光
「やっば、遅刻しちゃう」
携帯を見ると 時刻は朝の8時だった。光条まどかは汗って走りだす。
しばらく走っていたが、公園を通り掛かると足を止めた。
そこには木の近くで泣いている女の子が一人。
「どうしたの?」
まどかが声を掛けると女の子は木を指差して、あれが取れないの。と訴えた。
まどかが見上げると木の枝に赤い風船が引っ掛かっている。
「大丈夫。お姉ちゃんが取ってあげる!」
そういうと まどかは木によじ登ると 風船に向かって手を伸ばした。しかし、もう少しというところで手が届かない。
「お姉ちゃん、頑張って〜」
女の子の声援に まどかは体全体伸ばしてみた。すると風船に手が届く。
「届いた!」
と安心した瞬間、ズルッと手が木から外れてしまった。
(落ちる……!!)
咄嗟に目をつぶると、途端に強い風が吹きまどかの体がフワッと 宙に浮いたかと思うと ゆっくりと地面に着いた。
「た、助かった……」
呆然としたが 目の前に女の子が大丈夫?と心配そうに顔を覗きこんできたので、慌てて笑顔になり
「大丈夫。はい、これ」
と赤い風船を女の子に渡した。
「お姉ちゃん、ありがとう」
女の子が喜んで去っていくと、まどかは へたっと崩れ落ちた。
(ふぅ…。また、゛風゛に助けられちゃった)
そう、まどかにとって これが初めてではなかった。
ー幼いころ、崖から落ちそうになった時 いきなり強風が吹いて落ちずにすんだりと、まどかは幼い頃から風のおかげで難を逃れていた。
しかし 何故風は守ってくれるのだろう。まどかはそれがわからずにいた。
「なんでなんだろう…」
まどかが考え出すと、しばらくして
−キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが聞こえた。
「うっひゃあぁ、遅刻〜!!」
まどかは慌てて走り出した。