第69話 代わりは、いると言われた
「……もしもの話だけど」
前置きは、
丁寧だった。
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「リーネが
抜けた場合の
体制も
一応、
考えておこう」
会議室。
空気は、
重くない。
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「……抜ける、
ですか」
思わず
聞き返す。
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「休みとか、
異動とか」
「悪い意味じゃ
ないよ」
すぐに
補足が
入る。
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「代わりは
いるから」
その言葉は、
柔らかかった。
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安心させるための
言葉だと、
分かっている。
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「……そうですね」
笑顔を
作る。
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代わりが
いる。
それは、
事実だ。
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自分が
いなくても、
世界は
回る。
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それを
否定する
理由は
ない。
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だが。
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胸の奥で、
何かが
沈んだ。
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「……代わりが
いるなら」
頭の中で、
言葉が
続く。
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「……じゃあ、
私は
何なんだろう」
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会議は、
滞りなく
終わる。
誰も、
変な顔は
しない。
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廊下。
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「気にしなくて
いいよ」
同僚が
言う。
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「むしろ、
大事に
されてる
証拠だって」
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そうかもしれない。
だが。
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大事に
されている
からこそ。
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「代わりが
いる」と
言われる。
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午後。
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作業は、
順調だった。
判断も、
問題ない。
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それでも。
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「自分が
やる理由」を
考えてしまう。
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代わりが
いる。
でも、
今は
自分が
やっている。
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その違いに、
意味は
あるのか。
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夕方。
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「……無理は
しないで」
また、
言われる。
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「代わりは
いるから」
同じ言葉。
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優しさ。
配慮。
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だが。
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それは、
同時に
告げている。
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**あなたが
いなくても、
問題は
ない。**
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夜。
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「……それでも」
リーネは、
独り言を
呟く。
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「……今は、
私が
やっている」
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代わりが
いると
言われても。
今の責任は、
自分の
肩に
乗っている。
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その重さは、
誰も
代われない。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
はっきりと
理解した。
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**代わりがいる、
という言葉は、
安心と
孤独を
同時に
運んでくる。**
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守られている
はずなのに。
ひどく、
一人だった。
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