけどなあ。

「そうだね! 僕は武闘も学問も人並み以上だものね! これで聖なる武器まで持ったら、ラーニャなんか足元にも及ばないほど優秀になりすぎて困っちゃうよね!」

「その通りだと思うわ」

 四つも年下な義弟にまで優秀になられたら、そりゃあ、私のおミソっぷりが目立つでしょうね。

 そう思って正直に答えたのに、ガジャクティンは一層、怖い顔になって私を睨んだ。

「本当は僕は、魔法だって! ……くそぉ!」

 ガジャクティンは己の右の拳を左の拳で受け止め、足早に村へと戻って行く。

 何で怒るのよ、あの年頃の子供は難しいわねえ。

「鬼」

 私の耳元でそう囁いて、『勇者の剣』と『虹の小剣』を交換してアーメットがガジャクティンを追いかける。

 ジライは満面の笑み。

「さすがラーニャ様」

 上機嫌で私について来る。



 私、何かマズい事、ガジャクティンに言ったんだろうなあ。

 後で謝っておいた方がいいかしら?

 でも……何を? 

味噌っかすって日本文化圏の表現ですよね。おミソ勇者がぴったりくるのですが、表現変えた方が妥当かも?

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