第62話 それでも、人は選ぶ
朝の街は、
相変わらず
忙しない。
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人は急ぎ、
荷は運ばれ、
声が交差する。
誰も、
立ち止まらない。
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ユリウスは、
その流れの中を
歩いていた。
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「……おはようございます」
「おはよう」
挨拶は、
変わらない。
態度も、
評価も。
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机に座り、
書類を開く。
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「……今日も、
やることは
あるな」
当然だ。
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評価制度は、
残っている。
責任も、
役割も。
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だが。
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判断は、
急がない。
全部は、
背負わない。
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「……この件は、
午後でいい」
そう言える
自分がいる。
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昼。
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「……噂、
聞きましたか」
同僚が
言う。
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「何の?」
「……外で、
静かに
暮らしてる人が
いるらしいです」
ユリウスは、
少しだけ
視線を上げる。
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「……そうか」
それだけ。
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別の噂も
聞こえる。
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「制度の中で、
うまく
息をしてる人も
いるらしい」
「評価を
否定しないで」
「でも、
壊れてない」
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誰の話かは、
分からない。
分からなくて、
いい。
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午後。
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廊下で、
すれ違う人影。
軽装の旅人。
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一瞬だけ、
視線が
交わる。
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言葉は、
ない。
会釈も、
ない。
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ただ、
通り過ぎる。
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「……」
ユリウスは、
足を止めなかった。
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夜。
自室。
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「……降りなかった」
小さく、
言葉にする。
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降りた人も
いる。
降りなかった人も
いる。
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どちらが
正しいかは、
分からない。
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だが。
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「……壊れなかった」
それだけは、
確かだ。
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評価は、
人を守ることも
壊すことも
ある。
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選択は、
いつも
一つではない。
そして。
選ばないことも、
また
一つの選択だ。
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ユリウス・フェルナーは、
その夜、
静かに
思った。
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**それでも、
人は選ぶ。**
正解を、
ではない。
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**壊れない方を。**
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街は、
今日も
動き続けている。
明日も、
同じだろう。
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だが。
選択肢が
見える人は、
確実に
増えていた。
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それで、
十分だった。
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