第71話 期待が、揺れる
違和感は、
小さかった。
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「……この件、
どうする?」
問いかけは、
いつも通り。
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以前なら。
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「こちらで」
即答していた。
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だが。
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「……少し、
整理してから
答えてもいいですか」
リーネは、
そう言った。
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一瞬だけ、
空気が
止まる。
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「……ああ、
構わない」
上司は
すぐに
うなずいた。
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問題は、
ない。
責められも
しない。
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だが。
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次の問いは、
別の人に
向けられた。
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「じゃあ、
今回は
こちらで仮案を」
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ほんの
一瞬。
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リーネは、
自分の席を
見失った気がした。
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代わりは、
いる。
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昨日
聞いた言葉が、
よぎる。
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昼。
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「……最近、
慎重だな」
同僚が
笑う。
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「悪い意味じゃ
ない」
「でも、
前より
任せきらない感じ?」
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「……そう
見えますか」
「ちょっとな」
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軽い
会話。
責めている
わけではない。
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だが。
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期待の
輪郭が、
少しだけ
変わった。
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午後。
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「この案件、
次は
どうする?」
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リーネは、
一瞬
考えた。
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「……今回は、
共有で
進めたいです」
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また、
沈黙。
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「……理由は?」
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「私一人の
判断に
しない方が
いいと
思いました」
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上司は、
表情を
変えない。
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「……分かった」
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会議は、
そのまま
進む。
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だが。
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終わった後。
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「……大丈夫か?」
小さく
声を
かけられる。
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「無理してないか」
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リーネは、
一瞬
言葉に
詰まる。
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「……無理は
していません」
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本当だった。
無理は、
していない。
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ただ。
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以前ほど、
前に
出ていない。
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夕方。
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机に
向かいながら、
ふと
思う。
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「……期待が、
減った?」
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いや。
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形が
変わった。
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「任せる」
から。
「様子を見る」
へ。
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悪いことでは
ない。
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でも。
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胸の奥が、
少しだけ
冷える。
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夜。
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「……選んだのは、
私だ」
立ち止まった。
即答しなかった。
責任を
分けた。
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それは、
自分の
意思だ。
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だから。
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期待が
揺れても、
仕方ない。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
静かに
理解した。
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**期待は、
応え続けることで
強くなる。**
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そして。
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応えない
選択を
すれば。
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少しずつ、
形を
変える。
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それは、
裏切りでは
ない。
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ただ。
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自分の
輪郭が、
少し
はっきりした
だけだった。
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