第83話 速さの、その先
「この件、
僕に任せてください」
会議室で、
カイルが言った。
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小規模案件。
だが、
判断は必要だ。
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「期限は
二日後」
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以前のカイルなら、
即断していただろう。
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リーネは、
何も言わない。
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「進めます」
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会議は終わる。
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夕方。
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「……どう思いますか」
カイルが
資料を持って
やってくる。
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「私に?」
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「最終判断は
僕です」
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「でも」
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少しだけ、
間が空く。
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「余白を
どう取るか、
迷っています」
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リーネは
静かに
椅子に座る。
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「今の案は?」
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「最適解です」
「速いし、
無駄がない」
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「でも?」
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「崩れた時の
戻り方が
薄い」
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自分で
言って、
少しだけ
驚いた顔をする。
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「……言葉が
移りましたね」
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「うん」
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二人は
小さく笑う。
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「止めますか?」
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「いや」
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カイルは
首を振る。
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「止めません」
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一呼吸。
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「でも、
条件をつけます」
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リーネは
黙って
うなずく。
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「予備対応を
一つ増やします」
「人を一人、
余らせる」
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「効率は
落ちます」
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「でも、
戻れます」
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静かな決断。
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「……いい判断」
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「速さは
捨てません」
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「でも」
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「速さだけには
しません」
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カイルの目は、
以前より
落ち着いていた。
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二日後。
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案件は
無事に
完了する。
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小さな
想定外は
あった。
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だが。
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余白が
吸収した。
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「……止めなくても
守れました」
カイルが言う。
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「うん」
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「選べた?」
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「はい」
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リーネは
静かに思う。
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速さは
失われていない。
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だが。
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そこに
余白が
加わった。
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それは、
進化だ。
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カイルは
小さく息を吐く。
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「……焦りが
少し
減りました」
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リーネは
微笑む。
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「強くなったね」
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カイルは
少し照れたように
笑う。
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リーネ・アルヴェインは、
静かに理解する。
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**強さは、
奪うものではない。**
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**渡せるものだ。**
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