第79話 任される側から、決める側へ
「正式に決まりました」
朝の会議で、
上司が静かに告げる。
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「今回の案件は、
規模が大きい」
「影響範囲も広い」
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資料が配られる。
数字の桁が、
一つ違う。
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「中心を任せたい」
視線が、
リーネに向く。
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室内が
わずかに
静まる。
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「……私に、ですか」
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「そうだ」
「最終判断者として」
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最終。
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補助ではない。
共有でもない。
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決定権。
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カイルが、
横で
息を止める。
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逃げることは
できる。
断ることも
できる。
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今のリーネなら、
選べる。
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速さで
証明する必要も
ない。
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だが。
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「……条件があります」
自然に
口から出た。
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上司が
うなずく。
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「言ってみろ」
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「判断は私が出します」
「でも、
情報は
全員共有にします」
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「負荷の偏りは
常に可視化」
「止める権限も
持たせてください」
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会議室が
静まり返る。
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これは、
強気でも
反抗でもない。
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設計だ。
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「……止める権限?」
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「私が判断を誤った場合、
止められる仕組みを
入れたい」
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カイルが
驚いた顔をする。
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「自分を
止められるように?」
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「うん」
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一拍。
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「最終判断者は
必要です」
「でも、
絶対では
いたくない」
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上司は
ゆっくりと
息を吐く。
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「……面白い」
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「いいだろう」
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決まった。
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リーネは、
静かに
胸の奥を
感じる。
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怖さは、
ある。
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だが。
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飲み込まれる
感覚は
ない。
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昼。
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「……すごいですね」
カイルが
小声で言う。
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「何が?」
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「条件を
出せること」
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リーネは
少しだけ
笑う。
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「前は、
出せなかった」
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「怖くて?」
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「うん」
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「任されるだけで
精一杯だった」
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今は違う。
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任されることを
“扱っている”。
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夜。
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資料を
広げる。
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責任は、
重い。
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だが。
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「……決める」
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静かに
言葉にする。
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速さではない。
逃げでもない。
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選ぶ。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
はっきりと
理解した。
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**強さとは、
決定権を持つことではない。**
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**決定の形を、
設計できることだ。**
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