ep.62
ルーの【鑑定】が終わり、ログアウトまではもう少しだけ、時間がある。これから、どこか行くのも違うし、ただ、ぼーっとしとくのもなんかだ。
「カニでも焼くか。」
どちらかというと、カニしゃぶとかの方が好きなんだが、生憎道具が揃っていない。特にカニ酢。今できるとしたら、焼きガニくらいだな。執事に渡した分を差し引いても結構な身が取れた。クレイクラブ大きかったからな。食べ切ったら、また狩りに行こう。その前に兵太夫がくれるかな。あいつがダンジョン越えられないと泣きついてきたら、助けてやるのもやぶさかではないぞ。
枝をおり、【生活魔法】で火をつける。パチパチと小気味のいい音がなり始めたら、火種を絶やさないよう、適宜枝を焚べながら、カニの身を火にかける。光源となる焚き火があっても、綺麗な星空。壮大な景色。この中にお前に加護をくれた星神がいるかもしれんぞ。ルー、手合わせとけ、手。なんとなくいいことが起こっている気がするぞ。今は暑くもなく、少しひんやりするくらいの絶好のキャンプ日和だ。折り畳み椅子くらいは買ってもいいかもな。そう言って、キャンプギアが増えていった友人を何人も見てきた。かっこいいからつい揃えたくなるんだよな。
「完璧。」
カニの身を焼き始めて数刻。全体に火が通って、表面に若干焦げ目がついた、ちょうど食べ頃。こういうのにスキルを使うのは情緒がないかとも考えたが、せっかくだから美味しいものを食べたくて【料理】スキルを発動しておいた。最初は何もかけずにかぶりつく。テレビとかでよく見る上を向いて丸ごと行くやつ。周りに誰もいないので、やりたい放題。
「うまい!」
大きな体躯から取れた身の割に、味は繊細。弾力も程よく残っており、何より食い出がものすごい。これに塩をかけるのは野暮だろうか。カニ酢があれば、躊躇なく使っていただろうが。あれ?もしかして、俺カニ酢が好きなだけか?現実にここまで大きいカニがないからやってみないとわからないな。ルーは背中に落ち着いており、カニに興味は示さない。いいのか?あんまり食べられないらしいぞ。コーヒー豆にクッキーとこいつの食の好みは測れん。液体を飲んでいる節もない。せいぜいMP回復薬をペロっとするくらい?
いくら大きいと言っても、食べるのは一瞬。まだ食べられるが、また今度の楽しみに残しておこう。ジョンの茶店で料理させてくれたら、パスタなんて作ったっていい。初期スキルとして【料理】を取っておきながら、十全に使えてはいない。髭の紳士は甘党だったな。どっちも作ればいいか。
「さて、そろそろ寝るか。」
やることがないなら、寝るのが一番。早寝した分、また、早起きすればよい。農家の朝は早いのだ。落とし穴の様子も気になるしな。MPも余っているため、【水魔法】で火を消す。まさか、ここが初めてのアクアバレットの活躍の場だとは思ってもみなかった。範囲魔法ということで、ちっちゃい球のような弾丸のような水の塊が複数個目の前に出現し、火に向かって飛んでいく。1個だけだったウォーターボールとは違い、操作性もイマイチ。現に、ある程度指向性を持たせて火を狙ってはみたが、全弾命中とはいかず。やっぱり、単一の敵に使う魔法ではないんだということがわかる。大判振る舞いで、ウォーターボールを追加で使い、さらにインベントリに大量にある土で蓋をする。流石に、自分の畑まで小火で失うわけにはいかないからな。落とし穴を塞ぐ前だったら、落とし穴に焼け残りを落として、嫌がらせをしても良かったんだが、俺もそこまで鬼じゃない、ということか。
「では、ルー。また明日だ。」
「 ,」
「ん?今なん、、
ログアウト直前、ルーが何か言ったように聞こえたが、確認するより前にログアウトのブラックアウトの波が。
GAKU
職業:旅人 Lv.9
HP47
MP60
STR11
VIT11
INT13
MID11
AGI14
DEX15
LUK15
スキルポイント(残10P)
所持スキル
【DEX強化】【LUK強化】【MP強化】
【水魔法Lv.3】【土魔法Lv.2】
【料理】【農耕】【工作】
【気配希釈】【精密操作】【魔力操作】【夜目】
【生活魔法】【鑑定】【看破】【破壊】【再生】
称号
【豊穣神の加護】【欲望の僕】【冒険の始まり】【破壊と再生の使徒】【挑戦者】【踏破者】【友魔の始祖】
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「どんな感じ?」
「お疲れ様です。会議終わったんですか。」
エアコンも強めにかけているはずなのに、パソコンの排熱と拮抗している、とあるビルの一室。部屋に入るなり、ネクタイを緩める上司にねぎらいの言葉をかけつつ、プレイヤーの動向を見守っている。
「まあ、出だしは上々ということらしい。大きなバグも修正もなかったから、それなりのお褒めの言葉はもらった。」
新たに入れた熱いコーヒーを飲みながら、お偉方も集まった会議の結果を教えてくれる。
「進捗は予定通りっすね。ダンジョンが発見されるのは少し遅かったっすけど、ワールドアナウンスが起爆剤になるんじゃないですか。」
「追加のアナウンスも入れて正解やったな。」
「せっかく細部までこだわったっすからね。どうせなら隅々まで見て欲しいですし。」
「そうやな。」
「で?起爆剤ついでに、リリースイベントの方は?」
「抜かりないっす。プレイヤーによっては、そろそろ金策もレベルアップも頭打ちでしょうから。ここでプレイヤーの皆さんにはもう一踏ん張りしてもらって。」
「戦闘向きじゃないプレイヤーにも、冒険はして欲しいからな。」
「それぞれ、新たな出会いもあるかも知らんし。」
「プレイヤー同士の協力も見たいですしねー。」
「今度の新機能に繋がってくれれば、もっといいんだが。」
運営の思惑を呑み込み、また今日も、夜は更けていく。
馬鹿でかいロブスターくらいを想定しています。




