第59話 守れなかったもの
結果だけを見れば、
判断は
間違っていなかった。
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「……手順としては、
適切でした」
報告は、
そう結論づけていた。
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「対応も
迅速だった」
「想定外の要因が
重なっただけです」
会議室の空気は、
静かだった。
責める声は、
一つもない。
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ユリウスは、
黙って
資料を閉じた。
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「……私の判断です」
それだけ
言った。
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部下が、
小さく首を振る。
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「ユリウスさんの
判断は
正しかったです」
「誰がやっても、
同じ結果でした」
慰め。
事実。
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だが。
その言葉は、
胸に
残らなかった。
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廊下。
窓際で
立ち止まる。
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「……正しいのに」
小さく、
呟く。
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正しかった。
手順も、
優先順位も。
評価基準に
照らしても。
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それでも。
守れなかった。
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対象は、
部下だった。
大事には
至っていない。
だが――
彼は、
現場から
一歩
退くことになった。
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「……すみません」
そう言われた時、
ユリウスは
何も
返せなかった。
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「謝ることじゃない」
言うべき
言葉は、
分かっている。
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だが。
口にすると、
嘘になる気がした。
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自室。
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「……俺が
やっていれば」
その考えが、
頭を
離れない。
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無意味だ。
結果は
変わらない。
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「……分かっている」
それでも、
思ってしまう。
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評価は、
守られた。
組織も、
守られた。
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だが。
一人だけ、
守れなかった。
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「……全部、
背負いすぎた
んだな」
ようやく、
言葉に
なる。
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自分が
判断した。
自分が
責任を
持った。
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だから、
自分が
守れると
思っていた。
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それが、
傲慢だった
のかもしれない。
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翌日。
部下が
席を外した
机を見る。
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「……代わりは
いる」
現実が、
突きつける。
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だが。
代われないものも
あった。
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評価表を
開く。
数字は、
安定している。
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「……何も
減っていない」
それが、
一番
苦しかった。
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間違っていない。
罰もない。
是正もない。
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だから。
自分で
抱えるしか
なかった。
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守れなかったもの。
それは、
結果ではない。
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**自分が
守れると
信じていた
感覚**だった。
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ユリウス・フェルナーは、
その夜、
初めて
思った。
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評価の中で
正しく生きることは、
誰かを
救えないことが
ある。
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そして。
それを
責める言葉は、
どこにも
用意されていない。
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だから――
壊れそうになる。
音も、
出さずに。
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