てのひらは恋色
彼女はエスペラント語の辞書を開いて、恋の謎を解き明かそうとする。
蛍光の緑のペンは彼女のお気に入りの色。たちまち辞書は緑色に彩られる。
――自身の生涯で初めて「恋に落ちた」
その神秘的な事象について、何らかの答えを導出したかったのである。
紐解いてみたのは、世界共通言語。彼女は寝食を忘れて考究し続ける。
――解明できないいくつかの謎
彼女は蝋燭を灯して古書を読み漁り、日夜、文献を精査する。
自身を魅了した奇跡のような現象を追認しつつ、彼女は書に没頭する。
――ついに彼女は疲労で昏倒する
そして、彼女が目覚めたとき彼女の恋人が傍らに控えていた。
何気に彼の指を握ったまさにそのとき、謎は究明された。
――彼の手相がまさに愛を描いていたからである。