第68話 休んでいい、は信じられない
「……少し、
休みを
取ったら?」
その言葉は、
唐突だった。
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上司の声は、
穏やかで、
本気に
聞こえた。
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「最近、
忙しそうだし」
「無理は
しなくていい」
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「……ありがとうございます」
リーネは、
反射的に
そう答えた。
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本心だった。
気遣いは、
嬉しい。
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だが。
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「……今は
大丈夫です」
続けて、
そう言ってしまう。
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「そう?」
「ええ」
上司は、
それ以上
言わなかった。
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席に戻る。
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「……休んで
いい」
その言葉が、
頭の中で
反響する。
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休める。
制度上は。
書類も、
許可も、
ある。
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だが。
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「……今、
休んだら」
手が、
止まる。
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誰が
代わる?
判断は?
責任は?
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「……迷惑を
かける」
自然に
浮かぶ答え。
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昼。
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「休み、
取らないの?」
同僚が
軽く
聞く。
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「……今は」
曖昧に
答える。
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「まあ、
そうだよね」
「期待されてるし」
また、
その言葉。
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期待。
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それは、
休みを
削る理由として
十分だった。
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午後。
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頭が、
少し
重い。
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「……集中」
自分に
言い聞かせる。
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作業は、
進む。
ミスは、
ない。
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だから。
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休む理由が、
見つからない。
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夕方。
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「……今日は
早めに
上がります?」
部下が
遠慮がちに
聞く。
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「……大丈夫」
即答する。
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誰も、
責めない。
誰も、
止めない。
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夜。
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「……休んで
いい」
もう一度
思い出す。
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だが。
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「……信じられない」
小さく
呟く。
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休むことで、
失うものが
思いつく。
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休まないことで、
失うものは、
まだ
見えない。
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だから。
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人は、
見える方を
選ぶ。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
理解してしまった。
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**「休んでいい」は、
許可であって、
安心ではない。**
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安心が
ない場所では、
人は
休めない。
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それでも。
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明日も、
机に
向かう。
それが
今の
正しさだと
信じて。
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